50589364 (科研費)南山大学経済発展が資源利用に及ぼす影響に関する実証分析
2020～2022年度科学研究費助成事業 (基盤研究 (C) (一般)) 研究成果報告書33917 (科研費)202220K01692 (科研費)research repor

TSURUMI, Tetsuya

ツルミ, テツヤ

鶴見, 哲也

Japanese

Nanzan University Repository / 南山大学機関リポジトリ

南山大学・総合政策学部・准教授科学研究費助成事業　　研究成果報告書様　式　Ｃ－１９、Ｆ－１９－１、Ｚ－１９ （共通）機関番号：研究種目：課題番号：研究課題名（和文）研究代表者研究課題名（英文）交付決定額（研究期間全体）：（直接経費）３３９１７基盤研究(C)（一般）2022～2020経済発展が資源利用に及ぼす影響に関する実証分析An empirical study on the effects of economic growth on resource use５０５８９３６４研究者番号：鶴見　哲也（Tsurumi, Tetsuya）研究期間：２０Ｋ０１６９２年 月 日現在  ５   ５ ３１円     3,300,000研究成果の概要（和文）：将来、発展途上国が現在の先進国と同等の消費を行なうならば、環境負荷は地球の限界を超えてしまう。先進国の消費量も将来にわたって減少させていくことができなければ、問題はさらに深刻になる。持続可能な消費を実現させていくために、本研究では経済発展と資源利用（物質的な消費）の関係を明らかにしている。分析の結果、以下のことが示された。(1)経済発展は環境容量を測る一つの指標である生物多様性を破壊させており、その傾向は途上国において顕著である、(2)物質的消費は必ずしも主観的幸福度を増大させていない、(3)消費者が所有している物を長く大切に活用していく場合には、単位消費量あたりに得られる幸福度が増大する。研究成果の概要（英文）：If developing countries could emulate the current consumption patterns of developed countries, the entire world would be on equal footing regarding consumer behavior. However, this scenario could exacerbate the increasing global environmental burden. Furthermore, if consumption levels in developed countries are not reduced, existing problems will only be aggravated. To realize sustainable global consumption, developed countries’ current consumption levels and developing countries’ expected future consumption levels must be reduced. In this study, we investigated the relationship between economic growth and resource use. Our estimation results suggest the following:(1) Economic growth destroys biodiversity, especially in developing countries; (2) Material consumption does not necessarily improve subjective wellbeing (SWB); and (3) for material consumption, individuals who take better care of their possessions exhibit increased SWB-per-unit material consumption.研究分野： 環境経済学キーワード： 経済発展　消費　資源利用　主観的幸福度  １版令和研究成果の学術的意義や社会的意義環境負荷の指標として生物多様性に着目することで、途上国において生物多様性が特に損なわれていること、先進国ほどその悪化の状態は改善されていることが示された。しかしながら、現状では生物多様性はほとんどの国で悪化している状況にあることから、より進んだ生物多様性に対する政策がどの所得の国においても必要であることが示唆されるとともに、途上国への対策がより重要となることも示唆されたこととなる。また、消費の内訳および消費スタイルが幸福度の観点からは重要となることと、資源利用をこの観点から再検討することで幸福度を高めることのできる経済発展を考えていくことができることを示すことができた。※科研費による研究は、研究者の自覚と責任において実施するものです。そのため、研究の実施や研究成果の公表等については、国の要請等に基づくものではなく、その研究成果に関する見解や責任は、研究者個人に帰属します。様 式 Ｃ－１９、Ｆ－１９－１、Ｚ－１９（共通）  １．