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Hiroyuki,KURITA

Masahiko,HORIKAWA

Shogo,TAKASHIMA

クリタ, ヒロユキ

タカシマ, ショウゴ

ホリカワ, マサヒコ

堀川, 正彦

栗田, 弘之

髙島, 章悟

Japanese

Utsunomiya University Academic Information Repository

宇都宮大学教育学部教育実践紀要　第4号　別刷2 0 1 8 年 2 月 2 8 日堀川　正彦*・栗田　弘之*・髙島　章悟**群馬交響楽団*宇都宮大学教育学部**オーケストラ鑑賞を目的とした連携事業報告†―打楽器と小学校鑑賞教材の楽曲に着目して―－295－オーケストラ鑑賞を目的とした連携事業報告†―打楽器と小学校鑑賞教材の楽曲に着目して―堀川　正彦*・栗田　弘之*・髙島　章悟**群馬交響楽団*宇都宮大学教育学部**堀川（群馬交響楽団打楽器奏者）と髙島は音楽教育専攻専門科目「打楽器」を共同担当している。堀川と髙島は、授業の一環として打楽器に着目したオーケストラ鑑賞の機会を設けることを目的に、栗田（群馬交響楽団事務局主幹）を通して群馬交響楽団と連携し、今回それが実現した。本報告では、群馬交響楽団の事業と併せ、鑑賞に至るまでの経緯とその実際について述べる。キーワード：観賞　演奏会　実現　打楽器　オーケストラ1．はじめに 堀川、髙島は、小学校鑑賞教材として掲載されている作品と作曲家を検索、また、群馬交響楽団の公演スケジュールを確認した。そこで注目したのが第43回東毛定期演奏会である。以下がプログラムである。・モーツァルト作曲：歌劇「イドメテオ」序曲・モーツァルト作曲：ヴァイオリン協奏曲第5番イ短調作品219「トルコ風」（写真1）・チャイコフスキー作曲：交響曲第4番へ短調作品36（図1）小学校鑑賞教材には、モーツァルト作曲：歌劇「魔笛」とホルン協奏曲第1番、チャイコフスキー作曲：バレエ音楽「くるみ割り人形」、ベートーヴェン作曲：交響曲第5番ハ短調、ドヴォルザーク作曲：交響曲第9番「新世界」が取り入れられている。作品はプログラムと同一ではないが、モーツァルトのオペラ作品と協奏曲、チャイコフスキーの作品、さらには交響曲と共通する要素が含まれており、学生の鑑賞機会として最適であると考えた。また、群馬交響楽団公演事業の中でも宇都宮から最も近い会場で行われる演奏会であり、さらに、授業期間中の7月に開催されるなど、望ましい条件が揃っており、この機会に鑑賞を実現させるべく、栗田を通じて群馬交響楽団との調整を進めた。 † Masahiko HORIKAWA*, Hiroyuki KURITA** and Shogo TAKASHIMA**: Cooperative business report for orchestral appreciation -Paying attention to musical compositions of percussion instruments and elementary school appreciation meterials-  Keywords: Ornamental Concert Realized Percussion Orchestra * Gunma Symphony Orchestra ** School of Education, Utsunomiya University（連絡先：takashima@cc.utsunomiya-u.ac.jp髙島章悟）宇都宮大学教育学部教育実践紀要　第4号　2018年2月28日写真1－296－2．群馬交響楽団について 群馬交響楽団は、1945年に設立された地方で最初のオーケストラである。戦後の荒廃した日本を音楽文化で復興させることを目的に結成されたが、その運営は苦難の連続であった。1947年の学制改革をきっかけとして教育の中に踏み込むことにより、文化国家建設の社会的意義を持てると考え、1947年5月29日の安中小学校から移動音楽教室を始めた。演奏の機会創出と活動資金となる収入が得られ、さらに、その活動により文化国家ができると期待されたが、現実は厳しく、楽団の生命線である定期演奏会を開くことすらできなくなってしまう。この過程は、昭和30年に封切られた映画「ここに泉あり」（写真2）に詳しく描かれている。群馬交響楽団の演奏活動と運営が安定したのは、昭和56年、理事長が群馬県知事に着任してからである。