2021年度卒業論文要旨, 情報科学部情報科学科othe

MARUYAMA, Yuka

マルヤマ, ユウカ

丸山, 由華

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Aichi Prefectural University Repository / 愛知県立大学学術リポジトリ

愛知県立大学情報科学部 令和 3 年度 卒業論文要旨 音響・言語的特徴量を利用したパーキンソン病の識別 情報科学科 丸山 由華      指導教員：入部 百合絵 1 はじめに パーキンソン病は, 脳の異常によって体の動きに障害が現れる病気である[1]. 60 歳を超えると羅患率は増加していくため，超高齢化社会の日本では，患者数は年々増加している. パーキンソン病は高頻度に認知機能障害を併発することがあり, 特に日常生活に支障があるレベルまで認知機能が低下した状態をパーキンソン病認知症という．パーキンソン病およびそれに伴う認知症は，いずれも早期から治療することで症状を緩和し, 進行を遅らせることができる．しかし，パーキンソン病の動作症状は老化によるものとよく似ているため誤診断されやすい[1]．更にパーキンソン病では徐々に認知機能が低下するため, 診療現場でそうした変化を正確に捉えることは難しい． 本研究では身体動作以外の運動症状である発話に着目し，音声からパーキンソン病およびパーキンソン病認知症を検出する． パーキンソン病患者の音声に関する研究はいくつか存在する[2]．しかし，国内外含めて，音響・言語的特徴量を用いてパーキンソン病およびパーキンソン病認知症の識別までを行った研究は非常に少ない．特に，本研究では，発話の文数に応じた識別を試みることで，短い発話文でのパーキンソン病およびパーキンソン病認知症の識別の可能性を示す． 2 収集データの詳細 本研究では，パーキンソン病(以降，PD)患者，軽度認知機能障害を伴うパーキンソン病(以降，PD-MCI)患者，健常者(以降，HC)の計 142 名を対象とした．PD-MCI とはPD 認知症の前段階であり，PD 患者における認知症発症の予測因子となることから, 本研究では対象としている． 軽度認知機能障害の判断は収録時に行った MoCA-J(日本語版 Montreal Cognitive Assessment )の結果を利用し，30 点満点中 19 点から 23 点を軽度認知機能障害ありと判断する．愛知および岐阜県内にある病院で，被験者ごとに自由会話音声を収録した． 3 抽出した特徴量と識別手法 本研究では，音響的特徴量として疾病の音声処理に用いられる The INTERSPEECH 2013 ComParE feature setを採用した．また, 言語面での認知機能低下を測るために，会話音声の書き起こし文を MeCab で形態素解析し, 言語的特徴量として語彙や言い淀み, 品詞割合, 文章の複雑さに関する特徴量を抽出した. 抽出した特徴量に対して識別前に Wrapper 法の前向き最良優先探索法による特徴量選択を行った. 10 分割交差検証で SVM(Support Vector Machine)により識別を行った. 4 パーキンソン病の識別 本研究では，短い対話文でも PD や PD-MCI を検出できるか否かを検証するため，PD, PD-MCI, HC 間で文数に応じて音響的特徴量を抽出し識別を実施した．本稿では発話開始 1 文目を文数 1，1 文目～2 文目を文数 2 のように表す. 識別結果を表 1 に示す. 表 1 の結果は音響的特徴量による結果を示している．文数 5 が最も精度の高い結果となったが, 発話開始の 1 文だけでも 85 %以上の識別精度を得ることができた. 紙幅の関係で記載していないが，PD-MCI の再現率が 61.1%と低い結果であり, 特に PD-MCI の PD への誤識別が多いことが明らかとなった.  次に, PD と PD-MCI 間での識別を検討するため，分割していない被験者の対話文を用いて PD と PD-MCI 間で音響的特徴量のみ, 言語的特徴量のみ, 音響・言語的特徴量の 3 つの場合で識別を比較した. 識別結果を図 1 に示す. 音響的特徴量に言語的特徴量を加えることで, 音響のみのときよりも 10 %以上識別精度が向上した. 高齢者の認知症を対象とした研究[3]でも, 言語情報が認知機能低下を捉えるのに有効であることが示されている. 今回の結果より, 徐々に認知機能が低下する PD-MCI とPD の違いを捉えるためには, 言語的特徴も考慮することが適切であることが明らかとなった. 5 おわりに 本研究では，短い自由会話音声から音響的特徴量を利用して PD と PD-MCI の検出を試みた．PD, PD-MCI, HC間での識別精度は約 87％を得ることができた．また, PDと PD-MCI の識別には音響だけではなく，言語的特徴量も用いることで精度が向上することが明らかとなった． 今後は，音素単位での分析を行うことで，パーキンソン病と音響的特徴量との詳細な関係性を明らかにしていく．  参考文献 [1] 服部, “ウルトラ図解 パーキンソン病”, 法研, 2020. [2] Illes et al., Language Production in Parkinson’s Disease: Acoustic and Linguistic Considerations. Brain and Language, vol 33, no. 1, p. 146-160, 1988. [3] 石原他, “係り受け距離に着目した雑談対話からの認知症疑い検出”, 電子情報通信学会論文誌, vol J104-D, no. 4, p. 357-367, 2021. 表 1  PD/PD-MCI/HC間での識別結果 文数 1 2 3 4 5 Accuracy 85.9 85.9 84.5 85.9 87.3  図 1  PD/PD-MCI 間での正解率 

音響・言語的特徴量を利用したパーキンソン病の識別

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音響・言語的特徴量を利用したパーキンソン病の識別

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