京都大学新制・論文博士博士(医学)乙第13585号論医博第2305号新制||医||1070(附属図書館)(主査)教授 石見 拓, 教授 古川 壽亮, 教授 近藤 尚己学位規則第4条第2項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Fukunaga, Naoto

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京都大学 博士（ 医 学 ） 氏 名 福 永 直 人 論文題目 Left Ventricular Size and Outcomes in Patients With Left Ventricular Ejection Fraction Less Than 20%  （左室収縮率20%未満の患者での左室径と成績）  （論文内容の要旨） 開心術後の成績を予測する上で低左室収縮率は短期・長期成績の死亡率に大きく関与する因子であると報告されてきた。しかし、術前左室収縮率と左室径の関係は十分に報告されていない。本研究では開心術後成績を左室収縮率と左室径の点から比較検討し、これら二つの因子と術後成績の関連について検討した。 本研究はカナダのトロント総合病院のデータを用い、University Health Network倫理委員会の承認を得て行われた。2010 年から 2016 年の間に行われた開心術症例のうち、術前左室収縮率 60%以上の 5685 人と左室収縮率 20%未満の 143 人を対象とした。左室収縮率が20%から59%の対象や心移植・左室補助装置植え込み例は本研究から除外した。左室収縮率20%未満の患者を術前左室径に基づいて左室径5.4cm以下の群と5.5cm以上の2群に分けた。Propensity-score matchingを行い、左室収縮率60%以上の群(n=429)と20%未満群(n=143)を3:1の比率で作成した。Primary end pointは全死亡率と主要合併症率もしくは手術死亡率とした。Secondary end pointは入院期間と人工呼吸器装着期間とした。これらend point を左室収縮率60%以上の群と左室収縮率20%未満かつ左室径5.4cm 以下と左室収縮率20%未満かつ左室径5.5cm 以上の群間でgeneralized linear model を用いて比較検討した。 Propensity-score matching後の左室収縮率60%以上と20%未満群では、それぞれ年齢中央値は64歳、80%以上が男性であった。Society of Thoracic Surgeonsの術式カテゴリー分類に基づき、単一冠動脈バイパスが各群で 38%以上に施行されていた。左室収縮率20%未満の群では術前心筋viabilityの測定が約50%の患者で施行されていた。 左室収縮率60%以上と20%未満の群間で全死亡率、術後合併症率もしくは手術死亡率、入院期間と人工呼吸器装着期間を比較した場合、有意差をもって、左室収縮率 20%未満の群で高く、もしくは長くなった。左室収縮率 20%未満かつ左室径 5.4cm 以下群と左室径5.5cm以上の群間ではこれらend pointに有意差は認めなかった。 次に患者群を単一冠動脈バイパス術を受けた群に絞り、サブグループ解析を行った。3:1でマッチしたところ、左室収縮率60%以上の患者が165人、20%未満が44人となった。上記同様の比較を行うと、20%未満の群では全死亡率と術後合併症率もしくは手術死亡率が有意に高くなったが、入院期間に有意差は認めなかった。最後に、generalized linear model を用いて 3 群間での比較を行った。左室収縮率 60%以上と 20%未満かつ左室径5.4cm以下の群間では全死亡率、術後合併症率もしくは手術死亡率と入院期間で有意差を認めなかった。一方、左室収縮率60%以上と20%未満かつ左室径5.5cm以上を比較するとこれらend pointは有意差をもって20%未満の群で高く、もしくは長くなった。 本研究の特記すべき所見は、単一冠動脈バイパス群においては、左室収縮率 60%以上の群と 20%未満かつ左室径 5.4cm 以下の群間では周術期成績において有意差を認めなかった点である。一般的に左室収縮率は開心術の手術成績のより重要な予測因子とされているが、特に単一冠動脈バイパス手術では、左室収縮率に加えて左室径を考慮することで低左室収縮率を有するハイリスク患者に対する外科治療を含めた適切な治療指針の検討や周術期成績を予測することが出来ると考えられた。  （論文審査の結果の要旨） 開心術後の死亡率に左室収縮率(LVEF)は関与するが左室径の関与は検討されていない。開心術施行例 5828 名のデータを用い、これら因子と術後成績の関係を検討した。Propensity-score matchingでLVEF60%以上429名と20%未満143名を抽出し、20%未満を左室径5.4cm以下と5.5cm以上に分けた。全死亡率、主要合併症発症率と14日以上の入院率を主要エンドポイントとし、入院期間と人工呼吸器装着期間を二次エンドポイントとした。 LVEF20%未満群は60%以上群と比べて両エンドポイントは有意に不良であり、左室径5.4cm以下と5.5cm以上では両エンドポイントに有意差はなかった。 冠動脈バイパス術のサブグループ解析では LVEF20%未満かつ左室径 5.4cm 以下群は主要エンドポイントが 60%以上群と同等であった。しかし、20%未満の症例数が少ないこと、matching で作成した群からサブグループ解析を行ったことからこの結果の解釈には慎重でなくてはならない。 以上の研究は、開心術施行例において左室収縮率に加えて左室径が術後成績に影響を及ぼす可能性を示唆したことで、手術成績の向上に寄与するところが多い。  したがって、本論文は博士（医学）の学位論文として価値あるものと認める。  なお、本学位授与申請者は、令和5 年7 月14 日実施の論文内容とそれに関連した研究分野並びに学識確認のための試問を受け、合格と認められたものである。  要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

左室収縮率20%未満の患者での左室径と成績

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左室収縮率20%未満の患者での左室径と成績

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