土田,聡子

武田,悠史

田村,真通

秋山,光司

Japanese

Japanese Red Cross Repository / 赤十字リポジトリ

O-7-35保存的に加療し得た次亜塩素酸ナトリウム水溶液誤飲に伴う腐食性食道炎の 1 例長浜赤十字病院　消化器内科○‌藤ふじもり森　　栞しおり、森田　康大、安田　登摩、吉田恵里奈、角田　一樹、酒井　滋企、大崎　理英、馬場　弘道【症例】53歳男性【現病歴】うつ病に対し他院通院中、自殺目的に次亜塩素酸ナトリウム水溶液（カビキラー）を服用し、気分不良のため当院救急搬送となった。次亜塩素酸ナトリウム水溶液誤飲に伴う腐食性食道炎と診断し、牛乳を摂取後に経過観察目的に入院となった。入院後に施行した胸腹部CTでは食道・胃の壁肥厚と著明な浮腫を認めたが、明らかな消化管穿孔は認めなかった。上部消化管内視鏡検査では食道粘膜の脱落、食道胃接合部に潰瘍を認めたが、狭窄や通過障害は認めなかった。第8病日に施行した胸腹部CTでは食道・胃の壁肥厚は改善を認めていた。また上部消化管内視鏡検査でも食道胃接合部に認めた潰瘍は治癒傾向であった。第9病日より食事再開したところ増悪なく経過したため、第19病日にうつ病治療目的に精神科病院へ転院となった。第51病日の上部消化器内視鏡検査で食道炎、潰瘍の治癒が確認された。【考察】腐食性食道炎は腐食性物質の誤飲により引き起こされ、腐食性物質には酸性剤とアルカリ性剤がある。酸系の薬剤と比較して、塩素系の薬剤は強い吸湿性や鹸化・蛋白融解作用によって病変がより深部にまで及び、穿孔して手術が施行されることも多い。また経過中に組織の線維化と拘縮により瘢痕狭窄が生じることもある。今回、次亜塩素酸ナトリウム水溶液誤飲に伴う腐食性食道炎に対して保存的に加療し、穿孔や狭窄をきたすことなく改善した一例を経験したため報告する。O-7-36正中弓状靭帯症候群による膵十二指腸動脈瘤破裂の一例長浜赤十字病院　医局○‌田たなか中　元もとき貴、安田　登摩、馬場　弘道、大崎　理英、酒井　滋企、森田　康大、角田　一樹、吉田恵里奈【症例】50代　女性X年4月9日に突然の心窩部痛を自覚し、自宅で経過観察を行っていたが症状改善を認めないため4月14日に近医受診となった。その後、腹部造影CT検査で膵十二指腸動脈アーケードの動脈瘤破裂を疑われたため、精査加療目的に4月15日に当院転院となった。転院同日に緊急血管造影検査を施行したところ後下膵十二指腸動脈に動脈瘤を認めており、コイルおよびNBCA-リピオドール混合液による塞栓術を施行した。また、腹部造影CT検査では、正中弓状靭帯による腹腔動脈圧迫所見を認めており、動脈瘤形成の原因として正中弓状靭帯症候群（median arcuate ligament syndrome；MALS）による可能性が示唆された。そのため、動脈瘤破裂の加療終了後待機的にMALSに対する加療を行う方針とし、7月6日に腹腔鏡下正中弓状靭帯切離術を施行した。術後は、造影CT検査や腹部超音波検査により腹腔動脈の狭窄改善や総肝動脈の順行性血流が確認できるなど、血流障害の改善を認めている。【考察】MALSは、正中弓状靭帯によって腹腔動脈起始部が圧迫され動脈狭窄を来す良性疾患である。腹腔動脈圧迫によって心窩部痛や嘔気などの腹部症状が生じることや、血行力学的ストレスによって膵十二指腸動脈瘤が形成されるなどの血流障害が生じることが問題となる。MALSに対する治療方法としては、正中弓状靭帯切離術や血管バイパス術などの手術加療のほかに、経皮的血管内アプローチによる腹腔動脈のバルーン拡張やステント留置なども選択肢として挙げられ、明確な治療方針が定められていないのが現状である。今回我々は、膵十二指腸動脈瘤破裂を契機にMALSの診断に至り、正中弓状靭帯切離術によって血流障害改善を認めた一例を経験したため、文献的考察を加えながら報告する。