ナノスケールのMRAMにおける熱揺らぎの研究

Abstract

application/pdf近年,ナノスケールに加工された強磁性体においてスピンの自由度を利用することで,従来のエレクトロニクスでは実現出来なかった機能を持った新しいデバイスを創生するスピントロニクスの研究が盛んに行われている.なかでも,磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の実用化を目指して,ナノスケール磁性体のスピンダイナミクスの理解およびその高速制御方法を確立することが重要となってきている。MRAMとはナノスケールの微小な磁性体の向きを利用したメモリである.磁化の向きを利用するため不揮発性で,書き換えには磁化の向きを反転させるだけなので,不揮発性フラッシュメモリよりも1000倍の速さで処理ができ,DRAMと同程度の処理速度が実現できる。このため,インスタント・オン・コンピュータの実現などが可能となる。 従来の半導体メモリを超えるためには,MRAMの大容量化は必須であり,現在ではスピントルクを用いた,高密度集積化の研究が盛んである。しかし,磁化の方向を一方向に保つ磁気異方性エネルギーは磁性粒子の体積に比例するため,10nm³程度に微細化すると室温では熱揺らぎにより磁化の向きが揺らいでしまう。そのため記録を保持することが困難となる。この熱揺らぎに対する安定性は磁化反転確率Pswで決定される.また磁化反転レートlog(1-Psw)t∝exp(-△)の指数はIを印加電流,Icを臨界電流として△∝(1-I/Ic)bと書ける。従来の理論ではb=1とされてきたが,最近谷口・今村によりb=2であることが示されている。ただし,この理論は特別な条件に限られており,よリー般的に面内磁気異方性の効果を取り入れた場合に,指数を解析的に求めることは困難である。そのため,数値的に磁化反転確率を計算し,指数bを評価する必要がある. 本研究では,磁化のStochastic Landau― Littshitz― Gilbert方程式の数値シミュレーションを行い,磁化反転確率に熱揺らぎが与える影響について調べた。得られた磁化反転確率と解析解を比べた結果,数値解はb=2に近いことを確認した.この結果は従来考えられたよりMRAMは熱揺らぎに敏感であることを意味している.三重大学大学院工学研究科博士前期課物理工学専攻43thesi

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