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KUROSE, Takashi

黒瀬, 隆

Japanese

Shizuoka Institute of Science and Technology Repository / 静岡理工科大学学術機関リポジトリ

2023 年 4 月 6 日受理 ＊ 静岡理工科大学 理工学部 機械工学科 脱プラスチックに資する植物繊維サンドイッチ成形体の開発 Development of plant fiber sandwich parts contributing to plastic-free 黒瀬 隆＊ Takashi KUROSE Abstract: A two-dimensional particle-reinforced polymer composites was fabricated using polylactic acid (PLA) as the matrix, and it was found to exhibit excellent mechanical properties such as a flexural strength of 246 MPa and a flexural modulus of 46 GPa. We fabricated a sandwich material that a core layer is plant fiber material and outer layers are two-dimensional particle-reinforced PLA composites. It was clarified that the bending strength of the sandwich material was 143 MPa, which is more than 10 times that of paper. It was also shown that two-dimensional particle-reinforced PLA composites could be three-dimensionally formed into box-shaped parts.  １．はじめに  近年，海洋プラスチック問題を背景にプラスチック資源循環促進法が施行されるなど，プラスチック製の食品容器やスプーンなどを紙などの植物繊維を原料とした製品へ切り替える検討が活発化している．植物繊維由来の食品容器類の課題として，耐水性，力学特性，ガスバリア性の向上などが挙げられる．セルロース分子で構成される植物繊維は親水性であり，容易に水分を吸収，浸透させてしまう．また，大型容器やスプーンなどでは力学特性(剛性や強度)が要求される．さらに，天然繊維の匂いや加熱時の食品の匂いを遮断するためにガスバリア性の要求もある． これまで著者は，天然無機鉱物などから作製される高アスペト比の２次元状粒子が高充填され力学特性に優れる高分子複合材料の研究を進めてきた.１,2） ２次元粒子は板状部材の面内方向に配向しているため，複合材料の板厚方向への気体や液体の透過性が著しく低いことが予想される．また，マトリクスとなる高分子材料に生分解性プラスチックが適用可能であれば，天然無機鉱物と生分解性プラスチックによる環境負荷の低い複合材料の作製が期待できる．力学特性，耐水性，ガスバリア性の向上が課題である植物繊維材料の最外層に２次元粒子強化高分子複合材料が形成されたサンドウィッチ材料が作製できれば，上述の植物繊維由来の食品容器類の課題が解決できる可能があると考えた． 植物繊維で構成される食品容器やスプーンは，植物繊維を３次元形状に立体抄造した後,熱プレス成形により製造される．３次元形状の植物繊維部品の最外層に複合材料層を構成させる方法として，２次元粒子強化高分子複合材料を立体抄造し，植物繊維と積層した後，熱プレス成形により一体化する方法が考えられる．そこで本研究では，２次元粒子強化高分子複合材料を立体抄造する検討も行う． ２．研究目的 本研究では以下の３つを目的として研究を進める． ① マトリクスとなる高分子材料に生分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)を適用した２次元粒子強化PLA 複合材料の作製． ② 植物繊維材料の最外層に２次元粒子強化 PLA 複合材料が形成されるサンドウィッチ材料の作製．③ 食品容器やスプーンなどの立体形状を有する植物繊維部品の最外層に PLA 複合材料を積層するために，２次元粒子強化高 PLA 複合材料の立体抄造．３．実験 3.1 ２次元粒子強化 PLA 複合材料の作製と評価 ２次元粒子として白マイカ粒子(Wuhan Changfeng Mica Insulating Material Co., Ltd), 厚さ:1µm，平均粒径300µm)を用いた．マトリクス樹脂用に PLA 繊維(Tianjin GT New Material Technology Co., Ltd.，繊維長：3mm，繊度：1.5 dtex)を用いた． Fig.1 に複合材料の作製工程を示した．白マイカ粒子とPLA 繊維を水中で混合し，抄造装置(スタンダードシートマシン抄紙装置，熊谷理機工業(株))を用いて抄造する．白マイカの体積分率が 40vol%となる配合比，抄造品の乾燥後の目付が46.5mg/cm2(成形後0.25mm/層)となる量の材料を用いて抄造を行った．抄造にはφ160mm，300 メッシュのステンレス製メッシュを用いた．抄造後の湿潤抄造物は吸水濾紙を用いて脱水した後,80℃の熱風乾燥機を用いて24 時間以上乾燥処理を行った．