研究開始当初の背景 持続可能な開発目標（Sustainable Development Goals: SDGs）の目標 12 では持続可能な消費と生産のあり方が議論されている。将来の環境制約を踏まえると、現在の消費と生産の状況は持続可能ではない。すなわち、発展著しい現在の発展途上国が将来経済成長を成し遂げたとき、それらの国々が現在の日本と同じ消費スタイルを行った場合、地球の環境制約を超えてしまうことが危惧される。人口増加も相まって、地球の資源が不足し、生産の増加による環境汚染や二酸化炭素などの環境負荷も増大していくことが懸念されているのである。こうした状況では先進国の消費と生産を量的に今の水準よりも将来には低下させ、同時に資源の循環利用が必須となることは言うまでもない。 過去 40 年の間に世界の年間物質採掘量は 3 倍以上になり、過去 20 年の一人当たりマテリアルフットプリント（国内最終需要を満たすために消費された天然資源量）は多くの地域で増加傾向にあり、特にアジア太平洋地域では倍以上に増えている。資源の利用を経済発展から分離するいわゆる「デカップリング」が重要となる。この資源利用と経済発展の間の「デカップリング」を検証する研究は、経済発展と環境負荷の関係を検証する「環境クズネッツ曲線仮説」の研究分野でも検証がなされてきている。横軸に経済発展、縦軸に環境負荷をとると、Ｕ字を上下逆にした逆Ｕ字型の発展プロセスをたどる可能性があるという仮説である。環境クズネッツ曲線仮説を検証する研究において資源利用に関連する研究蓄積は乏しく、特に実証的な研究が必要な畳用といえる。  ２．研究の目的 本研究では、経済発展が資源利用に及ぼす影響を定量的に明らかにする。発展段階によってその影響がどのように異なるのか、特に技術の影響がどのように異なるかを定量的に明らかにすることで、先進国がどの程度持続可能なのか、そして先進国がどの程度途上国に技術支援をしていくか、そして途上国自身がどの程度技術の導入をしていく必要があるのか、についての判断材料となることが期待される。加えて、「消費と幸福度の関係性」についての研究を行うことで、資源利用が幸福度上昇につながるような経済発展のあり方を探る。このことによって、人々の豊かさにつながるような持続可能な経済発展のあり方を検討することを目指している。  ３．研究の方法 経済発展が資源利用に及ぼす影響を検証するために、環境制約を評価する指標として生物多様性指標に注目した。経済発展と生物多様性指標の関係性について、「環境クズネッツ曲線仮説」の検証の文脈で実証的な分析を行った。具体的には、生物多様性に関する「レッドリストインデックス」と呼ばれる指標を用い、経済発展と環境の関係性について検証を行った。 また、経済発展が人々の環境に対する考え方に影響することを把握するために、どのような場合に環境配慮行動が促進されるのかについて、特に北欧と日本を比較することで検証を行った。具体的には、普段の自然との触れ合い状況や自然とのつながり意識が環境配慮行動の差を生んでいることを検証するとともに、そうした環境とのつながり意識を高めるための方策について検討を行った。 加えて、本研究課題に関連して「消費と幸福度の関係性」についての研究を行うことで、資源利用が幸福度上昇につながるような経済発展のあり方を探った。具体的には消費を以下の 2 種類に分類したうえで、幸福度との関係性を検証した。一つは物質的な消費、もう一つは人と人とのつながりに関係する消費である。資源利用の観点から幸福度に結び付きやすい消費を検討することで、大量消費が主観的幸福度の上昇に結び付いていない日本の状況をどのように改善させていくのかの議論につなげることを目指した。  ４．研究成果 経済発展と生物多様性指標の関係性については、以下の図１の分析結果が得られた。分析では1994年から 2019年の 189か国のパネルデータを用いている。ここで縦軸は経済発展が生物多様性指標（レッドリストインデックス）に及ぼす影響の推計値（ゼロが世界平均での影響）、横軸は一人当たり GDP（mil. 2017US$）であり、実線は得られた推計値、上下の破線は 95％の信頼区間である。レッドリストインデックスは 0 から１の値をとり、1 に近づくほど生物多様性に悪影響があることを示している。 図１より、途上国において生物多様性が特に損なわれていること、先進国ほどその悪化の状態は改善されていることが示された。しかしながら、現状では生物多様性はほとんどの国で悪化している状況にあることから、より進んだ生物多様性に対する政策がどの所得の国においても必要であることが示唆されるとともに、途上国への対策がより重要となることも示唆されたこととなる。本研究の貢献はこうした途上国と先進国とで経済発展と生物多様性の関係性に違いがみられることを示したことにある。  図１ 一人当たり GDP と生物多様性指標（レッドリストインデックス）の関係性  次に、経済発展が人々の環境に対する考え方に影響することを明らかにするために、フィンランドと日本で行った独自のアンケートデータを用いた分析を行った。環境意識が高くとも行動が伴わない背景には「時間的な余裕がない」という要因が影響している可能性がある。本研究では環境意識と環境行動の乖離について時間的余裕の観点から検討を行った。こうした時間的余裕は経済発展の結果として失われることが多いが、国家間でその状況は異なる。