J-GLOBAL ID : 201901006623480864J-GLOBAL ID : 202201012804701108J-GLOBAL ID : 2021010042378451441520297128942605184application/pdfdepartmental bulletin pape

Funato, Kazuo

Furuta, Natsumi

YAMAMOTO, Rika

フナト, カズオ

フルタ, ナツミ

ヤマモト, リカ

古田, なつみ

山本, 里佳

船渡, 和男

Japanese

23338

26324

25776

Kokushikan University Academic Information Repository / 国士舘大学　学術情報リポジトリ

国士舘大学大学院スポーツ・システム研究科（Graduate School of Sport System, Kokushikan University）新体操選手における形態的特徴：1年間の縦断的報告Morphological characteristics of rhythmic gymnasts： A one-year longitudinal report山　本　里　佳，古　田　なつみ，船　渡　和　男Rika  YAMAMOTO，Natsumi  FURUTA  and  Kazuo  FUNATOⅠ．緒　　言「新体操」とは手具と音楽を介した優美な動きで表現や技術を競う女性のスポーツである。現代の新体操は舞踊や体操の分野で革新的な表現や運動システムを開発した先駆者らの影響によって生まれた。新体操の種目は個人競技と団体競技に分けられ、競技方法はそれぞれ異なる。個人競技はフープ、ボール、クラブ、リボンの4種目で競われ、団体競技は単一手具による演技と2手具のアンサンブルによる演技の2種目で競われる 1）。そして、これらの手具にジャンプ、バランス、ローテーションなどに分類された身体難度を組み合わせて競技を行う。したがって、身体の柔軟性はこれらの身体難度にダイナミズムを付与すると同時に、身体の形態的特徴が新体操の芸術的表現獲得の要素として必要不可欠であることは言うまでもない。新体操の競技レベルと選手の形態的特徴の関連は、いくつか報告されている 2−5）。高い競技レベルの新体操選手は、低体重、少ない体脂肪率などの体格や身体組成を有することが報告されている。また、高身長かつ細長い手足、肩幅が広く、腰が狭く、左右対照であるといった形態計測に関する報告もある4, 6, 7）。つまり、新体操選手は高い身体難度を要する競技の特徴に適応した形態を有することが考えられる。新体操の競技シーズンは一般的に3月上旬から12 月上旬とされている。だが、選手はパフォーマンス向上のために前述した形態的特徴の維持が求められる。一般的にトレーニングによって身体組成や形態に変化がみられるのに 2−3 か月を必要とすることが知られているが、競技者における形態的特徴に関する報告は縦断的な報告が多く、横断的な報告は少ない3）。本学の女子新体操部は、個人競技や団体競技において全日本新体操選手権大会入賞者が多く所属することから大学生新体操部の中でも高い競技レベルであることが考えられる。したがって、本学新体操選手の形態的特徴を報告することは、新体操競技の強化に有効な知見を提示できる可能性がある。本研究は、新体操選手における形態的特徴の差異を1年間縦断的に調査し、高い競技レベルの選手における形態的特徴について検討することを目的とした。仮説として、高い競技レベルの選手は高身長かつ低体重で体脂肪率が低く、細長い手足や周囲長を有し、年間を通してそれらを維持してTHE ANNUAL REPORTS OFHEALTH, PHYSICAL EDUCATIONAND SPORT SCIENCEVOL.41, 127-133, 2022報告書（体育研究所プロジェクト研究）−127−いるとした。Ⅱ．方　　法被験者は、計4回の計測に全て参加した本学女子新体操部員17名（20.6±0.8歳、161.6±5.0 cm、52.6±4.1 kg、BMI 20.2±1.7kg/m²）を対象者とした。このうち、第75回全日本新体操選手権（令和4年10月27日～30日）に個人総合または団体総合で出場した群（HG）9名、非出場群（LG）8名に分類した。実験前に書面と口頭よる説明を行い、インフォームドコンセントを行って同意を得た。本研究は国士舘大学の倫理審査委員会の承認（承認番号：21022）を得て行った。各測定時は 2 時間以上絶食状態かつ水泳帽、スポーツ用下着およびスパッツを着用して計測した。計測は、2021年 12 月下旬～2022 年 10 月上旬に実施し、3 か月ごとに計 4 回計測を行った（2021 年 12 月：Dec-21、2022 年 3 月：Mar-22、2022 年 6 月：Jun-22、2022年10月：Oct-22）身体組成値の算出には、空気置換法を用いた体脂肪測定システム（Body Composition System Mab-1000、Life Measurement 社、USA）を使用した。