O-7-37孤立性腹部内臓動脈解離の診断長浜赤十字病院　医局1）、長浜赤十字病院　救急科2）○‌樋ひぐち口美み ほ こ帆子1）、中村　誠昌2）、増田　翔吾2）、中川　晃輔2）、河野久美子2）【症例】50代男性【現病歴】冬季の午前１時頃に心窩部痛で目覚め、徐々に悪化し嘔吐もあった。早朝救急を受診したが、単純ＣＴや採血上異常を認めず、消化性潰瘍の疑いでPPI処方にて翌日消化器科を受診予定となった。その後も腹痛の改善に乏しく、食事や飲水後に嘔吐が続いたことから第2病日早朝に救急搬送された。再度行った単純ＣＴで小腸壁の肥厚を認め、血液検査で炎症反応の上昇もあったことから小腸炎の診断で入院となった。入院後の造影ＣＴでは腹腔動脈解離と上腸間膜動脈解離があり、上腸間膜動脈は本幹が回結腸動脈分岐部以下で閉塞し、空腸を中心に虚血を認めた。同日、上腸間膜動脈解離による小腸虚血に対して血行再建術と空腸部分切除を、第3病日に空腸部の追加切除を施行した。その後徐々に軽快し、第36病日に退院となった。【考察】大動脈解離を伴わない孤立性腹部内臓動脈解離の発生率は従来の報告では0.06％と非常に稀な疾患とされていた。しかし、現在までに4000例を超える症例が報告されている。ＣＴの普及に伴ってか年々報告数は増加しており、これまで考えられていた程稀な疾患ではない可能性がある。リスクファクターとして男性、高血圧、喫煙が挙げられ、50代での発症が多い。突然の腹痛で発症し、閉塞によって腸管虚血に到ると、食後の痛みを訴えることもある。発症早期では血液検査で炎症反応を認めることは少ない。単純ＣＴでの発見も難しいが、動脈径の拡大や周囲の脂肪織の濃度上昇が認められることが多い。詳細な問診と単純ＣＴの注意深い読影からこの疾患の存在を疑い、造影ＣＴ撮影につなげることが重要であると考える。O-7-38小麦による食物性アナフィラキシーに急性膵炎を合併した小児例秋田赤十字病院　臨床研修センター1）、秋田大学附属病院　小児科2）、秋田赤十字病院　小児科3）○‌武たけだ田　悠ゆうし史1）、秋山　光司2）、土田　聡子3）、田村　真通3）【はじめに】小児における急性膵炎はまれであり、原因は感染症・薬剤性・外傷の他、先天性形態異常によるものが多いとされる。近年、食物性アレルギーが関与した急性膵炎症例報告がみられる。今回、腹部症状を伴わず急性膵炎を合併した食物性アナフィラキシーの小児例を経験したので報告する。【症例】1歳6ヶ月男児。生後8ヶ月時にパンを摂食した際に蕁麻疹が出現し、小麦アレルギーが判明していた。今回、保育所でのビスケットの誤食により、全身性の地図状膨疹と掻痒感が見られ当院救急外来を受診した。酸素化不良を認め、食物性アナフィラキーとしてアドレナリン筋注を含む治療を施行した。薬剤投与に反応し、皮膚症状および酸素化は速やかに改善した。嘔吐や腹痛の訴えはなかったが、採血データ上血清アミラーゼ 495 U/Iおよびリパーゼ 2139 U/Iと高値あり、腹部エコーで膵臓全体の軽度腫大が確認された。全身状態は安定しており、食事制限と輸液により経過を注意深く観察した。その後も腹部症状はみられず、入院翌日にはデータの速やかな改善が確認され、膵腫大も改善した。【考察】食物アレルギーに合併した急性膵炎の報告は国内でも集積してきており、病態として局所アレルギー反応によるVater乳頭部の閉塞機転が考えられているが未だ不明である。膵炎としては良好な経過をとることが多いが、重症例や再発を繰り返す例も確認されている。本症例のように腹部症状がみられない膵炎の合併例があることを踏まえ、食物アレルギーは小児の膵炎の原因となりうることも念頭に注意深く診療を行うべきと考えられた。