京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第25182号医博第5068号京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 今中 雄一, 教授 西浦 博, 教授 村井 俊哉学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Sato, Akira

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京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第25182号医博第5068号新制||医||1071(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 今中 雄一, 教授 西浦 博, 教授 村井 俊哉学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDFA

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京都大学 博士（  医  学） 氏 名 佐 藤󠄄   明 論文題目 Development and validation of a prediction model for rehospitalization among people with schizophrenia discharged from acute inpatient care （統合失調症患者における急性期病棟退院後の再入院を予測するモデルの開発と検証） （論文内容の要旨） 目的：統合失調症もしくはその類縁疾患にとって、再発や再入院は疾病の回復の妨げとなることが知られている。本研究は統合失調症及びその類縁疾患ある患者における再発を予測するモデルを開発・検証した。特に、過去に複数回入院ある患者も包含したことが本研究の特徴である。 方法：過去起点コホートを用いた。コホートは国内3つの精神科病院(磯ヶ谷病院、浦和神経サナトリウム、千葉県精神科医療センター)の急性期病棟を2014年から2018年の間に退院した統合失調症もしくはその類縁疾患ある18才以上の患者で構成された。退院時に9個の予測因子を紙カルテから測定した。9個の予測因子とは退院時年齢、性別、生活保護の受給、過去の入院回数、今回の入院日数、現在の物質使用障害、心理社会的介入の回数、持効性注射製剤の使用、入院前1年間の精神科病院への入院である。予測因子を測定された研究参加者は紙カルテ上で12ヶ月間追跡され、再発および再入院の有無が観察された。なお、再発は複合アウトカムであり、再入院、精神科医による要入院の判断、抗精神病薬の増加、自殺や他害の念慮もしくは自傷他害に至る暴力行為の 4 つで構成された。コックス回帰分析で予測モデルを開発し、エラスティックネットで過剰適合(overfitting)に対応し、モデルの予測性能の一つである識別能(discrimination)についてブートストラップ法等で内的妥当性を検証し、病院単位のクロスバリデーション法で内的・外的妥当性を検証した。もう一つの予測性能である較正(calibration)は較正プロットを作成した。 結果：805 名の研究参加者の結果が解析された。9 個の予測因子を個別に検討した場合の統計的に有意な予測因子は過去の入院回数( (HR 1.42, 95% CI 1.22–1.64)と今回の入院日数(HR 1.31, 95% CI 1.04–1.64)だった。再発モデルの開発における識別能はC統計量で0.59 (95% CI 0.55–0.63)だった。再入院モデルの内的及び内的・外的妥当性を検討したところ、C統計量はそれぞれ0.64 (95% CI 0.59–0.69) と0.66 (95% CI 0.57–0.74)だった。較正プロットによると較正は十分と思われた。 考察：再発をアウトカムとした予測モデルの性能は識別能が C 統計量で 0.59 と、偶然に予想が当たるのと大差ない性能だった。複合アウトカムである再発の測定困難による見逃しが一因と考えられた。しかし、仮に複合アウトカムの要素それぞれを全て測定できたとしても、再発の予測モデルの性能は改善しなかった可能性がある。全ての要素が主観的に記録されたことと、退院後から再発までの間に生じたかもしれない予後に影響を与えうる因子を測定できなかったからである。再入院の予測モデルのC統計量(0.66)は、同様なアウトカムや集団で実施された先行研究と概ね同様の性能を示した。本研究の限界は大きく2つある。1つは服薬アドヒアランスや家族の感情表出といった退院後の統合失調症患者の予後に影響を与えることが知られている予測因子を含めることが不可能だったことである。もう 1 つはフォローアップできなかった研究参加者が 268 名いたため、再入院アウトカムの数を過小評価している可能性である。本研究の強みは頑健な研究デザインである。 結語：本研究のモデルは退院後の再入院について適度な識別能を示した。複数回のエピソードをもつ慢性期の統合失調症患者のニーズを注意深く探りながらリサーチクエスチョンを組み立てることが、臨床的に有用なモデルの開発に繋がると考えられる。 （論文審査の結果の要旨） 本研究は 3 つの精神科病院における過去起点コホートを用いた、統合失調症患者の退院後 1 年間の再発・再入院についての予測モデル研究である。その研究計画は事前にプロトコール論文として出版した。 申請者は 3病院の紙カルテをスクリーニングし、統合失調症患者 805名を本研究に登録し、先行文献に基づいて事前に設定した予測因子 9 個を用いて再発・再入院の予測モデルを開発・検証した。再発を予測するモデルの性能は不十分だったため、再入院の予測モデルについて結果を解析した。過学習を避けるために、エラスティックネットで各予測因子の係数の調整を行った。c統計量, calibration plotをモデル性能の指標とし、ブートストラップ法等により内的妥当性を、病院単位でモデルを比較した内的・外的妥当性を検討した。 本研究で開発したモデルの性能は c統計量にして 0.64から 0.66程度と、初発の統合失調症等の罹病期間が短い患者群を対象に再発・再入院の予測モデルを開発・検証した先行研究のモデルと同程度であったが、日常臨床で使用するには不十分と判断した。本研究は罹病期間の長い統合失調症においても、先行研究と同様に、カルテから取得できる臨床情報では臨床使用に耐えうる予測モデルの開発は困難であることを明らかにした。 以上の研究は統合失調症における再発・再入院の予測モデル研究の発展に寄与するところが多い。   したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、本学位授与申請者は、令和 5 年 2 月 9 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。  要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

統合失調症患者における急性期病棟退院後の再入院を予測するモデルの開発と検証

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/288616/2/yigak05068.pdf

統合失調症患者における急性期病棟退院後の再入院を予測するモデルの開発と検証

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