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タカサキ, マサヤ

高崎, 正也

Japanese

Saitama University Cyber Repository of Academic Resources

食品用超音波カッターの開発 Development of Ultrasonic Food Cutter プロジェクト代表者：髙﨑 正也（理工学研究科・准教授） Masaya Takasaki (Associate Professor, Graduate School of Science & Engineering) 1. 緒言 超音波カッターとは，刃に超音波振動を励起させることにより，切れ味を向上させた切断装置である．食品用の場合，通常刃渡りが波長よりも長くなるため，高次の振動モードを励振させ使用する．この時，刃には振動の腹と節が存在し，節部分において振動が極めて小さくなるため，切れ味の向上を得られないことが問題となっている．これまでの研究で節の位置がずれるように交互に異なる振動モードを励振することにより等価的に節を無くす方法が提案されている[1]．しかし，切れ味の向上に寄与している振動モードや切れ味がどのように分布しているのかは明らかにされていない．そこで本研究では，刃の各部においての切れ味を測定し，超音波カッターの切れ味分布を明らかにすることを目的とする． 2. 超音波カッター 超音波カッターはボルト締めランジュバン型振動子により超音波振動を励振し，それをホーンによって増幅し，刃に振動を伝える．使用する超音波カッターは全長 650mm，刃渡り 410mm で，共振周波数は約27.1kHz である．その構造を Fig. 1 に示す．また，この超音波カッターは機械的 Q が高いため，刃が対象物と接触したときや，使用中の熱によって駆動周波数と共振周波数にずれが生じた際，得られる振幅が小さくなってしまう．そのため一定の駆動周波数では，一定の振幅を得ることは困難で，それが測定の際に問題となる．そこで各測定は共振周波数追従装置[2]で駆動させた状態で行った．共振周波数追従装置は，共振点でのアドミタンスの位相がある定数であることを利用して，位相の観測結果を発振周波数にフィードバックすることで，常に共振周波数で駆動することを可能とした装置である． 3. 切れ味分布評価 3.1. 装置 本研究では，切れ味の指標を切削抵抗とし，一定の大きさに切り揃えられた試料を一定の速度で切断した際の抵抗力をロードセルにより測定し，完全に切り終わるまでの時間で力積を算出し，切れ味の評価とした．このとき，力積が小さいほど切れ味が良いといえる． 製作した切れ味分布評価装置を Fig. 2 に示す．超音波カッターの刃を上向きにして固定し，鉛直方向に設置したリニアステージによりクリップで固定した試料を一定速度に制御して，刃の上に降ろす事により試料を切断する．試料は材料の個々の品質や測定中の水分量の変化によるバラツキを少なくするために，極厚口プリンタ用紙[128g/m2]を選択した． 3.2. 試料の固定方法 切れ味試験の再現性をより高める試料の固定方法を検討した．Fig. 3 中の(a)に示すようにクリップを両側に用いて両持ちにした場合と，同(b)に示すようにクリップを一つにして片持ちとした場合の任意の点における切れ味の比較を Fig. 4 に示す．このグラフから両持ちに比べ片持ちの状態ではHorn BladeLangevin type transducer410mmFig. 1 Schematic view of ultrasonic food cutter.Load cellUltrasonic cutterClipLinear stage Fig. 2 Evaluation equipment. Test sampleClip  (a)Double-side-clipping  (b)Single-side-clipping   type type Fig. 3 Clipping types. without vibration with vibrationIntegralofforce[Ns]Trial number Trial number051015201 2 3 4 5 6 7 8 9 10051015201 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (a)Double-side-clipping  (b)Single-side-clipping   type type Fig. 4 Comparison of clipping types. 