O-7-39上腕骨近位端骨頭外反型 4-part骨折に対する反転型人工肩関節置換術の短期成績秋田赤十字病院　臨床研修センター1）、秋田赤十字病院　整形外科2）○‌鈴すずき木隆りゅうたろう太郎1）、畠山　雄二2）【目的】上腕骨近位端骨頭外反型4-part骨折に対する反転型人工肩関節置換術（以下：RTSA）の短期成績を報告すること。【対象と方法】84歳女性。転倒し左肩を強打して受傷。画像上、骨頭の内側calcarの長さが6mm、転位が8mmであり、骨頭壊死の可能性が高く骨接合術は困難と判断した。また、高齢であり大結節も粉砕し、Deltoid Tuberosity Indexが1.3（正常＞1.4）と低下していたため、人工骨頭置換術では大結節の骨癒合は難しいと思われた。以上から受傷7日目に左RTSAを施行した。大・小結節は自家骨を骨移植し、高強度糸を用いてNice double-suture  knot法で整復固定した。術後4週間は外転中間位に保持して後療法を行った。術後評価は自動可動域、日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準（以下：JOAスコア）、画像評価として大・小結節の骨癒合、scapular notchingの有無を調べた。【結果】術後1年の自動可動域は、挙上：150°、自動外旋：40°、内旋：L2/3であった。JOAスコアは89/100点であった。画像上、大・小結節は骨癒合し、scapular notchingは認めなかった。【考察】年齢、骨折形態、骨質を考慮してRTSAを行うことで、良好な術後成績を獲得できたが、過去の報告を支持していた。また、RTSAでも外旋機能の獲得には大結節の骨癒合が重要であることが、これまでにも指摘されているが、自験例でも強固に整復固定して外転中間位に保持して骨癒合を促し後療法を行うことで、良好な外旋可動域を獲得できたと思われる。【結語】上腕骨近位端骨頭外反型4-part骨折に対して、RTSAは有効な治療選手段である。O-7-40脊柱管狭窄症を契機に診断に至った心アミロイドーシスの一例長浜赤十字病院　医局1）、長浜赤十字病院　循環器内科2）○‌川かわべ部　愛まなみ実1）、上野　義記2）、神元　宏侑2）、高木　俊祐2）、植村　裕樹2）、道智　賢市2）【症例】60歳代、男性　【主訴】労作時呼吸困難　【現病歴】腰痛と左下肢のしびれを主訴に整形外科を受診し、腰部脊柱管狭窄症と診断された。術前検査として施行された心電図検査と心エコー検査で異常所見認め、循環器内科紹介となった。心電図検査では1度房室ブロックと左脚前枝ブロック、T波の増高を認め、心エコー検査では全周性の壁肥厚を認めた。肥大型心筋症に類似する心エコー検査所見と脊柱管狭窄症を発症していることから、二次性心筋症である心アミロイドーシスが疑われた。血液検査では免疫グロブリン遊離軽鎖κ/λ比に異常は認められず、また尿の免疫電気泳動検査でもM蛋白は検出されなかった。しかしながら99mTcピロリン酸シンチグラフィにおいては心臓に有意な異常集積が認められた。腰部脊柱管狭窄症の手術時採取検体を用いて免疫化学染色を行ったところ、トランスサイレチンのみが同定された。TTR遺伝子変異解析では変異は検出されず、野生型トランスサイレチンアミロイドーシスと診断した。うっ血性心不全に対しては利尿薬投与を開始し、確定診断後はタファミジスの追加投与を開始した。現在、外来フォロー中であり、四肢のしびれの増強や労作時呼吸困難の増悪は認めておらず、治療開始後の経過悪化は認めない。【考察】他科の疾患を契機として心アミロイドーシスの診断に至り、治療を開始した症例を経験した。アミロイドーシスに対する薬物療法が可能となり、より早期診断の重要性が高くなっている。他科との連携が重要であった症例を経験したので報告する。200

小麦による食物性アナフィラキシーに急性膵炎を合併した小児例

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