乾燥後の抄造物を 2 枚積層した状態で，表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミ板で挟み，170℃で 1 分間，0.12MPa の圧力で熱圧着しシートを作製した．次に 50×50mm の金型に熱圧着したシートを 8 枚充填し熱プレス成形を行い 50×50×2mm の平静岡理工科大学紀要Vol.31,２０２３ 71                     板を作製した．熱プレス条件は 5 分間，無荷重下で 220℃加熱した後，圧力 10MPa で 5 分間加圧し，水冷式プレス機に金型を素早く搬送し圧力 10MPa で冷却した．  平板から切り出した試験片を万能試験機((株)島津製作所，オートグラフ AGS-10kNX)を用いて JIS K7017 に準拠した 3 点曲げ試験を行った．試験片は 50×10×2mm，支持点間距離は 32mm(L/t=16)，試験速度は 1mm/min とした．計測した変位と荷重から，曲げ応力，曲げ弾性率，曲げひずみを求めた．曲げ弾性率はひずみ 0.3～0.5%の範囲で求めた．試験数は N=4 である．  以下の複合材料の弾性率の複合則に，得られた複合材料の弾性率を適用し，本複合材料においるマイカ粒子の補強効果の算出を行った．  𝐸 = 𝛼𝐸 𝜑 + 𝐸 1 − 𝜑    (1)  ここで𝐸 は複合材料の弾性率，𝛼は補強効率，𝐸 はマイカの弾性率(𝐸 : 172GPa3))，𝐸 はポリ乳酸の弾性率(𝐸 : 2GPa)，𝜑 はマイカの体積分率(𝜑 : 0.4)である． 試験片の内部構造観察は，力学試験前の試験片を切断した後にエポキシ樹脂で包埋し断面を研磨した後，走査型電子顕微鏡(JOEL，JSM-1T00)を用いて行った．               Fig.1 Fabrication procedure of the composites.  3.2 サンドウィッチ材料の作製と評価 植物繊維材料の最外層が２次元粒子強化 PLA 複合材料で構成されるサンドウィッチ材料の作製を行う．植物繊維材料はパルプ(プラス産業(株)より提供)を抄造し作製した．２次元粒子強化 PLA 複合材料は，マイカの体積分率が40vol%のものを用いた． Fig.2 にサンドウィッチ材料の構成を示した．成形後のサンドウィッチ材料の厚さは約 2mm である．２次元粒子強化 PLA 複合材料の最外層(上下層)が各約 0.7mm，中央の植物繊維材料層の厚さは約 0.6mm である．  サンドウィッチ材料の作製は，49×49mm の植物繊維材料の抄造物を 4 層積層したものを，熱圧着した２次元粒子強化 PLA 複合材料で上下から挟み，50×50mm の金型に投入し厚さ約 2mm の平板を成形した．熱プレスは 5 分間，無荷重下で 220℃加熱した後，圧力 10MPa で 5 分間加圧し，水冷式プレス機を用い圧力 10MPa で金型を冷却した． 3 点曲げ試験および試験片の内部構造観察を２次元粒子強化ポリ乳酸複合材料の評価と同様の方法で行った．また比較のためにパルプから作製された紙単体(プラス産業(株)より提供)の曲げ試験も行った．      Fig.2 Laminate structure of sandwich composites.  3.3 ２次元粒子強化 PLA 複合材料の立体抄造  Fig.3 に立体抄造法の概念図を示した．立体形状を有するメッシュが設置された容器に，材料が分散した水懸濁液を投入する(Fig.3(a))．その後，水のみを排水することで水に分散していた材料をメッシュ上に堆積させる(Fig.3(b))．得られた立体抄造物を脱水，乾燥，熱プレスすることで立体成形品を得ることができる． 本研究では Fig.4 に示した，深さ 12mm の箱型部品の試作を行った(部品体積:12.8cm3)．白マイカの体積分率が40vol%となる配合比，熱プレス成形後の部品の板厚が0.5mm となるように材料を計量し用いた(マイカ:15.4g，PLA 繊維:8.8g)．計量したマイカ粒子と PLA 繊維を水に混合し，混合物を抄造容器に投入し抄造を行った．抄造物を専用の凸型の脱水金型を押し当てながら減圧脱水した．次に脱水した立体抄造物を金型に投入し熱プレス成形を行った．温度 210℃で 5 分間加熱した後，0.2MPa(5kN)で 5 分間熱プレスを行い，その後，冷却し成形品を取り出した．        Fig.3. Three-dimensional papermaking method. マイカ粒子 PLA 繊維 水中で混合 抄造 脱水 乾燥 圧着プレス 熱プレス成形 冷却 排水口:閉 メッシュ 粒子/繊維 排水口:開抄造物 排水(a) (b) 2 次元粒子強化ポリ乳酸複合材料 0.7 0.70.6 [mm] 2 次元粒子強化ポリ乳酸複合材料 植物繊維材料 静岡理工科大学紀要Vol.31,２０２３ 72                               Fig.4. Part dimension.  ４．結果と考察 4.1 ２次元粒子強化 PLA 複合材料の作製と評価 Fig.5(a)(b)に２次元粒子強化 PLA 複合材料の断面のSEM 観察像を示した．白色の像がマイカ粒子相であり，黒色の像が PLA 相である．試験体の板厚方向(紙面上下方向)と垂直方向に高アスペクト比のマイカ粒子が配向していること，PLA 中にマイカ粒子が全体的に均一に分布していることが確認できる． Fig.6 に２次元粒子強化 PLA 複合材料の曲げ応力-ひずみ曲線の代表例を示した．ひずみの増加に伴い応力はほぼ直線的に上昇し，最大応力にて急激な応力低下を示し，その後は緩やかに応力低下を示した．ひずみ約 1.8%で試験を停止した．試験片の平均曲げ強度は 246MPa，平均曲げ弾性率は 46GPa であった． 式(1)を用いて複合材料における補強物の補強効率𝛼の算出を行った．