群馬県という自治体が積極的に加わることにより、義務教育課程では3年に1回、高等教育課程においても3年に1回、移動音楽教室として群馬交響楽団の演奏を聴くシステムができあがった。昭和22年から始めた移動音楽教室は、群馬交響楽団のビジネスモデルとして今日まで行われており、群馬県においては「クラシック＝群馬交響楽団」と言われる程、多くの県民の意識に浸透している。小中学校を対象とした移動音楽教室においては、今日までに630万を超える児童生徒が鑑賞しており、これらの移動音楽教室を聴いた人々が、群響の聴衆として演奏会に徐々に集まって来ている。2016年度定期演奏会（年間10回、高崎市開催）は、総計15,297名の集客を記録している。これは、70年の地道な努力の成果である。3．東毛定期演奏会について群馬交響楽団は、群馬県西部にある群馬音楽センター（高崎市）を拠点として活動している。故に、群馬県東部地域の聴衆をカバーしきれていない。そこで、1996年から群馬県の東部地区をカバーする目的で、東毛定期演奏会を年2回定期演奏会に加えることとした。東毛定期演奏会は、群馬県東部地区にも本物の生の音楽を届けるために自主演奏会として実施され、鑑賞機会の拡大を図っている。群馬県のシンボルとして良質なクラシック音楽の提供に努めると共に、親しまれ愛される身近なオーケストラを目指している。群馬交響楽団の定款には、「群馬交響楽団は群馬県における文化の向上及び青少年の情操教育の振興に寄与することを目的とする」とある。この2つの目的を、定期演奏会・東毛定期演奏会と県内を網羅する音楽教室で実現している。4．群馬交響楽団の一つの成果 群馬交響楽団は72年の歴史を持っている。この歴史の中で、具体的な結果として目に見えるような目覚ましい成果は上がっていない。しかし、群馬県に在住する人々の心の中に「群響（ぐんきょう）」という言葉の持つイメージは存在する。そして、クラシックという言葉に嫌悪感は無く、「クラシック 図１    図1写真2－297－＝群響（ぐんきょう）」という知識は浸透している。まさに、「群響（ぐんきょう）」は当たり前にある空気のように群馬県民の心に存在している。今後、文化的な質を高め、芸術としての本物の生の音楽を届ける演奏を実現していくことが、オーケストラの使命である。5．打楽器の授業内容と鑑賞までの過程 本授業は3年生及び4年生対象の教科専門領域の選択必修科目である。履修学生は3年生9名、4年生4名の計13名であった。講義の内容は、打楽器奏者としてのスキルと経験が学生の将来に有益なものとなるよう、配慮のもとで進めた。学生の中には、打楽器経験者、未経験者が混在するため、まずは導入として楽器を使わずに演奏するボディーパーカッションから始めた。教材として、四人のアンサンブルによる楽曲である「ロック・トラップ（ROCK TRAP）」を使用し、学生には四つの全パートを演奏するよう指示し、メンバーの組み合わせを変えながら実施した。それにより学生は、打楽器的メロディ、ハーモニー、伴奏のリズムとそれぞれの役割を音楽の流れに沿って感じ取ることができた。その後、スティックを使用した基礎練習から取り組んだ。最初に、練習用のパッド（図2、図3）を使用し、スティックの持ち方から始めた。音符の分割練習では四分音符、八分音符、三連符、十六分音符を全員でシンクロさせることを指示し、アンサンブルができるよう進めた。この技能が一定の水準に達した後、ロール奏法についてメカニズムを講義し、個人のレヴェルに合わせ、最初のプロセスを確認しながらの反復練習を指示した。授業回数を重ねるごとに、学生はお互いに協力し合うようになり、講義の準備（必要な機材、メトロノーム、スタンドなどのセッティング）を協力して行っていた。これらの経験が結果として、様々な打楽器を体験する際にも物怖じしないという姿勢に繋った。こうした初歩からの過程を経験することは、教育現場において生徒に指導する事と同じプロセスを自ら体験する機会となる。さらに、教育現場で行う合奏における多種多様の打楽器演奏法、その役割、音楽的効果、打楽器奏者の目線、立ち位置を経験することにより、さらに合奏全体の仕組み、それぞれの役割と効果を理解し、指導者としての的確な視点を得ることができる。このことを堀川と髙島は共通認識として確認した。以上のことから、小学校及び中学校の鑑賞曲という観点を重視しながら、スネアドラム→バスドラム→ティンパニ→シロフォンの順で授業展開を計画した。最初に使用したスネアドラムでは、堀川がラヴェル作曲「ボレロ」の冒頭部分の極小によるリズムを実演し、その後、練習用のパッドを使用した時と同様、それぞれのリズムパターンを演奏させた。