付記する学位プログラム名: 社会を駆動するプラットフォーム学卓越大学院プログラム京都大学新制・課程博士博士(農学)甲第25317号農博第2583号京都大学大学院農学研究科森林科学専攻(主査)教授 北島 薫, 教授 小野田 雄介, 教授 井鷺 裕司学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Nakamura, Naoto

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付記する学位プログラム名: 社会を駆動するプラットフォーム学卓越大学院プログラム京都大学新制・課程博士博士(農学)甲第25317号農博第2583号新制||農||1104(附属図書館)京都大学大学院農学研究科森林科学専攻(主査)教授 北島 薫, 教授 小野田 雄介, 教授 井鷺 裕司学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDGA

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 - 1 -（ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（  農 学  ） 氏名 中村 直人 論文題目 Fungal and bacterial communities associated with Ardisia crenata, an invasive exotic plant native to Japan, analyzed with high-throughput sequencing of DNA （日本在来の侵略的外来種Ardisia crenataに付随する真菌・細菌の 群集組成のDNA塩基配列を用いた解析） （論文内容の要旨） 侵略的外来種が在来種の多様性の減少や生態系サービスの低下などを通して生態系の持続性を脅かす事例は世界各地において多数報告されている。よって、外来植物の侵入・定着・個体群増加のプロセスや、それにともなう生態系改変に関する生態学的要因の理解は、外来植物管理、保全生態学、また基礎生態学の観点からも極めて重要である。これまで外来種の侵略性の生態学的基盤の説明には、天敵解放仮説や新規共生仮説が議論されてきた。前者では、原産地では個体群の密度増加を制限する天敵が非原産地には存在しない可能性に注目するのに対し、後者は外来種が侵入地において新たに遭遇した生物と共生関係を築いて競争力を増大する可能性に注目する。このような天敵や新規共生者の候補として土壌微生物に着目する操作実験などは、近年世界的に増加傾向にある。また、侵略的外来植物が新環境に定着・繁茂し、生態系に影響を及ぼす過程においては、土壌微生物群集などへの影響を通して、生態系の栄養塩類循環等も改変される可能性がある。研究手法的な背景としては、分子生物学的手法の進展により、環境中、あるいは植物に付随する微生物群集の網羅的解析や、個々の微生物の機能的分類群（病原菌、相利共生菌など）の推定が可能となっている。そこで、本論文は、天敵解放仮説や新規共生仮説の検証を視野に入れて、最新の微生物群集の網羅的解析手法を用いて、侵略的外来種の原産地と侵入地間の微生物群集の比較を行い、また、侵入地において侵略的外来植物の密度変化が土壌微生物群集と生態系特性に与える影響を明らかにすることを目的とした。 本論文は、日本を含む東アジアが原産地で、米国フロリダ州では侵略的外来種であるマンリョウ（Ardisia crenata）に注目した。マンリョウは、日本では低密度で森林林床に生息する低木であるが、米国フロリダ州では、庭木として 100 年以上前に持ち込まれた栽培個体の子孫が野生化し、湿潤な森林の林床に 1 m2あたり 300 個体を超える超高密度個体群を形成する。原産地及び侵入地ともに顕著な植食昆虫などは存在しないので、後者における局所密度制限の欠如には、微生物群集の違いが影響している可能性が考えられる。さらに、侵入地では、マンリョウの個体群は、最初に侵入した地点に定着した個体から、近距離の種子散布・実生定着・繁殖を繰り返す結果、超高密度から低密度までの密度勾配を形成する。また、日本の本州のマンリョウ野生個体群は、栽培個体由来の米国フロリダ州の個体群と遺伝的にほぼ同一である。よって、外来植物と微生物との関係を、原産地と侵入地の間、また、侵入地においての密度依存的な微生物群集への影響を調べることを目指す本研究において、マンリョウは理想的な対象種といえる。  - 2 -第 1 章では、本論文で報告する研究の背景及び目的を論じる。特に、侵略的外来植物が原産地と侵入地で異なる振る舞いを行う理由について、最新の生態学的理論を紹介し、侵略的外来植物が生態系に及ぼす潜在的影響について、既存の知見と課題を整理した。 第 2 章では、マンリョウの葉、根、土壌における微生物群集を原産地（日本国内の岐阜、京都、山口の森林）と侵入地（フロリダ州アラチュア郡の森林３カ所）の間で、系統分類群及び機能群の違いにも留意して比較した。比較にあたっては、各地点で、30 個体ずつのマンリョウの葉・根・根の近傍の土壌を採取して、それぞれから DNA を抽出し、真菌類の ITS1 領域と細菌類の 16S rRNA 領域を PCR 増幅したのち、次世代シーケンサーを用いて真菌と細菌の両方について網羅的解析を行なった。