得られた複合材料の弾性率(𝐸 = 46GPa)を用いて計算したところ，補強効率𝛼 = 0.65であった．補強効率𝛼は，疑似等方積層された繊維強化複合材料では最大でも 0.375 であるが，2 次元粒子強化複合材料では 0.375を超えることが報告されている 4）．本複合材料において 2次元粒子の補強効果が十分に発揮されていると考えることができる．                    Fig.5(a)(b). SEM image of the PLA composites.              Fig.6. Flexural stress – strain curve of PLA composite.  4.2 サンドウィッチ材料の作製と評価 Fig.7(a)に作製した植物繊維材料の最外層が２次元粒子強化 PLA 複合材料で構成されるサンドウィッチ材料の断面写真を示した．植物繊維材料と２次元粒子強化 PLA 複合材料の積層界面は密着しており，空隙や剥離などは観察されない． Fig.7(b)に作製したサンドウィッチ材料の端部の断面写真を示した．植物繊維材料層の端部が２次元粒子強化PLA 複合材料で覆われている様子が確認できる．サンドウィッチ材料を成形する際，50×50mm の金型に対して 49×49mm の植物繊維材料(紙)を使用した．熱プレス時に上下層の２次元粒子強化 PLA 複合材料が植物繊維材料の端部を取り囲むように流動したと考えられる．植物繊維材料の端部を耐水性の高い２次元粒子強化 PLA 複合材料で成形時にシールする技術に応用できる可能性がある． Fig.8 にサンドウィッチ材料と紙の代表的な曲げ応力-ひずみ曲線を示した．紙の平均曲げ強度は 11.5MPa であったのに対し，サンドイッチ材料の平均曲げ強度は 143MPaと 10 倍以上の曲げ強度を示すことが確認できた． 01002003000 1 2Flexural stressStrain (%)(a) 500 ㎛ (b) 50 ㎛ 静岡理工科大学紀要Vol.31,２０２３ 73                                       Fig.7(a)(b). Photo of cross section of sandwich material.              Fig.8. Flexural stress – strain curve of sandwich material.  4.3 ２次元粒子強化 PLA 複合材料の立体抄造 Fig.8に立体抄造後に熱プレス成形した3次元形状部品の外観を示した．3 次元箱型部品(Fig.4)が成形可能であることが確認できた．しかし，成形品表面は平滑でない部分も見られた。本複合材料は，一般的なプレス成形用複合材料の必要成形圧力と比べ大幅に低い 2.5MPa という成形圧力で成形可能である．しかし，今回使用した熱プレス機は紙を成形する仕様の低圧プレス機であり，部品の投影面積に対する成形圧力は 0.2MPa であった．本複合材料を成形するためには成形圧力 0.2MPa では不十分だと考えることができる．         Fig.9. Photo of three-dimensional PLA composite part.  5. まとめ マトリクスにポリ乳酸(PLA)を適用した２次元粒子強化PLA複合材料を作製し，曲げ強度246MPa，曲げ弾性率46GPaと優れた力学特性が発現することを明らかにした． 植物繊維材料の最外層に２次元粒子強化 PLA 複合材料が積層されたサンドウィッチ材料を作製し，サンドイッチ材料の曲げ強度が 143MPa と紙に対し 10 倍以上の強度を示すことを明らかにした． ２次元粒子強化 PLA 複合材料を立体抄造し，3 次元箱型部品の成形が可能であることを示した．  謝辞 本研究は，静岡理工科大学 2022 年度 個人研究推進支援費を受けて遂行されました.ここに謝意を表します.  参考文献 １） Y. Sako, T. Kurose, A. Ishigami, and H. Ito, “Effect of Flake Surface Treatment on Mechanical Properties of Aluminum Flake Filled Epoxy Resin Composites”, J. Jpn. Inst. Metal., 85 (2021) 174. ２） 土門和暉, 黒瀬隆, 伊藤浩志ら, “貝殻真珠層構造を模倣した複合材料の作製と機械特性評価”, 第 70回高分子討論会(2021 年 9 月, オンライン) ３） J. Lusis, R. T. Woodhams, and M. Xanthos, “The effect of flake aspect ratio on the flexural properties of mica reinforced plastics” Poly. Eng. Sci. 13 (1973) 139. ４） G. E. Padawer and N. Beecher, “On the strength and stiffness of planar reinforced plastic resins” Poly. Eng. Sci. 10 (1970) 185. 1mm (a) 1mm (b) 0501001502000 1 2 3 4 5Flexural stressStrain (%)SandwichPaper50mm 静岡理工科大学紀要Vol.31,２０２３ 74

Development of plant fiber sandwich parts contributing to plastic-free

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