ワークライフバランスが国際的に高水準とされ、時間的余裕が比較的確保できていると考えられるフィンランドと、逆にワークライフバランスが低水準とされる日本を対象とした。環境配慮行動としては、自宅への太陽光パネルの設置や自然エネルギーファンドへの投資、環境保全活動への参加など検討や実施に比較的時間が必要となるものに加え、節電やごみの分別など普段気軽に比較的短時間で行える行動など、多様な行動を対象とした。 分析の結果、一部の環境配慮行動について、経済水準や環境意識が高い場合にも、時間的余裕の有無によって環境配慮行動の実施に影響がでることが見出されている。このことは、日々の時間的余裕が環境配慮行動の普及に重要となることを意味するものであろう。  次に、「消費と幸福度の関係性」については次のような結果が得られている。まず、資源利用が幸福度上昇につながるような経済発展のあり方を探った。その結果、図 2に示すように、物質的な消費（モノ消費）が幸福度上昇に結び付きにくい状況、人と人とのつながりに関係する消費（図ではコト消費）は幸福度に結び付きやすい可能性が明らかとなったが明らかとなった（Tsurumi et al., 2021）。他方で図 3に示すように、モノを長く大切に活用していくような消費スタイルが幸福度上昇に結び付きやすい可能性を明らかとした(Tsurumi et al., 2020)。 以上のことから、消費の内訳および消費スタイルが幸福度の観点からは重要となることと、資源利用をこの観点から再検討することで幸福度を高めることのできる経済発展を考えていくことができることを示すことができた。したがって、今後の研究では資源利用についてその内訳を考慮に入れること、そしてモノを長く大切に活用していくような消費スタイルを普及させていくことが、持続可能で幸福な経済発展のあり方には重要であることが明らかとなったといえる。   図 2 モノ消費およびコト消費と幸福度の関係性   図 3 モノ消費と幸福度の関係性  Tsurumi, T., R. Yamaguchi, K. Kagohashi, and S. Managi, 2020. "Attachment to material goods and subjective well-being: Evidence from life satisfaction in rural areas in Vietnam", Sustainability, 12, 9913. https://doi.org/10.3390/su12239913 Tsurumi, T., R. Yamaguchi, K. Kagohashi, and S. Managi, 2021. "Are cognitive, affective, and eudaimonic dimensions of subjective well-being differently related to consumption? Evidence from Japan", Journal of Happiness Studies,22: 2499–2522.  モノ消費総額幸福度モノを長く大切に使用している場合モノを長く大切に使用していない場合５．主な発表論文等〔雑誌論文〕　計6件（うち査読付論文　6件／うち国際共著　0件／うちオープンアクセス　4件）2021年2022年2020年2021年オープンアクセスとしている（また、その予定である） －10.1007/s10902-020-00327-4 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 オープンアクセス  国際共著 ２．論文標題  ５．発行年Are Cognitive, Affective, and Eudaimonic Dimensions of Subjective Well-Being DifferentlyRelated to Consumption? Evidence from JapanJournal of Happiness Studies 2499～2522 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無オープンアクセスではない、又はオープンアクセスが困難 － ４．巻Tsurumi Tetsuya、Yamaguchi Rintaro、Kagohashi Kazuki、Managi Shunsuke 22 １．著者名10.1016/j.eap.2020.06.002 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 オープンアクセス  国際共著 ２．論文標題  ５．発行年Health-related and non-health-related effects of PM2.5 on life satisfaction: Evidence fromIndia, China and JapanEconomic Analysis and Policy 114～123 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無オープンアクセスではない、又はオープンアクセスが困難 － ４．巻Tsurumi Tetsuya、Managi Shunsuke 67 １．