京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第24968号医博第5022号新制||医||1069(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 中山 健夫, 教授 佐藤 俊哉, 教授 江木 盛時学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Yamamoto, Ryohei

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                                                                                 京都大学 博士（ 医学 ） 氏名  山 本 良 平 論文題目 Dose-response relationship between diarrhea quantity and mortality in critical care patients: A retrospective cohort study （重症患者における下痢の量と死亡の用量反応関係：過去起点コホート研究） （論文内容の要旨） 【背景】集中治療室（intensive care unit: ICU）において下痢はよく見られる消化器症状の一つである。下痢の潜在的原因として経腸栄養、薬剤、感染症、併存疾患があり、下痢はデバイス汚染や創傷汚染リスクの増加、脱水、電解質異常、吸収不良と関連する。これまでの研究では二値変数で定義される下痢の有無が集中治療患者の死亡割合上昇と関連することが示されている。しかし、下痢に対する臨床判断は、下痢の有無のように二値変数化された情報ではなく、下痢の量という連続的な情報に基づくことが望ましい。本研究の目的は、新たに下痢を発症した ICU患者において下痢の量と死亡割合の用量反応関係を評価することである。 【方法】研究デザインは、単施設の ICUにおける診療録データを用いた過去起点コホート研究である。2017年1月から2018年12月までに、ICUで新たに下痢を発症した成人患者を対象とした。ストーマ、慢性下痢（炎症性腸症候群や短腸症候群など）、消化管手術後、消化管出血、細菌性およびウイルス性腸炎（Clostridioides difficile腸炎、サイトメガロウイルス腸炎など）、ICU 入室日の下痢、ICU 再入室、ICU 入室日の死亡のうち、いずれかを満たす者は除外した。下痢の有無はWorld Health Organizationの定義（1 日 3 回以上の軟便または液状便）で評価し、軟便または液状便の判断は、看護師が日常診療で記録するBristol stool chart scaleに基づいた。下痢の量は、看護師が日常的に重量計で測定して診療録に記録している。本研究では、新たに下痢を発症した日における下痢の量を用いて、解析を行った。主要評価項目は院内死亡割合とした。下痢の量と院内死亡割合の関連を評価するために、多変量修正ポアソン回帰モデルを用いて、Charlson comorbidity index、Sequential Organ Failure Assessmentスコア、血清アルブミン値を調整した上で、リスク比（RR）および95％信頼区間（CI）を推定した。主解析では下痢の量を連続値として扱い、感度解析では四分位近似値で下痢の量をカテゴリー化して解析を行った。また各分位カテゴリーの中央値を用いて傾向検定を行い、p for trendを算出した。 【結果】研究期間中に 1579 人が ICU に入室し、新たに下痢を発症した患者は 334 人で、除外基準に該当した患者を除き、最終的な解析対象者は 231 名であった。男性が68.4％（158人）で、年齢の中央値は72歳（四分位範囲64, 80）であった。下痢の量の中央値は401g（四分位範囲230, 645g）、院内死亡割合は22.9％（53人）、ICU死亡割合は9.1％（21人）、28日死亡割合15.3％（35人）は、90日死亡割合は24.2％（52人）であった。主要評価項目である院内死亡に関しては、下痢の量が多いほどその割合が高かった（下痢の量200g増加あたりの調整RR：1.10 [95% CI 1.01, 1.20]，p＝0.029）。下痢の量を四分位近位値（250g 未満、250－399g、400－649g、650g 以上）でカテゴリー化した感度解析では、それぞれのカテゴリーの調整RRは1.00（reference）、1.02 [95% CI 0.51, 2.04]、1.29 [95% CI 0.69, 2.43]、1.77 [95% CI 0.99, 3.21]で、傾向検定におけるp for trend は0.033であった。   【結論】新たに下痢を発症した ICU患者において、1日の下痢の量の増加は院内死亡の独立した危険因子であった。下痢の量は ICU 患者の重症度の指標となる可能性がある。 （論文審査の結果の要旨） 本研究では、集中治療室（intensive care unit: ICU）における下痢の量に着目し、単施設の ICU における診療録データを用いて、ICU で下痢を発症した231 人を対象に、下痢の量と院内死亡の関連について検討を行った。 下痢の量は、看護師が重量計で測定したデータを用いた。下痢を発症した日における下痢の量と院内死亡の関連を評価するために、多変量修正ポアソン回帰モデルを用いて、Charlson comorbidity index、Sequential Organ Failure Assessmentスコア、血清アルブミン値を調整した上で、リスク比（RR）および95％信頼区間（CI）を推定した。その結果、下痢の量が多いほど院内死亡割合が高かった（下痢の量 200g 増加あたりの調整RR：1.10 [95% CI 1.01, 1.20]，p＝0.029）。 下痢を発症した ICU患者において、下痢の量が院内死亡の予測因子であることを明らかにし、下痢の量が ICU 患者の重症度指標となりえる可能性を示したことは重要である。 以上の研究は、ICU における下痢の量と予後の関係を明らかにし、ICU患者の重症度評価に寄与するものである。   したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、本学位授与申請者は、令和 5 年 10 月 12 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 

重症患者における下痢の量と死亡の用量反応関係：過去起点コホート研究

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重症患者における下痢の量と死亡の用量反応関係：過去起点コホート研究

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