また、真菌類については真菌機能群類データベースも参照した。この結果、マンリョウに付随する微生物群集は、葉・根・土壌の間で大きく異なり、また、それぞれが原産地と侵入地の間で顕著に異なることことがわかった。さらに、原産地の個体群において病原性真菌の多様性及び相対量が侵入地の個体群に比べて高いことが明らかとった。特に葉においては、マンリョウ固有病原性真菌が原産地においてのみ見られた。これらの結果は、マンリョウに付随する微生物群集の違いが地理的な違いと植物―微生物相互作用の両者を反映する可能性を示し、また天敵開放仮説を支持するものであった。 第 3 章では、侵入地においてマンリョウの分布拡大にともない形成された密度勾配を活用し、マンリョウの個体群密度の変化が土壌化学特性及び土壌微生物群集の多様性と構造に与える影響を明らかにした。マンリョウの局所密度が低いうちは、まだ未侵入の場所と比べて土壌化学特性及び土壌微生物群集の違いはないが、1 m２あたり 10以上のマンリョウ成熟個体が存在する高密度状態になると、水分・有機物濃度・窒素濃度・リン濃度などの土壌物理化学特性及び土壌微生物群集の多様性と構造に劇的な変化があった。これらの結果は、侵略的外来植物の環境への影響を評価する際に、局所密度に留意して解析する重要性を示した。 第 4 章では、第 2 章及び第 3 章の結果に基づき、マンリョウの原産地での密度制限や侵入地での高密度個体群形成に関連する可能性のある微生物を推測し、それらの機能について議論した。また論文全体を通して報告される結果に基づいて、将来的に明らかにすべき問題点を議論した。 まとめると、本論文の内容は、侵略的外来植物と微生物群集との関係を、原産地と侵入地の間で比較し、また、侵入地においては局所密度に関連して調べることで、外来植物の侵略成功や生態系への影響についての生態学的要因を明らかにできることを示すものである。  注)論文内容の要旨と論文審査の結果の要旨は１頁を３８字×３６行で作成し、合わせ て、３,０００字を標準とすること。 論文内容の要旨を英語で記入する場合は、４００～１,１００wordsで作成し 審査結果の要旨は日本語５００～２,０００字程度で作成すること。  - 3 -（続紙 ２ ）                             （論文審査の結果の要旨）  近年、群集生態学や外来種侵略性の研究において植物―微生物相互作用は大きな注目を浴びつつあるが、微生物群集の網羅的解析を活用する研究は限られている。本研究は次世代シーケンサーを活用して、真菌と細菌の多様性と群集構造を侵略的外来植物の原産地と侵入地において比較することで、膨大な微生物群集多様性に隠された生態学的に意味のある違いを探索した。評価すべき点は以下の４点にまとめられる。 1. 日本原産かつ米国で外来種であるマンリョウに付随する微生物群集の地理的な比較において、天敵解放仮説を支持する結果を得た。 2. 土壌や根内に加えて葉の内生菌も解析することで、天敵解放仮説に寄与する可能性のある病原性微生物の探索では葉内菌も対象とすべきことを示した。 3. 根の近傍の土壌の微生物多様性は侵入地の方が高いにもかかわらず、根や葉の内部から検出される病原性の細菌と真菌類の多様性は自生地の方が高く、植物―微生物相互作用の重要性を支持する結果を得た。 4. 侵略的外来植物種の局所密度が土壌微生物群集の構造と土壌の物理化学的特性の両者に非線形的に大きな影響を与える事例を、野外の自然生態系において初めて示した。 以上のように、本研究は、侵略的外来植物と微生物群集の関係に注目して新たな研究テーマを開拓して複数の興味深い知見を得ており、生物多様性の生態学的基盤の理解を深め、植物生態学、群集生態学、生態系生態学の発展に寄与するところが大きい。よって、本論文は博士（農学）の学位論文として価値あるものと認める。 なお、令和６年２月１５日、論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結果、博士（農学）の学位を授与される学力が十分あるものと認めた。また、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。   注）論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文は、本学学術情報リポジトリに掲載し、公表とする。 ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。  要旨公開可能日：   年   月   日以降（学位授与日から３ヶ月以内）  

日本在来の侵略的外来種Ardisia crenataに付随する真菌・細菌の群集組成のDNA塩基配列を用いた解析

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/288751/2/ynogk02583.pdf

日本在来の侵略的外来種Ardisia crenataに付随する真菌・細菌の群集組成のDNA塩基配列を用いた解析

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