著者名10.1007/s11482-021-09955-1 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 オープンアクセス  国際共著 ２．論文標題  ５．発行年Social Capital, Negative Event, Life Satisfaction and Sustainable Community: Evidence from 37CountriesApplied Research in Quality of Life 1311～1330 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無 オープンアクセス  国際共著オープンアクセスとしている（また、その予定である） － ４．巻Piao Xiangdan、Ma Xinxin、Tsurumi Tetsuya、Managi Shunsuke 17 １．著者名Material and relational consumption to improve subjective well-being: Evidence from rural andurban VietnamJournal of Cleaner Production 127499～127499 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無10.1016/j.jclepro.2021.127499 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 ４．巻Tsurumi Tetsuya、Yamaguchi Rintaro、Kagohashi Kazuki、Managi Shunsuke 310 １．著者名 ２．論文標題  ５．発行年2020年2023年〔学会発表〕　計3件（うち招待講演　0件／うち国際学会　0件）2021年2021年 ２．発表標題 ２．発表標題 １．発表者名 １．発表者名鶴見哲也鶴見哲也 ３．学会等名 ３．学会等名オープンアクセスとしている（また、その予定である） －ウェルビーイング研究とその展望環境配慮行動に時間的余裕が及ぼす影響：フィンランドと日本を対象として ４．発表年 ４．発表年環境科学会2021年大会第64回土木計画学研究発表会10.11353/sesj.36.53 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 オープンアクセス  国際共著 ２．論文標題  ５．発行年サステイナビリティ・サイエンスの展開ー人新世の時代を見据えてー環境科学会誌 53～82 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無オープンアクセスとしている（また、その予定である） － ４．巻田崎 智宏、亀山 康子、増井 利彦、高橋 潔、鶴見 哲也、原 圭史郎、堀田 康彦、小出 瑠 36 １．著者名10.3390/su12239913 ３．雑誌名  ６．最初と最後の頁有 オープンアクセス  国際共著 ２．論文標題  ５．発行年Attachment to Material Goods and Subjective Well-Being: Evidence from Life Satisfaction inRural Areas in VietnamSustainability 9913～9913 掲載論文のDOI（デジタルオブジェクト識別子）  査読の有無 ４．巻Tsurumi Tetsuya、Yamaguchi Rintaro、Kagohashi Kazuki、Managi Shunsuke 12 １．著者名2020年〔図書〕　計4件2021年2020年2022年3081820 ２．出版社中央経済社Edward Elgar Pub創成社 ５．総ページ数 １．著者名 １．著者名 １．著者名 ４．発行年 ４．発行年 ４．発行年 ３．書名幸福の測定：ウェルビーイングを理解するHandbook on Wellbeing, Happiness and the Environmentコロナの影響と政策ー社会・経済・環境の観点からーTetsuya Tsurumi, Rintaro Yamaguchi, Kazuki Kagohashi, Shunsuke Managi鶴見哲也 ２．出版社環境経済・政策学会2020年大会 ２．発表標題 ３．書名 ３．書名 ５．総ページ数 ５．総ページ数鶴見 哲也、藤井 秀道、馬奈木 俊介 ２．出版社 ４．発表年 １．発表者名鶴見哲也 ３．学会等名消費と主観的福祉ーベトナム都市部・農村部の比較2023年〔産業財産権〕〔その他〕－６．研究組織７．科研費を使用して開催した国際研究集会〔国際研究集会〕　計0件８．本研究に関連して実施した国際共同研究の実施状況共同研究相手国 相手方研究機関23所属研究機関・部局・職（機関番号）氏名（ローマ字氏名）（研究者番号）備考 ２．出版社中央経済社 ５．総ページ数 １．著者名  ４．発行年 ３．書名社会問題を解決するデジタル技術の最先端鶴見哲也、馬奈木俊介

An empirical study on the effects of economic growth on resource use

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