プロジェクト番号 : A09-60一般研究 : 基礎研究textapplication/pdfresearch repor

18331

KOSAKA, Masashi

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小坂, 昌史

Japanese

Saitama University Cyber Repository of Academic Resources

プロジェクト名：低キャリアー層状希土類化合物の創成 プロジェクト代表者：小坂 昌史（理工学研究科・准教授）  １ 研究目的比較的局在した軌道を持つ、希土類元素の4f電子状態は「重い電子系超伝導」や「多極子秩序」など物性物理学上、重要な現象が発現する舞台となっている。申請者は 2007年度に希土類イッテルビウム化合物YbAl3C3において、4f電子系としては初めてとなる幾何学的フラストレーションを背景としたスピン一重項の形成を見いだした。スピン一重項基底状態が発現した背景には、低次元的な層状結晶構造、そしてキャリアー（伝導電子）が極めて少ないというこの物質特有の性質が大事な役割を果たしている。本研究では層状結晶構造を持つ希土類化合物の探索を行い、その純良結晶の育成を第一の目標とし、様々な物性測定を行うことにより、新奇な電子状態の発掘を目指すものである。 ２ 研究方法層状構造を持つ希土類化合物を作成するためには、構成元素に原子半径の比較的小さい軽元素を含めることが有効に働く。今回は主に次の３課題を行った。(1) 昨年度作成に成功した Yb3F4S2中に 2種類存在するYbサイトのうち片方をCa2+で置換した物質の作成とその物性測定 (2) Pを含んだ希土類3元化合物の探索、純良結晶育成とその物性測定 (3) Ce2Ni5C3の極低温における圧力効果測定。(1)に関しては磁性を担うYb3+サイトの役割を明らかにするため、またほぼ絶縁体であるYb3F4S2に対してキャリアードープの可能性を探るために行う。(2)は電気陰性度の高いPを含む新しい希土類燐化物を作り、低キャリアー状態の実現を狙った。(3)は層状結晶構造を持つ物質での相互作用の変調を、圧力により誘起した際の振る舞いを調べるために行った。 試料作成は高融点金属坩堝を用いた密閉環境での育成、気相輸送法や化学輸送法、種々の低融点金属元素を用いたフラックス法など様々な方法で行った。 ３ 結果とまとめ(1) 原料である元素とフッ化物をYb : YbF3 : CaF3 : S を 4 : 2 : 3 : 6 の割合で秤量し、熱処理することで CaYb2F4S2の単結晶を育成することに成功した。0.4K 以上の 9Tまでの磁場下における比熱測定の結果から、CaYb2F4S2においても残留エントロピーが磁場により解放される様子が観測され、そのエントロピーの大きさもほとんど Yb3F4S2の場合と同じであることが分かった。よって、Ca で置換したサイトのYbの価数は 2価であり磁性に関与していないことを明らかにできた。伝導特性は絶縁体的な傾向は変わらないものの、試料によっては導電性を示すものも現れ、キャリアー濃度制御の可能性があることもわかった。 (2) 金属ルツボ密閉法と金属フラックス法を組み合わせることにより、RNiP の純良試料の育成に成功した。RNiP に関する物性報告は今までになく、今回が初めての報告となる。作成に成功した希土類元素はR = La, Ce, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Er である。中でもCeとSmに関しては単結晶の育成に成功した。図 1は六方晶の c面に電気抵抗測定用のセッティグを施した SmNiPの写真である。その結晶構造を図2に示す。希土類のサイトは 2種類あり、それぞれのサイトが構成する希土類層とNiと Pで構成される層が交互に図 1. SmNiPの単結晶試料の写真。 電気抵抗測定用の端子を付けたところ。 c 軸方向に積層した構造をしている。磁化測定を行った結果、Prを除く全てのRNiPにおいて磁気秩序が観測され、Ce以外は明らかな強磁性転移を示すことが判明した。Tb、Dy、Erに関しては、はっきりした磁気構造の逐次転移に伴う異常が帯磁率の温度依存性に観測されている。図 3に CeNiPの電気抵抗の温度依存性を示す。CeNiPの電気抵抗率の絶対値は、結晶格子の寄与を示す LaNiP に比べ大きな値を持ち、その寄与を差し引いた CeNiP の電気抵抗率の磁気的な成分は約100K付近と10K付近にピーク構造を持つ。これは Ce 系近藤物質に特徴的な振る舞いといえる。磁気秩序温度は、比熱測定の結果から 5K付近であることが分かっている。奇妙なことに、帯磁率の温度依存性は低温で強磁性的な急な立ち上がりを示すものの、磁化曲線は強磁性的とは言い難く、転移温度よりも十分低い温度でさえ、磁化は磁場に対して緩やかな上昇を示すことが分かった。よって、CeNiPの秩序相は単純な磁気構造でないことが示唆される結果となった。キャリアー濃度に関しては、RNiP では残念ながら低キャリアー状態は実現しなかった。 (3) 図 3にCe2Ni5C3の 5.2 GPaまでの超高圧力下における交流帯磁率測定の結果を示す。本測定は東京大学物性研究所のパームキュービックアンビルセルを用いて極低温環境下で行った。Ce2Ni5C3は常圧でTC = 2.3Kの強磁性体であるが、圧力の増加とともに TCは減少し、3.6 GPa 以上では消失する。それと同時に、T*で示した新たな異常が出現し、それは圧力と供に高温側に移動することが明らかになった。交流帯磁率の周波数や磁場依存性から新しく出現した相は反強磁性相の可能性が高いと結論付けられる。 ４ 成果発表[1] A. Yamada et al., Pressure-induced ferromagnetic to antiferromagnetic phase transition in Ce2Ni5C3: Solid State Commun. 150 (2010) 725. [2] 小坂昌史ほか, Yb3F4S2の単結晶育成と物性, 日本物理学会 2009年秋季大会. [3] 近藤健司ほか, RNiP (R=Ce，Nd)の磁性, 日本物理学会 2009年秋季大会. [4] 山田篤ほか, 強磁性体Ce2Ni5C3の圧力下物性, 日本物理学会 2009年秋季大会. [5] 七宮史崇ほか, YbAl3C3の相転移点近傍における磁場中弾性特性, 日本物理学会 2009年秋季大会.          図 2. RNiPの結晶構造。  (µ     図 3. CeNiPおよびLaNiPの電気抵抗率の          温度依存性。   図 4. Ce2Ni5C3の各圧力おける交流帯磁率の        温度依存性。 

低キャリアー層状希土類化合物の創成

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低キャリアー層状希土類化合物の創成

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