MARUYAMA, Satomi

SHIMIZU, Ayako

SONODA, Kunihiro

丸山, 智美

清水, 彩子

薗田, 邦博

Japanese

Kinjo Gakuin University Repository / 金城学院大学リポジトリ

― 8 ―金城学院大学生活環境学部エキス抽出後の梅の利用の研究― 梅果実の種からの剥離方法 ―Research on utilization of plum fruit after extract extraction-Method of peeling plum pulp from seeds-清　水　彩　子　　　薗　田　邦　博　　　丸　山　智　美Ayako SHIMIZU　　　　   Kunihiro SONODA　　　          Satomi MARUYAMA研究ノート緒言梅の加工品である梅シロップは，青梅と称される未熟な青い梅を砂糖で漬けこみ，その得られたエキス部分を食用にするシロップである 1 ）。梅シロップの製造法として，梅の収穫時期と冷凍保存後の加工方法 2 ）や加工する際に使用する糖の種類 3 ）が研究されている。梅シロップ製造において，加工後の梅は，浸透圧により収縮し表面にシワができ，外観やテクスチャーが悪く破棄される場合もある4 ）。家庭では一般ごみとして，商用加工では産業廃棄物として廃棄される。加工後の果実の有効活用方法として，梅酒に利用した梅果実の，梅ジャムへの加工の取り組みが報告されている 5 ）。梅シロップについても，果皮や果肉を再利用することができれば，家庭ごみや産業廃棄物減量の一助となると考えた。梅シロップ製造におけるエキス抽出後の梅の再利用に関する課題は，シワだけでなく，果肉が種に強く固着しているため種から果皮および果肉がはがれにくいことも挙げられる。エキス抽出後の梅の実にシワができない処理方法としては，収穫した果実のこうあ部に穴をあけ，その梅を 0℃で冷凍した状態で砂糖漬けする「冷凍処理」が報告されている 4 ）。しかし，種から果皮と果肉を剥離する方法については報告がなされておらず，容易に剥離できる方法が明らかになればより果皮，果肉の再利用が容易になると考えられる。そこで本研究は，砂糖漬けし，エキスを抽出した後の梅果実の種から果皮と果肉を剥離する方法を検討することを目的とした。方法⑴　試料梅は名古屋市東谷山フルーツパークで2019年 6 月11日に収穫され，本研究のために提供された花梅である大盃（おおさかずき）であった。梅果実の直径の平均（最小－最大）は30（24－33）mmであった。梅シロップに加工する際に使用する糖類は，梅シロップや梅酒の加工に用いられることが多い 6 ）7 ）氷砂― 9 ―エキス抽出後の梅の利用の研究（清水彩子ほか）糖（青マーククリスタル，中日本氷糖株式会社）とした。⑵　梅シロップの調製収穫 3日後の梅を，名古屋市水道水で洗浄後，シワができない処理方法として報告 4 ）された方法を参考に，竹串の先を用いて，梅1つに対し上，下，側面に 6か所穴をあけた後ジップロック（フリーザーバッグLサイズ，旭化成株式会社）に封入し10月まで，冷凍冷蔵庫（シャープ冷凍冷蔵庫SJ-LH47F-S，シャープ株式会社　2001年製）の冷凍室内でマイナス18℃で冷凍した。10月に冷凍のまま，梅シロップを 2群調製した。 2群の梅の重量はそれぞれ，1008 g，966 gであった。 3分間煮沸した果実酒製造用のガラス瓶（セーラーメイト，取手付密閉瓶 3 L，星硝株式会社，以下ガラス瓶とする）の中に，目視で 3等分した梅と同量の氷砂糖を，最初に梅，その上に氷砂糖と交互に積み重ね，最上部に氷砂糖となるように入れた。室温22℃，湿度30％から60％，蛍光灯照明が24時間点灯している室内に設置し，ガラス瓶を平日に一日 1回反転させた。氷砂糖が完全に溶けたのはガラス瓶に入れてから 7日目であった。ガラス瓶に入れてから21日目に，ガラス瓶内の梅を取り出し，梅果実とシロップとを分離した。梅果実重量とシロップ重量の平均値はそれぞれ736 gと1162 gであった。⑶　梅果皮および果肉の剥離方法果肉の種子からの剥離方法について，雪平鍋で加熱し，手剥きによりを剝離する方法（以下，一般鍋法とする）と，圧力鍋を使用する方法（以下，圧力鍋法とする）の 2つの方法を比較することとした。一般鍋法と圧力鍋法の比較項目は，加工品の重量確保のための果肉の種からの剥離のしやすさ，果肉（果皮含む）重量とした。梅シロップを調製し，シロップを分離した後の梅果実 2群をそれぞれ半量に分け，一般鍋法と圧力鍋法にて加熱した。すべての実験は室温24℃，湿度55％の調理室で同日に行った。一般鍋法では，アルミニウム製雪平鍋（カオアルミ株式会社　DON雪平鍋，以下アルミ鍋とする）を用いた。梅と梅の1.2倍重量の蒸留水をアルミ鍋に入れ，蓋をして，ガスコンロ（デリシアRBC4WNGN69，東邦ガス株式会社）強火（火力 9）で 3分，弱火（火力 3）で10分加熱した。消火後に蓋をしたまま室温で 2時間放置した。ポリエチレン手袋（株式会社ファーストレイト）を装着し，管理栄養士課程の学生 1名が，梅一粒ずつから手で果実をしごいて果皮と果肉を種から剥離した。この実験での剥離は，全群とも同一の者が行った。圧力鍋法では，4.5 L圧力鍋（高圧・低圧選択式コンフォート，フィスラー社）（以下，圧力鍋とする）を用いた。一般鍋法同様に梅と梅重量の1.2倍の蒸留水を圧力鍋に入れた。木べらで全体を混ぜのち，蓋を閉めて強火（火力 9）で加熱し，加圧開始後から13分間高圧（100 kPa）で加圧し，火を止めて10分放置した。