京都大学新制・課程博士博士(理学)甲第25107号理博第5014号京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻(主査)教授 田島 治, 教授 中家 剛, 准教授 榎戸 輝揚学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDFA

Sueno, Yoshinori

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京都大学新制・課程博士博士(理学)甲第25107号理博第5014号新制||理||1715(附属図書館)京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻(主査)教授 田島 治, 教授 中家 剛, 准教授 榎戸 輝揚学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDFA

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  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 末野 慶徳 論文題目 Development of calibration and noise characterization methods for a CMB telescope, GroundBIRD, using its commissioning observation data （CMB偏光観測望遠鏡 GroundBIRDにおけるコミッショニング観測のデータを用いた較正手法とノイズ評価手法の開発） （論文内容の要旨）  宇宙背景方放射(CMB)は宇宙のはじまりを知る上で最も強力なプローブである。ビックバン以前の宇宙論として最有力のインフレーション仮説は、原始重力波の存在を予言し、大角度スケールのCMBの偏光パターン(EモードとBモード)を生成することが知られている。特に、原始重力波由来のBモードの発見はインフレーション仮説の決定的な証拠となる。また、大角度スケールのCMB偏光は最初の天体が生まれた宇宙の再電離期の光学的厚みにも感度を持つ。光学的厚みは再電離期の宇宙を特徴づけるだけでなく、ニュートリノの質量和の決定精度向上にもつながる重要なパラメータである。大角度スケ ールの観測は大気放射の揺らぎの影響を受けてしまうため、これまで地上から測定することは困難であ った。 GroundBIRDは大角度スケールのCMB偏光観測に特化した地上観測実験である。望遠鏡を最速で三秒で一回転という速さで方位角方向に連続回転させて観測を行う。このような高速の視線変調により、大気放射の揺らぎの影響を抑制しつつ、全天のおよそ40%の領域を観測する。これによって、大角度スケールのCMB偏光観測による原始重力波の探索と光学的厚みを精密に測定することを目指している。 CMBデータを解析する際には、各検出器の時系列データからCMB偏光マップを再構成する必要がある。その際に、各検出器の視線方向と偏光角(空に射影したアンテナの感度のある方向)の較正が必須である。本論文では、2020年にコミッショニング観測を行い、そのデータを用いて視線方向と偏光角の較正手法の開発を行った。 視線方向の較正は、望遠鏡の分解能に比べて十分小さな木星などの惑星を用いて行われてきた。しかし、惑星は信号強度が低いだけでなく、10年スケールで公転するため観測できない期間が長く続く。そこで、本論文では月を用いた視線方向の較正手法を開発した。月は高頻度で観測でき、信号強度も十分強い。このことを利用して視線方向の較正手法を確立した。その結果、過去のCMB実験と同等の3.3分角の較正精度を達成した。 先行研究では、偏光角の較正はTauAなどの既知の偏光信号を用いて行われてきた。しかし、TauAもまた信号強度が低いため、観測が難しい。そこで本論では、較正した視線方向の情報に基づく新たな偏光角の較正手法を考案した。この手法は検出器ウエハの回転角度を各検出器の視線方向を用いて算出し、その回転角度から偏光角を求めるものであり、過去のCMB実験と同等精度（0.27°）での較正を達成した。 本論文では、達成した較正精度が物理観測に与える影響も見積もった。各較正における不定性は光学的厚みの1%の不定性に匹敵するものであった。これは現在最も感度の良い測定における不定性の1/10である。また、原始重力波由来の探索における不定性は最大でもテンソル・スカラー比(r)の現在の上限値(r<0.036)の1/30であった。    （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）   宇宙背景放射（CMB,Cosmic Microwave Background）は宇宙最古の光であり、その精密観測によって、宇宙創成シナリオが徐々に明らかになってきた。近年は、CMBの偏光成分の観測が活発化しており、それによって宇宙初期のインフレーションや宇宙の再電離を詳しく理解できるようになる。本論文は、CMBの偏光観測を行う実験GroundBIRDのコミッショニング観測と、そのデータを用いた観測装置（望遠鏡）の較正とノイズの影響抑制の研究を行ったものである。 望遠鏡の視線方向が正しくわかっていないと、正しい観測結果は得られない。望遠鏡の角度分解能が36分角（0.6°）のときに必要な較正精度は、そのおよそ1/10程度である。本論文では、月の観測データを用いて視線方向の較正を行った。月は最も高頻度に観測できる天体であるが、視野角が0.5°と大きいため、視線方向の較正に与える系統誤差が十分にわかっていなかった。本論文では、月の観測データを用いた視線方向の較正手法の開発と共に、様々な観点から系統誤差の評価を行った。その結果、十分な統計精度で較正が可能であること、系統誤差も十分に小さいことを明らかにした。達成した較正精度は3.3分角であり、要求精度を満たすことに成功した。さらに、本論文では視線方向の情報を用いた偏光角の較正方法も新たに開発し、過去のCMB実験と同等精度（0.27°）での較正を達成した。そして、達成した較正精度をもとに、宇宙の再電離度やインフレーションの研究に与えるインパクトも定量的に考察を行い、目標とする測定精度よりも一桁以上小さいことも明らかにした。  本論文では、装置の較正と共に、実データに存在するノイズの分析とその影響の抑制手法の開発研究も行った。複数あるセンサーに時刻同期した“コモンモードノイズ”の存在を、センサー間の時系列データの時間相関から明らかにし、その差し引き手法を確立した。一方で、目標とする精度を達成するためには、より詳細なノイズ分析とその影響抑制が必要であるという課題も明らかにした。  いずれの研究も本人が主体的に取り組み、グループの中で研究を主導したことが明確であることが認められた。研究内容に関する発表や質疑・応答も適切であった。 よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和６年２月２日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。   要旨公表可能日：   年  月  日以降   

CMB偏光観測望遠鏡 GroundBIRDにおけるコミッショニング観測のデータを用いた較正手法とノイズ評価手法の開発

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/288541/2/yrigk05014.pdf

CMB偏光観測望遠鏡 GroundBIRDにおけるコミッショニング観測のデータを用いた較正手法とノイズ評価手法の開発

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