計測は機器のマニュアルに基づき、以下の手順で計測した。計測時の気温は 22 度前後に事前に保ち、暖気運転を行った。計測前に、体積と体重計の校正を行った。体積は、50Lの校正シリンダーを用い一連の5回の容量測定で50 mlの最大標準偏差以内であることを確認した。体重計は、10kgの校正錘を3つ用いて2回校正した。身長を測定後、初めに被験者に測定の流れを説明し、必要に応じて練習を事前に行った。 最初に体重計（精度：±10 g）で体重を測定した。チャンバー内容積を測定し、被験者の容積を2回測定し、その差分を算出した。150 mlまたは体積が0.2％異なる場合、3回目の測定を行い、基準内の最も近い2つの測定値を平均したものを平均体積とした。被験者に外部に呼吸が漏れない状態にして、一定時間の自然な呼吸と数回に分けて最大呼気をするよう指示し、胸部ガス容量を計測した。胸部ガス容量の計測は5回繰り返し、最大値と最小値を除いた3回の平均値と計測した平均体積から体積を算出した。身体密度は、体重を体積で除して求めた。Brozekの式を用いて体脂肪率を算出した。得られた体脂肪率に体重を乗じて体脂肪量を算出後、体重から体脂肪量を引いて除脂肪量を算出した。形態計測値の算出には、光学式カメラを用いた人体形状スキャナー（Body line scanner、浜松ホトニクス社製、日本）を用いた。撮影前に被験者の解剖学的ランドマーク 19 点を触診し、皮膚または着衣の上から直径8mmの反射シールを添付した。被験者は、測定台の中央で前を向き、足を肩幅に開き、つま先と踵が平行になるような立位姿勢および腕を15°程度外転して維持するよう指示をした。約 10 秒間の撮影時間中前述の姿勢を維持し計測を実施した。撮影後、添付したランドマークに従い、9項目の形態計測部位の変数を算出した（図1）。統計解析はIBM SPSS Statistics v25を用いた。Shapiro-Wilkの正規性の検定によって正規性を確認後、対応のないt検定を用いて各測定期間にお山本・古田・船渡−128−図１　形態計測部位の定義ける HG と LG の変数を比較した。t 検定後にCohenの効果量（Cohen’ d）を各変数で算出した。効果量は、小さい（d=0.20以上）、中程度（d=0.50以上）、大きい（d=0.80以上）の3段階で評価した。また、1元配置分散分析を用いて、HGとLGにおける各測定期間の変数を比較した。全ての検定の有意確率は5％未満とした。Ⅲ．結　　果表1にHGおよびLGにおける2022年10月に計測を行った形態的特徴の比較を示した。身体組成において、体重、除脂肪量の統計上有意な差はみられなかった。体脂肪率は、HGがLGよりも−4.6％統計上有意に少ない値を示した（p＜0.01）。除脂肪量は、中程度の効果量（d＝0.64）であったことから、HGがLGよりも1.7 kg多い傾向を示した。形態計測の体長において、身長、下肢長に差はみられなかった。上肢長はHGがLGよりも2.6 cm統計上有意に長い値を示した（p＜0.05）。下肢長は中程度の効果量であったことから、HGが LGよりも 2.2 cm長い傾向を示した。形態計測の周囲長において、全ての変数に統計上有意な差はみられなかった。しかし、前腕周囲長と上腕周囲長において中程度以上の効果量が見られたことから、HGがLGよりも短い傾向を示した。図2にHGおよびLGにおける1年間の身体組成変動を示した。各群における体重、体脂肪率、除脂肪量は、計測期間による統計上有意な差はみられなかった。各計測期間におけるHGとLGを比較すると、体脂肪率は、2022年3月からHGがLGよりも統計上有意に少ない値を示した（p＜0.001）。体重は見かけ上両群ともに減少している傾向であった。一方、除脂肪量は見かけ上HGの方が安定して維持しているのに対し、LG群は減少傾向であった。図3にHGおよびLG における1年間の長育（体長）の形態計測値変動を示した。身長、上肢長、下肢長の1年間の変動を比較したが、統計上有意な差はみられなかった。上肢長に関して、HGが新体操選手における形態的特徴：1年間の縦断的報告 −129−表１　HGおよびLGにおける新体操選手の形態的特徴の比較山本・古田・船渡−130−図２　新体操選手の1年間の身体組成の変動＊：HG vs LG（p＜0.05）図３　新体操選手の1年間の形態計測値（長育）の変動＊：HG vs LG（p＜0.05）LGよりも2022年3月および2022年10月において統計上有意に長い値を示した（p＜0.05）。図4にHGおよびLGにおける1年間の周育（周囲長）の形態計測値変動を示した。各周囲長の1年間の変動を比較したが、統計上有意な差はみられなかった。前腕周囲長に関して、HGが LGよりも2021年12月および2022年6月において統計上有意に短い値を示した（p＜0.05）。HGは身体組成に関して LGよりも体脂肪率が統計上有意に少なく、低体重かつ除脂肪量が多い傾向を示した。また、形態計測値に関しても上肢長が統計上有意に長く、下肢長が短い傾向を示した。上腕および前腕周囲長が短い傾向を示した。