次のバスドラムでは、ムソルグスキー作曲「展覧会の絵よりキエフの大門」の大音量の部分を実演した。これらの実演により、音量と音色から生まれる響きの差を学生に体感させることができた。この実践を踏まえ、指揮者と奏者の関係を想定した演習を行った。学生は堀川の要求した音を実際に演奏することにより、ダイナミックスアレンジの広い表現技法を習得した。シンバルでは、東毛定期演奏会のメインプログラムであるチャイコフスキー作曲「交響曲第4番より第4楽章」を取り上げて、強弱の奏法を実演し、楽器の重さと両手に持つシンバルを接触させる技能について実践的に講義した。3年次前期の段階で、4年生は「指揮法」を単位取得済み、3年生は履修中である。これら3つの楽器を習得した後、指揮と打楽器との関連性を学ぶため、J.M.フルトン作曲：行進曲「海兵隊」の打楽器パートを演奏した。バスドラムによる頭打ち、スネアドラムによる裏打ちのリズムを軸としたシンバルによる効果音の演習、指揮と呼吸を合わせ、タイミングを計る演習も取り入れた。結果、限られた時間の中、初めて感じる打楽器の難しさに苦労している場面も見られたが、打楽器を演奏するという視点においては理解して演奏している様子が伺えた。最後にティンパニとシロフォンの音程打楽器と鍵盤楽器である。ティンパニについては、楽器の成り立ちと歴史（トルコ発祥のナッカーラからの変遷）、各国による演奏形態の違い（ドイツ式、アメリカ式による配列の相違）、オーケストラにおける音楽的役割、低音楽器としての演奏効果について講義し、続いてマレット選択による音色の変化、奏法技術による音色の変化、さらにトレモロによる効果的奏法を実演し、演習を行った。シロフォンでは、鍵盤楽器としての歴史及びオーケストラにおける音楽的役割について講義した。打－298－楽器の中でもメロディ、ハーモニーを演奏できる唯一の楽器であり、その他、打楽器本来の役割であるリズム（メロディをリードし音楽的に全体を牽引する）効果を上げられる楽器であることを、鑑賞を交えながら説明した。以上の楽器の技術を取得し、マーチ演奏を経験した後、ハチャトゥリアン作曲：バレエ音楽「ガイーヌ」より剣の舞の冒頭部分を取り上げ、アンサンブル実習としてティンパニ、スネアドラムと共にオーケストラスタディに関する講義と演習を行った。その際に、躍動するリズムの上で主体的なメロディを演奏する難しさ（グルーヴを停滞させることなく、さらに勢いを進行させる）についてディスカッションし、オーケストラ鑑賞前の授業を終えた。今回、最終的な学習として特別な試みを導入した。講義として、2017年7月23日（日）太田市新田文化会館にて行われる群馬交響楽団東毛定期演奏会を鑑賞するというものである。堀川、栗田、髙島の三者による会議において、教育学部の授業の一環であるという主旨を第一に尊重するという結論に至った。群馬交響楽団事務局と連携することにより、ゲネプロ（当日リハーサル）からの見学、鑑賞が実現した。大学生を対象とした公開ゲネプロは、群馬交響楽団にとっても歴史上初めての試みとなり、楽団の全面協力の下、実施された。6．鑑賞当日の様子 最初に、堀川、栗田による学生の紹介が群馬交響楽団員に対して行われ、栗田が学生をホール2階席前列に案内した。その後、リハーサルが開始された。通常コンサートではS席に相当し、ホールとステージにいるオーケストラ全体を見渡せる場所である。学生はコンサート本番も同じ席で鑑賞することとなる。学生にとって、こうした現場を見学することは勿論初めてであり、いささか緊張しているようであった。リハーサルも佳境に入った頃、学生にとって思いもしない事態に立ち会うことになった。指揮者がオーケストラにある大切な指示を出した。しかし、その指示の解釈を巡って演奏者間で意見の相違があり、演奏を止めて暫しディスカッションを行うという場面であった。プロオーケストラの現場においては、指揮者の意図に対してオーケストラのアンサンブルはどのように応えるか、その最善策を得るために、しばしばディスカッションが行われる。しかし、聴講していた学生は衝撃を受けたことであろう。ゲネプロ終了後、堀川が学生の前に行くと、かなり動揺している様子であった。しかし、堀川からその状況について、「プロフェッショナルな現場だからこそプレイヤー全員が最善を尽くし、責任をもって演奏しているということ。ディスカッションはオーケストラにとっての自助努力である」と説明を受け、安堵した様子が伺えた。その後、休憩時間を経て迎えた本番は、充実した演奏となり終演した。後日の講義において、学生から以下の感想が寄せられた。