学位記号番号 : 博理工乙第243号博士の専攻分野の名称 : 博士(理学) 
学位授与年月日 : 平成30年3月23日textapplication/pdfthesi

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KHONDOKER, MD ZULFIKER RAHMAN

コンドカル, エムディ ズルフィカル ラーマン

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－ 54 － － 55 －氏 名 KHONDOKER MD ZULFIKER RAHMAN博士の専攻分野の名称 博士（理学）学 位 記 号 番 号 博理工乙第 243 号学位授与年月日 平成 30 年 3 月 23 日学位授与の条件 学位規則第 4 条第 2 項該当学 位 論 文 題 目 Analysis of Mechanism of Hikeshi Modulating Stress Sensitivity in HeLa and hTERT-RPE1 Cells（Hikeshi で制御されるヒト HeLa 細胞とヒト不死化網膜上皮細胞のストレス応答機構の解析）論 文 審 査 委 員 委員長 連携教授 今本　尚子委　員 教 授 髙橋　康弘委　員 連携教授 長田　裕之委　員 連携教授 眞貝　洋一論文の内容の要旨   Hikeshi is a protein that mediates the heat stress-induced nuclear import of heat-shock protein 70 (HSP70s: HSP70 /HSC70). Dysfunction of Hikeshi causes some serious hereditary diseases in humans; however, the cellular function of Hikeshi is largely unknown. Here, we investigated the effects of Hikeshi depletion on the survival of human cells af-ter proteotoxic stress and found opposite effects in HeLa and hTERT-RPE1 (RPE) cells; depletion of Hikeshi reduced the survival of HeLa cells, but increased the survival of RPE cells in response to proteotoxic stress. Hikeshi depletion sustained heat-shock transcription factor 1 (HSF1) activation in HeLa cells after recovery from stress, but introduction of a nuclear localization signal-tagged HSC70 in Hikeshi-depleted HeLa cells down-regulated HSF1 activity. In RPE cells, the HSF1 was efficiently activated, but the activated HSF1 was not sustained after recovery from stress, as in HeLa cells. Additionally, we found that p53 and subsequent up-regulation of p21 were higher in the Hikeshi-depleted RPE cells than in the wild-type cells. The above results indicate that depletion of Hikeshi renders HeLa cells proteotox-ic stress-sensitive through the abrogation of the nuclear function of HSP70s required for HSF1 regulation. Moreover, Hikeshi depletion up-regulates p21 in RPE cells, which could be a cause of its proteotoxic stress resistant. Functional modulation of HSP70 with the inhibitor YM-1 caused cell death in the HeLa cells but resulted in growth arrest of the RPE cells. Furthermore, YM-1 treatment dramatically up-regulated p53 and p21 proteins in RPE cells and down-reg-ulated FoxM1 and survivin, which are regulators of cell cycle progression, in both RPE cells and HeLa cells. Our re-sults showed that regardless of the presence or absence of Hikeshi, the p53-p21 pathway becomes active when RPE non-cancer cells are treated with YM-1, which contributes to protection against cell death. Hikeshi might function as an upstream regulator of HSP70, which affects activation of the p53-p21 pathway, especially during and after proteotoxic stress. Additionally, expression of HSP70 and Bag3 is up-regulated by Hikeshi depletion whereas remains unaffected after YM-1 treatment indicating that Hikeshi depletion and HSP70 inhibition by YM-1 have different functions.