プロジェクト番号 : A10-53一般研究 : 基礎研究textapplication/pdfresearch repor

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ヤマモト, リョウ

山本, 良

Japanese

Saitama University Cyber Repository of Academic Resources

国際河川の非航行的利用における衡平原則の機能 The Function of Equitable Principle in Non-Navigational Use of International Rivers                                                   プロジェクト代表者：山本良（教養学部・教授）                         英語表記 Ryo Yamamoto(Professor of International Law,  Faculty of Liberal Arts)  １ 問題の焦点   国連総会が 1997年に採択した国際水路非航行的利用条約は、国際法委員会が長年にわたって従事してきた国際水路（典型的には、国際河川）の非航行的利用（具体的には、灌漑、飲料、発電等のための利用）に関する法の集大成である。この条約は現時点では未発効であるが、以下の 2つの点で注目される。第１．連盟時代に作成された条約にかわる国際河川の利用に関する唯一の一般法であり、慣習国際法の不在状況を埋めることが期待されること。第２．同条約における衡平原則は、従来の関係国家間における水の「衡平な」分配という機能を越えて、国際社会の共通利益の実現を念頭においたものである。そこで、本研究では、かかる衡平原則の趣旨とその限界を検討した。 ２ 国際河川法における衡平原則の伝統的定位  国際河川にたいして沿河国が如何なる根拠に基づき権限を行使するかに関しては、伝統的に４つの立場が主張されてきた。これらは、「個別的アプローチ」と「集団的アプローチ」に類型化することができる。また、前者には、「絶対的領域主権論」と「絶対的領土保全論」、「制限主権論」が含まれるのに対して、後者には「共同財産論」が含まれる。これらの立場の中で、もっとも有力な立場は制限主権論であり、その内容は国際河川の使用に関する国家の権利は、他国に重大な損害を及ぼさないように制限されているものであった。この立場は、河川の使用をめぐる州相互間の紛争に関する米国国内裁判所の判例を基礎に定式化されてきたものであり、その核心は衡平な水資源の分配にあった。 ３ 国際河川の非航行的利用における衡平原則の現代的展開とその限界 国際河川の水資源をいかなる形で関係沿河国間に分配すべきかという問題は、今日でもその重要性を失ったのではなく、国際水路非航行的利用条約は、かかる水資源分配のために詳細な手続的規定を設けた。しかし、今日では一人あたりの真水量の減少、世界的な水資源問題に対する危機感の増大、世代間における資源の最適利用などの問題意識を背景に、かかる衡平原則は機能変化を遂げるようになってきた。即ち、国際河川の沿河国によって形成される国家集団において河川の利用から生じる便益を極大化するのではなく、最適利用することが求められ、そのために衡平原則は援用されるようになってきているのである。 具体的に述べると、当該河川の利用から生じる便益がミニ国家の場合は１億ドルに満たないのに対し、大国の場合は10億ドルであると仮定すると、極大利用の観点からは大国による利用が優先される。これに対して、最適利用の観点からはミニ国家による当該河川の利用が排除されない。即ち、最適利用とは、かかる河川の利用に関して一種の「パレート最適」を実現しようとするものだからである。また、そのために大国の当該河川の利用を制限する場合もありうる。もっとも、こうした国際河川の利用に関して近代経済学の手法を応用することは、それほど容易ではない。また、国際水路非航行的利用条約は、枠組条約として作成されており、個別国家の具体的な合意に対して直ちに優越するものでもない。そこで、今後とも個別国家の合意に対してこの条約や、そこで規定されている衡平原則が如何なる影響を及ぼしていくかを注視することが、一層強く求められるのである。 

国際河川の非航行的利用における衡平原則の機能

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国際河川の非航行的利用における衡平原則の機能

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