これらに関する1年間の変動は、全ての変数に統計上有意な差はみられなかったが、HGの方が LGよりも 10 月の全日本新体操選手権に向けて体重や体脂肪率を減らしつつ除脂肪量を維持する傾向が見られた。Ⅳ．考　　察新体操競技における形態的特徴は、演技をより美しく見せるために細長い体型であることが多く報告されている 8）。この傾向は競技レベルの向上とともに顕著になり、低体重、少ない体脂肪率、高身長かつ細長い手足、肩幅が広く、腰が狭く、左右対照であるといった報告がされている4, 6, 7）。一方で、演技中に手具を巧みに操り、ジャンプ、バランス、ローテーションといった全身の筋量（除脂肪量）を必要とすることが考えられる。つまり、体格は細いがある程度の除脂肪量が競技パフォーマンスを評価する上で重要である。新体操選手における形態的特徴：1年間の縦断的報告 −131−図４　新体操選手の1年間の形態計測値（周育）の変動＊：HG vs LG（p＜0.05）Doudaら（2008）は、全国大会のスコアに従って新体操選手を2群に分け、パフォーマンスに寄与する形態的特徴や無酸素および有酸素パワーなどの要素について主成分分析した結果、高い競技レベルの選手は形態計測値が最大量の 45％を占めていたことを報告していた 2）。また、Cagnoら（2008）は、アテネオリンピック銀メダル選手らと全国レベルのジュニア選手を比較し、両群ともにトレーニングを行う前から身長が高く体脂肪率が少ない傾向を示しており、新体操に特徴的なトレーニングを行うことでその形態的特徴が強化されることを報告している 3）。身長の増加は遺伝的要因が大きいことが知られており 9）、体肢長は身長の増加とともに伸長するため、身体の長さは選手が潜在的に有している先天的要因に生活習慣や運動習慣などの後天的要因によって構成されていることが考えられる。また、周囲長は筋量や脂肪量を反映することが知られているため、より身体組成を反映した結果が得られると考えられる 10）。本研究結果において HGは LGよりも統計上有意に体脂肪率が少なく、上肢長が長いことを示した。統計上有意な体重や除脂肪量の差はみられず、年間の変動も示されなかった。しかし、効果量の結果から、HGは低体重かつ除脂肪量が多く、腕の周囲長、大腿周囲長、体幹部の周囲長が短い傾向が見られたことは、身体組成の変動が周囲長にわずかに影響することが考えられる。以上のことから、全日本新体操選手権に出場した選手（HG）は、非出場群（LG）と比較して体脂肪率が少なく、上肢長が長いことが明らかになった。加えて、低体重かつ除脂肪量が多い傾向を示していた。HGは難度の高い技や演技をこなすために必要な除脂肪量を維持しつつ、高いジャンプや素早い回転を達成するために可能な限り低体重を維持し体脂肪率を少なくしていると推察した。周囲長に影響が見られなかったのは、各部位において筋と脂肪量の置換が起きているため、有意な差が見られなかったことが考えられる。この傾向は、2022年10月に実施された第75回全日本新体操選手権にかけて専門的なトレーニングを実施した結果であることが示唆された。Ⅴ．ま　と　め本研究は新体操選手における形態的特徴の差異を1年間縦断的に調査し、高い競技レベルの高い選手における形態的特徴について検討するため、全日本新体操選手権出場群（HG） と非出場群（LG）の身体組成および形態計測値の差異について以下の知見が得られた。１． 身体組成に関して、HGは身体組成に関してLGよりも体脂肪率が統計上有意に少なく、低体重かつ除脂肪量が多い傾向を示した。２． 形態計測値に関して、上肢長が統計上有意に長く、下肢長が短い傾向を示した。上腕および前腕周囲長が短い傾向を示した。３． 身体的特徴の1年間の変動は、全ての変数に統計上有意な差はみられなかったが、HGの方がLGよりも体重や体脂肪率を減らしつつ除脂肪量を維持する傾向が見られた。以上のことから、本研究の新体操選手間における形態的特徴の差異に関して明らかになったことは、特に全日本新体操選手権大会に出場する選手は体脂肪率が少なく、上肢長が長い特徴を有していたことである。 加えて、10 月の全日本新体操選手権大会に向けて体重や体脂肪率を減らしつつ除脂肪量を維持する傾向が見られた。参考文献１） Federat i on Internat iona l Gymanast i cs：DISCIPLINES RHYTHMIC GYMNASTICS DISCIPLINESPresentation, https：//www.gymnastics.sport/site/pages/disciplines/presrg.php. （2023/1/25参照）.２） Douda H. T., Toubekis A. G., Avloniti A. A., T o k m a k i d i s  S .  P .：P h y s i o l o g i c a l  a n d anthropometric determinants of rhythmic 山本・古田・船渡−132−gymnastics performance, Int J Sports Physiol Perform, 3：41-54, 2008.