京都大学新制・課程博士博士(理学)甲第25092号理博第4999号京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻(主査)教授 池田 保, 教授 市野 篤史, 准教授 伊藤 哲史学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDFA

Watanabe, Masahiro

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（ 続紙 1 ）京都大学 博士（理　学） 氏名 渡邉　真広論文題目On the ramified Siegel series（論文内容の要旨）保型形式の分野において、フーリエ展開の係数を調べ整数論の立場から考察することは重要な研究手法である。モジュラー群上のアイゼンシュタイン級数に対してはそのフーリエ係数にリーマン・ゼータ関数及び約数関数が現れることが古くから知られている。一方、多変数のジーゲル・アイゼンシュタイン級数のフーリエ展開の係数はずっと難しく、ジーゲルにより研究が始められてから明示公式が得られるまで 80年近い年月がかかった。ジーゲル・アイゼンシュタイン級数は、ジーゲル上半平面の上で定義される多変数の正則保型形式であり、ジーゲル、マース、北岡、桂田など多くの研究者により研究が進められてきた。ジーゲル・アイゼンシュタイン級数のフーリエ展開の係数は，局所密度と密接に関連していることが知られている。局所密度もまた、長らく一般的な公式が知られていなかったが、近年の佐藤と広中により剰余標数が奇数の場合に明示的な公式が与えられた。この佐藤と広中による論文では、対称行列の空間における岩堀部分群の作用の代表元を用いて積分を計算している。これによりガウス和の積分の項を明示的な形で表すことができ、それ以降の研究が大きく進展した。フルモジュラーの場合の桂田の結果は片方がユニモジュラーの場合の局所密度の結果を用いれば導出できたが、レベル pのジーゲル級数を計算するとなるとより一般的な局所密度の公式が必要となる。軍司の論文では、それら局所密度の積をフーリエ展開の係数に持つ「種のテータ級数」とジーゲル・アイゼンシュタイン級数の間の線形結合の係数を調べている。この結果と佐藤・広中の結果と組み合わせることにより，軍司は p進数体上のレベル pの場合のフーリエ展開の係数を調べることに成功した。本研究では、まず主要論文においてこの軍司の行った内容の局所的な手法による積分計算を実現した。具体的には、佐藤・広中の論文における次の要素(1) 岩堀部分群によるシンプレクティック群の軌道分解の公式(2) 軌道ごとの積分は岩堀部分群の上の積分の値に帰着されること(3) その積分が論文中におけるガウス和の公式を用いて明示的に計算できることを用いることにより、局所的な積分計算のみで結果を得た。p進数体上ではこの結果は軍司による大域的な結果と一致する。さらにヴェイユ定数を用いることにより一般的な非アルキメデス・剰余標数奇数の局所体上で定義されるジーゲル級数に対しても同様の計算を行った。これらジーゲル級数は、局所表現の退化ホイッタカー関数と看做すことができる。実際ジーゲル級数を考える際には、極大放物部分群からの退化主系列表現を考え、（分岐ジーゲル級数について）それらのホイッタカーモデルを考えていると考えることができる。キャッセルマンやシャライカの論文にて p進群の既約不分岐主系列表現に関する研究がなされたのを皮切りに、現在まで様々な研究がなされている。特に池田の関数等式の論文においては、概均質ベクトル空間である対称行列の空間における関数等式と、シンプレクティック群の上の退化ホイッタカー関数における関数等式とを結びつける等式が計算されており、スイート、クドラ、佐藤らによる先行研究をまとめたものとなっている。主論文には主に大きく 2つ結果があるが、そのうちの 1つ目はジーゲル級数の絡作用素に関する固有ベクトルを 8次の場合まで計算機による計算によって調べたものである。この作用素を計算する際、退化主系列表現を主系列表現に埋め込むことにより、主系列表現の場合の絡作用素の計算に帰着することができる。この結果を用い、より大きな行列の上で計算をするプログラミングを、計算機代数システムであるPARI/GPの上で走らせ、結果を得たものである。さらにこれらの表現行列は高々可算個の複素数を除き対角化可能であり、その係数を表示した。それら固有ベクトルを見ると、係数がガウス和の冪だけ捻られて足された関数が存在し、それ以外の固有関数は規則が見えない、Kタイプとしてもわかりにくいものであることが考察できる。ガウス和の冪だけ捻った関数に関しては、ヘッケ環の冪等元と看做すこともできるが、有限体上のヴェイユ表現を考えることにより、実際にそれらの関数が存在し係数がガウス和と対応していることがわかるので、それを証明した。続いて 2つ目の結果は、桂田のジーゲル級数の帰納的公式と全く同様の公式を分岐指標の場合のジーゲル級数について導出したことである。自明指標の場合の桂田の計算においては、ジーゲル級数と局所密度との関連が早くから知られており、局所密度に関する帰納的な式を用いることで帰納的公式を得ることができたが、分岐指標の場合は局所密度との関係がよくわかっていない。本研究では局所密度を用いる代わりに、佐藤・広中の公式を用いて組み合わせ論的な変数を持つ関数の有限和・有限積として表示したジーゲル級数の公式を用いて帰納的公式を得た。この公式においては、変数となる対角行列の最高冪の冪指数に依存している項が限られており、その条件は変数である集合の順序付き分割の 0番目の集合が nの 1元のみの集合であることが必要条件となっている。その場合の和を計算すると 1つ小さい次数のジーゲル級数が因数に含まれる。すなわち最高冪指数に依存する項の結果がわかっており、そこで最高冪を 2増やすことでジーゲル級数に関する等式を 1つ得る。この等式は桂田の局所密度を用いる方法によっても類似の結果が出されており、そこから関数等式と連立させることで帰納的公式を得ている。これにより桂田の計算と同様の計算が可能となり、分岐ジーゲル級数の帰納的公式を得ることが可能となった。（ 続紙 2 ）（論文審査の結果の要旨）渡邊氏の論文では、一般の剰余標数が奇数の局所体上で定義される分岐ジーゲル級数の明示的公式を与え、さらにその関数等式、帰納的公式を与えている。渡邊氏はまず、佐藤・広中による対称空間における岩堀部分群に関する軌道分解の結果を用いて、分岐ジーゲル級数を有限和の形に表した。この和には加法指標に依存する項が現れるが、渡邊氏はこれをヴェイユ定数を用いて具体的に書き表した。これにより分岐ジーゲル級数の明示的公式を得ることに成功した。次に、渡邊氏は池田による対称行列の空間上の局所ゼータ積分の関数等式を応用して、分岐ジーゲル級数の関数等式を具体的な形で得ることに成功した。この結果と明示的公式を組み合わせることにより、渡邊氏は分岐ジーゲル級数の帰納的公式も具体的な形で与えた。この帰納的公式は桂田による不分岐ジーゲル級数の帰納的公式と類似した形であることが明らかになった。このように本論文は分岐ジーゲル級数について新たな知見を加えるものであり、今後の発展も見込まれる。以上のような理由から本論文は、博士（理学）の学位論文として十分なものであると判断した。また，論文内容とそれに関連した事項について令和 6年 2月 1日に試問を行った結果、 全調査委員の一致で合格と認めた。要旨公表可能日： 年　　　月　　 日以降

分岐ジーゲル級数について

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分岐ジーゲル級数について

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