・凄かったです。生のオーケストラを初めて聴きました。音の響きが肌に感じられて鳥肌が立ちました。・素晴らしかったです。ソリストの表現力に驚きました。感動しました。図2　机などの上に置いて打つもの図3　スタンドがついているもの－299－・打楽器が中々出てこないので心配しました。交響曲の最後の楽章に出てきたときには、迫力に圧倒されました。・次回の東毛定期演奏会に伺いたいです。その時に予定されているプロコフィエフのピアノ協奏曲がすごく楽しみです。7．おわりに 今日、音楽はインターネットや固定化されたディスクによって簡単に手に入れることができる。しかし、ここにあげた感想は生でその演奏を聴いたからこそ湧いたものであり、録音を聴いただけで得られるものではない。知識や理論も大切であるが、一度のライブ体験は全てにおいて遥かに勝る。体験から知識や理論を学ぶことも多いという事実を知る必要がある。ここに、今回の実験的な特別講義の意義があったと考える。音楽は体感してこそ、その素晴らしさや価値が理解できる。音楽教育において必要な要素は、素晴らしさと価値を伝えること、音楽を味わう楽しみを経験させること、演奏に対する興味・関心を持たせることである。これら全ては本物を体験することでのみ可能であると三者は認識している。今回の試みによって確かとなった、鑑賞の必要性や価値を今後さらに発信し、将来に向けて発展、継続させていかなければならないと考えている。現在、教育現場においても鑑賞教室が催されており、演奏会を鑑賞する機会が徐々に増え、身近になりつつある。その状況の中、機会を得られるのであれば、演奏会本番に至る背景、経緯を知り、まずは見て聴いて感じることが音楽についての理解を深めることに繋がるのではないだろうか。今回実施したことが学生一人ひとりの学びとなり、教育現場において広がりを見せたなら、現場における芸術鑑賞に深みが増すと3人の筆者は確信している。そして、我々もこれらの継続、広報に努め、現場の教員とも連携し、より良いものを提供していきたいと考えている。謝辞本事業報告に際し、写真掲載のためご協力頂きました、指揮者のデリック・イノウエ様、ヴァイオリニストの堀米ゆず子様、（株）ヒラサオフィスの平佐素雄様、高崎市の故・伊藤富太郎氏のご長男伊藤隆夫様に厚く御礼申し上げます。参考文献1）今村征男『打楽器教則本』、全音楽譜出版社、19672）J.Schinst in ,Wil l iam. ROCK TRAP Body Percussion Quartet（Kendor,2015）3）Fuiton,James./八田泰一編  The Marines March，共同音楽出版社、19854）ハチャトゥリアン『バレエ組曲“ガイーヌ”第３組曲、ポケットスコア』、全音音楽出版社、2008平成29年10月25日 受理	 	Masahiko	HORIKAWA*,	Hiroyuki	KURITA**	and	Shogo	TAKASHIMA** * Gunma Symphony Orchestra ** School of Education, Utsunomiya UniversityCooperative	business	report	for	orchestral	appreciation-Paying	attention	to	musical	compositions	of	percussion	instruments	and	elementary	school	appreciation	meterials-

Cooperative business report for orchestral appreciation -Paying attention to musical compositions of percussion instruments and elementary school appreciation meterials

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Cooperative business report for orchestral appreciation -Paying attention to musical compositions of percussion instruments and elementary school appreciation meterials

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