３） Cagno Alessandra di, Baldari Carlo, Battaglia Claudia , Guidett i Laura , Piazza Marina：Anthropometric characteristics evolution in elite rhythmic gymnasts, Italian journal of anatomy and embryology, 113：29-36, 2008.４） Purenovic-Ivanovic T., Popovic R.：Somatotype of top-level serbian rhythmic gymnasts, J Hum Kinet, 40：181-187, 2014.５） M.I. Ismatova：Influence of Rhythmic Gymnastics on Anthropometric Parameters of Athletes, CENTRAL ASIAN JOURNAL OF MEDICAL AND NATURAL SCIENCES：327-330, 2021.６） Matarazzo Alessio, D’Anastasio Ruggero：Anthropometric Linear Measurements of Female Athletes in the Italian National Athletic Teams, Int J Morphol, 40：657-661, 2022.７） Silva Maria-Raquel G., Silva4 Hugo-Henrique, L u emba Te r e s a：ANTHROPOMETRIC PROFILE OF GYMNASTS PARTICIPATING IN THE EUROPEAN GAMES 2015 IN BAKU, AZERBAIJAN, Science of Gymnastics Journal, 12：187-193, 2020.８） Lukić Jelena：Anthropometric characteristics of rhythmic gymnasts, Exercise and Quality of Life, 12：37-44, 2020.９） GEORGOPOULOS NEOKLIS A., MARKOU KOSTAS B., THEODOROPOULOU ANASTASIA, VAGENAKIS GEORGE A., BENARDOT DAN, LEGLISE MICHEL, DIMOPOULOS JOHANNES C. A., VAGENAKIS APOSTOLOS G.：Height Velocity and Skeletal Maturation in Elite Female Rhythmic Gymnasts, The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 86：5159-5164, 2001.10） Batista Amanda, Garganta Rui, Ávila-Carvalho Lurdes：Morpholigical characteristics and biological maturation of brazilian and portufuese gymnasts., Int J Morphol, 37：561-567, 2019.新体操選手における形態的特徴：1年間の縦断的報告 −133−

Morphological characteristics of rhythmic gymnasts : A one-year longitudinal report

https://kokushikan.repo.nii.ac.jp/record/2000146/files/0389_2247_041_21.pdf

Morphological characteristics of rhythmic gymnasts : A one-year longitudinal report

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Kokushikan University Academic Information Repository / 国士舘大学　学術情報リポジトリ

Morphological characteristics of rhythmic gymnasts : A one-year longitudinal report

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Kokushikan University Academic Information Repository / 国士舘大学 学術情報リポジトリ

Kokushikan University Academic Information Repository / 国士舘大学　学術情報リポジトリ