－ 56 － － 57 －論文の審査結果の要旨　本学位論文の審査委員会は、当該論文の発表会を平成 30 年 1 月 31 日 PM 15:00-16:00 に開催し、詳細な質疑をもとに論文内容を審査した。以下に、学位論文の審査結果を要約する。 　核と細胞質の間の機能分子の情報交換は、真核生物の生命活動の基本である。一般に、真核細胞の中では、Importin ファミリーと総称される運搬体タンパク質群が、核内外を出入りする様々なタンパク質に結合して、それらを、核膜孔を通して核内外に輸送することがわかっている。Importin ファミリー分子で担われる輸送反応の駆動力は低分子量 GTPase Ran の GTPase サイクルである。一方、熱ショックなどのストレス応答時では、Ran の GTPase サイクルが低下すると考えられている。そのため、熱などのストレス条件では、良く知られている Importin ファミリーの輸送活性が低下する。Importin ファミリーの輸送活性が低下するストレス時に、分子シャペロン Hsp70 が核に集積することが知られており、その反応を、Hikeshi と名付けた運搬体が担うことが明らかになっている。Hikeshi は熱ストレスで駆動する新しい核— 細胞質間輸送経路である。 学位論文の第１章では、序論として、これまでにわかっていた Importin が担う核—細胞質間輸送のメカニズムと、熱ストレスで核— 細胞質間輸送反応が切り替わることを紹介し、熱ストレス応答反応と、これまで知られている分子シャペロン Hsp70 の細胞機能を説明している。研究が関わったアポトーシスのメカニズムにもついて簡単に述べている。 　マウスやヒトの高等動物では、Hikeshi の欠失や点変異が、疾患や個体の死を誘引することがわかっているが、Hikeshi の細胞機能については、まだ良くわかっていない。そこで、本論文では、２種類のヒト細胞（HeLa細胞と hTERT-RPE １細胞：子宮頸癌細胞と不死化網膜上皮細胞）で Hikeshi をノックアウトした細胞株を樹立し、その細胞機能を調べた。 学位論文の第２章では、研究結果を３つの項目に分けて記載している。 2-1　CRIPR/Cas9 システム（ゲノム編集技術）を使って、HeLa 細胞と hTERT-RPE1 細胞の Hikeshi 遺伝子をノックアウトし、Hikeshi を siRNA でノックダウンしたときの細胞の性質と比較した（Hikeshi タンパク質発現の消失、熱ストレスによる Hsp70 核内移行の阻害、核内ストレス小体の出現と消失、核小体因子の挙動）。 2-2　HeLa 細胞と hTERT-RPE1 細胞にストレスをかけたときに、Hikeshi をノックアウトすることで、どのような影響が見られるのかを調べた。その結果、HeLa 細胞では、Hikeshi をノックアウトしてストレスをかけると、野生型よりも細胞の生存率が下がってストレス感受性になること、それに対して、hTERT-RPE1 細胞では、Hikeshi をノックアウトしてストレスをかけると、野生型よりも生存率が上がってストレス耐性になることがわかった。アポトーシス活性を調べると、HeLa細胞では、Hikeshiをノックアウトすると、ストレスでアポトーシス活性が上昇するのに対して、hTERT-RPE1 細胞では、Hikeshi をノックアウトすると、逆にアポトーシス活性が抑制されることがわかった。 － 56 － － 57 －　HeLa 細胞と hTERT-RPE1 細胞のどちらの細胞も、Hikeshi が欠損すると、転写因子 HSF1 の活性制御が崩れることと、ガン抑制遺伝子 p53 の発現が上昇することの２つがわかった。これらの知見はいずれも新しい。Hikeshi ノックアウトで、HeLa 細胞と hTERT-RPE1 細胞のストレス感受性に違いがでるのは、（少なくとも一部の理由は）Hikeshi 欠損で HSF1 と p53 の活性（発現）が変化するためではないかと考えられる（第３章で考察）。 2-3　Hsp70 のシャペロン活性阻害剤 YM-1 が、HeLa 細胞と hTERT-RPE1 細胞に与える影響を解析して、Hikes hi ノックアウトの影響と比較した。その結果、Hsp70 の活性を阻害すると HeLa 細胞はアポトーシスを起こすが、hTERT-RPE1 細胞は増殖が抑制されることがわかった。Hikeshi をノックアウトしてストレスをかけたときと同様に、YM-1 を処理すると p53—p21 経路が hTERT-RPE1 細胞で活性化される。しかし、YM-1 を処理しても、Hikeshi のノックアウトで見られた HSF1 の活性制御の変化は見られなかった。これらのことから、Hikeshi の機能は Hsp70 を介しているが、Hikeshi の欠損と Hsp70 のシャペロン活性の阻害が同じではないと示唆される。  学位論文の第３章では、第２章の結果を考察している。Hikeshi ノックアウトの効率、Hikeshi をノックアウトしたときに HeLa 細胞がストレス感受性になる機構、Hikeshi をノックアウトしたときに hTERT-RPE1細胞がストレス耐性になる機構、YM-1 を作用させたときに HeLa 細胞と hTERT-RPE1 細胞が受ける影響について、それぞれを考察している。 学位論文の第４章では、今回の結果を総括している。  学位論文の第５章では、方法と材料を記載している。 　2012 年に Hikeshi が見つかったときは、Hikeshi が欠損すると、“細胞はストレスから回復せずに死ぬ”と単純に結論づけていた。本論文は、Hikeshi 欠損の影響が、最初に考えていたほど単純ではないことをはじめて示している。２つの細胞の違いが癌細胞と正常細胞の違いなのか、そのメカニズムは何かなど、今後、明らかにすべきことが多いが、新しい問題点を提起した点で意義のある仕事である。  　本論文の結果は、２報の査読付き国際ジャーナルに発表した。いずれの知見も、独創的で新しく、分子シャペロン Hsp70 の核内機能を示した点でも意義が大きい。  

Hikeshi で制御されるヒトHeLa 細胞とヒト不死化網膜上皮細胞のストレス応答機構の解析

https://sucra.repo.nii.ac.jp/record/18186/files/GD0000929.pdf

Hikeshi で制御されるヒトHeLa 細胞とヒト不死化網膜上皮細胞のストレス応答機構の解析

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