京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第25304号工博第5263号京都大学大学院工学研究科分子工学専攻(主査)教授 佐藤 啓文, 教授 森 泰生, 教授 跡見 晴幸学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Mahana, Yutaka

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京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第25304号工博第5263号新制||工||2001(附属図書館)京都大学大学院工学研究科分子工学専攻(主査)教授 佐藤 啓文, 教授 森 泰生, 教授 跡見 晴幸学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDGA

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 （  続紙  １  ） 京都大学 博士（工学） 氏名 真𡽶 裕 論文題目 Structural Analysis of DNA and Protein Recognition by Methyl-CpG-Binding Domains (メチル化 CpG 結合ドメインによる DNA およびタンパク質認識の構造学的研究)  （論文内容の要旨）  本論文は、メチル化CpG結合ドメイン (MBD)の構造と分子認識機構について、核磁気共鳴分光法 (NMR)とX線結晶構造解析を中心とした手法により解析した結果をまとめたものであって、4章からなっている。  第1章は序論であり、前半では真核生物のゲノムが形成するクロマチンの構造とその重要性について解説している。クロマチンは塩基性タンパク質であるヒストンにゲノムDNAが巻きついたヌクレオソームの繰り返し構造であり、ゲノムDNAを核内に収納する上で必須であることに加え染色体分配やゲノムの安定化にも重要であることを述べている。後半では、ゲノムDNAとヒストンの後天的な化学修飾であるエピゲノム修飾について概説している。ゲノムDNAにおけるシトシンのメチル化が主に遺伝子の転写を抑制するシグナルとして機能することを述べ、メチル化状態の制御および認識に関与するタンパク質に関する知見をまとめている。特に、本論文で扱ったMBDファミリーに関して先行研究の知見を整理し、MBDによるメチル化CpG認識の遺伝子の転写抑制における重要性および疾患との関連について詳細に記述している。  第2章では、植物のMBDタンパク質の構造およびメチル化DNA認識に関する研究をまとめている。植物細胞において、メチル化されるシトシンはCpG配列に限定されない。多様な配列中でのシトシンメチル化は植物特有の細胞機能に重要であると考えられるが、植物MBDがCpG以外の配列におけるメチル化シトシンを認識できるかについては研究者の間で見解が分かれており、メチル化シトシンを認識すると推定されるMBDの構造情報も得られていなかった。本章では、シロイヌナズナのMBDでありDDM1やAGO4など重要なエピゲノム制御因子との相互作用が報告されているMBD6タンパク質がもつMBD (AtMBD6 MBD)の構造機能解析を行った。生化学的なアッセイの結果、AtMBD6 MBDは動物の典型的なMBDと同様、メチル化CpG特異的な認識モチーフとして機能していることが示唆された。また、溶液NMR法によってDNAに結合していない状態のAtMBD6 MBDの構造を決定し、3つのβストランドと 1つのαヘリックスからなるMBDのコア構造が保存されていることを示した。一方、動物MBDにおいてコア構造の安定化に寄与する構造モチーフはAtMBD6 MBDには存在せず、C末端領域が激しく揺らいでいることが明らかになった。さらに、メチル化CpGとの結合に伴う化学シフト変化を解析することで、AtMBD6 MBDのメチル化CpG結合領域は動物MBDと類似していることを見出した。しかし、化学シフト変化の定量的な解析により求められたDNAへの結合の強さは動物MBDと比較して著しく低いことが明らかになった。点変異を導入したAtMBD6 MBDのNMR解析から、DNA結合能低下の主たる要因がリン酸骨格との非特異的な静電相互作用の欠失であることを示した。また、野生型と変異体との比較から、AtMBD6 MBDではメチル化CpG認識に際して重要な 2つのアルギニンフィンガーモチーフが十分安定に形成されないためにより解離が起こりやすくなるというモデルを提唱している。以上はメチル化DNAに結合する植物MBDに関する初めての構造学的な知 京都大学 博士（工学） 氏名 真𡽶 裕 見を与えると同時に、植物MBDが単独ではメチル化CpGに富む領域に局在できない可能性を示唆している。AtMBD6についてはホモ二量体の形成や他のDNA結合タンパク質との相互作用が報告されており、これらの機能により弱いDNA結合能を補完する可能性があると考察している。  第3章では、ヒトのヒストンメチル化酵素であるSETDB1とSETDB2がもつ、既知MBDとの配列相同性が低いMBDによるタンパク質との相互作用についての研究成果をまとめている。SETDB1/2はヒストンH3の 9番目のリジン (H3K9)をトリメチル化することにより内在性レトロウイルスや免疫応答に関与する遺伝子の転写を抑制すると考えられている。それぞれのC末端にはMBDと活性ドメインが隣接しており、DNAのメチル化とH3K9トリメチル化を結びつけると考えられてきた。しかし、SETDB1/2のMBDはメチル化CpG認識に必須の残基を複数欠いており、実際にどのような機能を果たしているのかは不明であった。本章では、免疫沈降 -質量分析によりSETDB1/2結合因子として同定された性状不明のタンパク質C11orf46のCys-richドメイン (CRD)が、SETDB1/2のMBDと直接相互作用することを同定した。DNA結合モチーフとして知られてきたMBDのタンパク質への結合は、確度の低い手法で示された例はあるが、構造解析など信頼性の高い情報は得られていなかった。そこで本章では、SETDB2 MBD–C11orf46 CRD複合体の単結晶を用いてX線回折実験を行い、得られた回折データから 1.82 Å分解能で構造を決定した。結晶構造中で、SETDB2 MBDはMBDコアに加えてN末端領域に追加の構造モチーフを有し、コアのループに位置するシステイン残基とともに Znイオンに配位していた。この新規 Zn結合モチーフは SETDB1/2にのみ保存されており、進化的な過程でC11orf46 CRDとの相互作用面として獲得されたと考えられる。このN末端領域を欠失させたSETDB1変異体は酵素活性をもたないと報告されており、C11orf46との相互作用がSETDB1/2の活性に必要である可能性が見出された。N末端Zn結合モチーフとMBDコアは既知MBDのDNA結合領域に類似した塩基性の分子表面を形成し、C11orf46 CRDとの相互作用を担っていた。一方、C11orf46 CRDはループのみからなる特徴的なコア構造とC末端のβシートで構成されていた。CRDのループ領域は2つのZn結合モチーフによって束ねられており、加えて 2つのアスパラギン酸 -アルギニンペアが塩橋を形成して頑強な構造を維持していた。このうち1つに含まれるR236の変異は常染色体性知的障害の発症因子であると報告されており、この変異を導入したC11orf46 CRDがSETDB1 MBDと相互作用できなくなることを生化学的なアッセイによって明らかにした。すなわち、C11orf46との相互作用が細胞内での SETDB1の正常な機能に不可欠であることが示された。SETDB2 MBDのアルギニンフィンガーがCRDのコアを認識し、CRDのβシートがMBDと分子間βシートを形成することにより、両者は互いを特異的に認識していることを見出した。以上の結果は、MBDによるタンパク質間相互作用に関する初めての構造情報をもたらす知見であるとともに、発見から 20年余り経過しているにも関わらず不明な点が多い SETDB1/2の機能解明に向けた重要な端緒となるものであると考えられる。  第4章は結論であり、本論文で得られた成果について要約している。    

メチル化CpG結合ドメインによるDNAおよびタンパク質認識の構造学的研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/288738/1/gkogk05263.pdf

メチル化CpG結合ドメインによるDNAおよびタンパク質認識の構造学的研究

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