中世盛期ブリュッセル地域の修道院所領 : ラ・カンブル修道院13世紀前半文書の分析

Abstract

application/pdf本稿は,ラ・カンブル修道院の旧文書庫に収容されていた13世紀前半の文書史料の分析から修道院所領の包括的な輪郭を提示する試みである。その所領は都市的集落ブリュッセルを中心としてほぼ50キロ圏内に位置し,センヌ水系の低湿地や森林に集中的に展開して,都市の需要に向けられた経済活動の場が整備されたことが明らかとなった。  さらに,この時期の所領形成に特徴的な要素として,多数の十分の一税取得地の集積があった。都市への恒常的な人口流入に伴って小教区教会が増加していったのは,まさにラ・カンブル修道院によって所領形成が進められていた地域であった。文書から読み取れたラ・カンブル修道院への譲渡のプロセスは,在俗教会と修道院さらに俗人領主による妥協点の模索を通じた十分の一税を主軸とする地域秩序の再編の方向性を示していると考えられる。小教区教会の在俗聖職者と修道院所領経営との関連性・連動性に都市ブリュッセルとその周辺地域の特色が見てとれる

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