その後，一般鍋法同様に， 2時間室温で放置し，果皮と果肉を種から剥離した。結果一般鍋法と圧力鍋法で使用したエキス抽出後の梅重量と，種から剥離したのちの果皮，果肉重量を表 1に示す。果肉の剥離については，一般鍋法では果肉は柔らかくなったものの，種に強く固着しており，しごいて取るために強い力が必要であった。本実験では剥離を終えるのに 1群あたり30分以上の時間を要した。剥離を終えたのちに，種には目視で確認できる量の果肉が金城学院大学論集　自然科学編　第19巻第 2号― 10 ―2023年 3 月強く固着しており，手で取ることはできなかった。圧力鍋法では，手でしごいて取れる程度に果肉が軟らかく，手で梅をこすり合わせるだけで容易に剥離できた。ただし種実にわずかに固着している果肉を目視で確認できたため，果肉すべてを剥離できたとはいえない。　　考察本研究は，砂糖漬けして梅シロップを製造したのちの梅から，果肉と種と分離する方法を検討することを目的とした。エキス抽出後の梅に水を加えて加熱し，果肉を柔らかくして種から剥離する方法として，アルミ鍋で加熱後に手で剥離する一般鍋法と，圧力鍋で加圧加熱し手で剥離する圧力鍋法とを比較検討した。本研究では，一般鍋法と圧力鍋法とで，果肉の剥離重量はわずかに圧力鍋法の方が多かったものの，差があったことを示すことはできなかった。実験の設定群数が少なく統計学的な検出力を持たなかったためである。実験する際の群について，今後数を増やし，統計学的に結果を論じる必要がある。種からの剥離については，果皮を手でしごき取る際に手袋が破れる現象が，一般鍋法にだけ見られた。これは一般鍋法と圧力鍋法とでは，種と果皮との固着に差があったことを示している。圧力鍋は内部の圧力が1.6～2.3気圧，水の沸点が115～125℃となり，消火後も沸騰状態が続いて余熱が利用できる 8 ）。それに対して一般鍋では，鍋の中の圧力は外気圧と同じで，加熱温度は100℃未満であるため，圧力鍋より低い。鍋内の温度が，梅の果皮の柔らかさや果肉の固着に影響したと考えている。本研究の限界は，梅の加工量が少なく統計的に耐えうる群分けができなかったこと，加工する梅の種類が 1種類だったことなど，実験試料が量，種類ともに少なかったことである。農産物の加工方法の研究では，農産物の収穫日や収穫場所により個体差が大きいため，多くの限界があるままに研究を進めた。収穫量を増やすなどにより，これらの限界を解決した実験プロトコルが必要である。食品加工品においては，美味しさが重要である。剥離した果皮を美味しく食することができれば，産業廃棄物の減少に寄与できる。今後，エキス抽出後の梅果実を用いた加工食品のおいしさについても研究を進める予定である。結論本研究では，梅シロップ調製後の梅の果肉を種から剥離する方法を検討した。圧力鍋で加圧し手で剥離する方法は，加圧しないで加熱する方法より容易に果肉を剥離できる可能性が示された。謝辞東谷山フルーツパークの関係者の皆様には，梅を収穫し提供していただきました。心より感謝申し上げます。表１　シロップ分離後の梅重量と果肉を種から剥離したのちの果肉重量　 一般鍋法 圧力鍋法　 1群 2群 平均 1群 2群 平均シロップ分離後梅重量 359 377 368 362 365 363剥離後の果肉（果皮含む）重量 330 343 336 354 342 3481 群と 2群のシロップ調製前の梅重量は，それぞれ1008ｇ，966g （ｇ）― 11 ―エキス抽出後の梅の利用の研究（清水彩子ほか）梅の実ジャム製造への取り組み，技術職員による技術報告集，24，2-4（2016）6 ）大江孝明，土田靖久，岡室美絵子他：ウメ‘翠香’果実収穫時期および追熟条件が果実，梅酒および梅シロップの品質に及ぼす影響，和歌山県農林水産試験研究機関研究報告，6，61-71（2018）7 ）小林恭一，浅井喜香，江㞍智恵他：品種・収穫時期の異なる福井県産ウメ果実から調整した梅シロップの品質・性状，仁愛女子短期大学研究紀要，53，7-12（2020）8 ）肥後温子：食を支えるキッチングッズ－調理用具，電気・ガス機器とつき合う－，建帛社，78-79（2018） 参考文献1 ）友廣教道：新規梅シロップ製造法に関する研究（技術報告），近畿大学附属農場報告，11，29-30（2014）2 ）一ノ渡咲子，近藤恵子，大泉真由美：梅シロップ液の製造法，東北農業研究，45，213-214，（1992）3 ）清水彩子，薗田邦博，丸山智美：果実の未利用資源の加工に関する研究－摘果梅の加工，金城学院大学論集，17（1），5-9（2020）4 ）石原智，北爪雅恵，木暮昭二：シワができない砂糖漬け梅の処理方法，群馬県農業技術センター研究報告，11，89-90（2014）5 ）吉田智晴，宮崎豊：三重大農場新製品梅酒の

Research on utilization of plum fruit after extract extraction : Method of peeling plum pulp from seeds

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Research on utilization of plum fruit after extract extraction : Method of peeling plum pulp from seeds

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