再現性が高いことが分かる．これは，切断の際に刃の側面と試料が擦れる事によって発生する抵抗が原因で，片持ちではその抵抗が軽減されているためであると考えられる． また，Fig. 5 のように試料を刃に対して直角方向から傾けた状態で試料を切断すると，超音波振動による切れ味向上の影響が観察されやすくなり，超音波を励振した場合における再現性が高くなった．これは，切断する際の紙の剛性が原因であると考えられる．紙は面に平行な方向に関しては，それ以外の方向と比べ，高剛性である．紙を刃に対し直角にした場合，紙が高剛性であるため切断時に紙が刃の側面に擦れることによる抵抗が発生する．しかし，試料を傾けると，紙の剛性が低くなり切断の際に紙が刃の側面から離れやすくなる．この時，超音波振動を励振すると，振動によって紙を刃の側面から離すように力が働き，刃先のみが試料に接触している状態と考えられる．そのため，切削力以外を無視して観察できる状態となり，超音波振動を励振している状態において再現性が高くなったと考えられる． 以上のことから試料を片持ちで固定し，刃に対して直角方向から傾くように角度を持たせた場合に再現性が高くなる事が確認され，切れ味評価をこれらの方法で行うこととした． このときの印加電圧と切れ味の関係を Fig. 6 に示す．印加電圧の増加に伴い切れ味が向上し，超音波振動を励振した場合において再現性が高くなっていることが確認できる． 3.3. 切れ味分布評価 印加電圧 200Vp-p 一定，5mm 間隔，節付近においては 2.5mm 間隔で各点につき一回ずつ切断し，力積を測定した．水平方向の移動にはリニアステージを用い，一定距離ずつ位置を制御して試料を移動させた．測定結果を Fig. 7 に示す．縦軸は切削抵抗，横軸は刃の付け根からの距離を表している．このとき切削抵抗が大きい場所が節と考えられ，同図の節と節の距離と，縦振動の音速により導かれる波長の1/2 がほぼ一致するため，切れ味向上に寄与している振動モードは縦振動であると考えられる． 刃本来の切削抵抗が 6N･s であるとすると，振動の腹部分においては切れ味の向上により切削抵抗が約 65%減少している．刃の付け根と先端部分においては，刃本来の切れ味が悪く参考として相応しくないため，刃の中央二つの節に着目して考えると，切削抵抗の減少が 60%以上となる範囲は波長の約11/13 の長さとなる．これまでの研究で提案された交互に異なる振動モードを励振する超音波カッターとして，4 次と 5 次の振動モードを交互に励振したときを想定すると，切削抵抗が 60%以上減少する範囲は Fig. 8 に示すようになる．刃の中央部分において互いの振動モードが切れ味の低下を補い，一様な切れ味の超音波カッターとなると考えられる． 4. 結言 切れ味分布評価装置を製作し，切れ味分布評価における再現性の高い測定方法を検討した．超音波カッターの切れ味分布を測定し，振動の腹では切れ味が良くなり，節ではほとんど切れ味に変化が無いことを確認した． 参考文献 [1] 原 俊昭, 丸山 裕, 高崎 正也, 石野 裕二, 水野 毅：食品用超音波カッターの開発, 第 18 回電磁力関連のダイナミクスシンポジウム , pp.345-348, (2006) [2] 丸山 裕, 高崎 正也, 久田見 朋範, 水野 毅：断機能を備えた歯科用超音波スケーラの開発, 日本機械学会論文集, 72 巻, 721 号, pp.2727-2731, (2006)  Test sampleBlade Fig. 5 Orientation of test sample. 12345671 2 3 4 5 6 7 8 9 10Integralofforce[Ns]Trial numberwithout vibration50V100V200Vp-pp-pp-p Fig. 6 Relation of cutting force to applied voltage. 0246810120 50 100 150 200 250 300 350 400witout vibrationwith vibrationDisplacement [mm]Integralofforce[Ns] Fig. 7 Cutting force distribution. 4th-order 5th-order Fig. 8 Sharpened areas with the change of  vibration order. 

食品用超音波カッターの開発

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