京都府立医科大学博士（医学）令和4年度thesi

カネコ, ユカ

金子, 由佳

English

Kyoto Prefectural University of Medicine Institutional Repository (Kissei)

博士論文審査結果の要旨   学位申請者  金 子 由 佳   主論文  1 編  Topical application of nano-chitin accelerates wound healing in diabetic mice  京都府立医科大学雑誌 131(9); 751-766, 2022  審 査 結 果 の 要 旨 キチンは生体適合性に優れた天然ムコ多糖であり，ベスキチン®という創傷被覆材として臨床的に使用されている．キチンは様々な分野での適応が試みられているが，堅固な結晶構造のために加工処理が難しく，あまり開発が進んでいない．しかし近年，ゲル状の形態をとり，容易に加工できるナノ結晶化したキチン（ナノキチン）の生成の開発に成功し，今後の開発が期待されている． 創傷治癒遅延は，糖尿病患者の主要な臨床的問題の 1つである．糖尿病の創傷治癒遅延は，細胞浸潤や成長因子産生の障害，血管新生障害，および肉芽組織形成の低下を特徴とする． 申請者は，マウスの糖尿病性創傷治癒モデルを使用しナノキチンの創傷治癒における効果を評価し，さらに，主要な炎症細胞株である THP-1ヒト単球細胞株を使用して，in vitroでキチンを介した創傷治癒促進のメカニズムを評価した．  8週齢の糖尿病マウスの背部に潰瘍を作成し，ナノキチンあるいは vehicleを塗布し，創傷面積，病理組織の肉芽組織面積を比較した．免疫染色を用いて創傷治癒過程中の炎症細胞浸潤および血管増生を評価した．さらにはナノキチンとベスキチン®との比較を同様の実験系を用いて行った．また，THP-1細胞をナノキチンの存在下で培養し，定量リアルタイム PCR にて VEGF，TNF-α，IL-1，IL-6，IL-8，EGF，および bFGFの発現を測定した．また，ナノキチンの細胞傷害性についても評価した．ナノキチンは，4，7日目において，対称群と比較して有意な創縮小効果を示し，肉芽組織面積，血管新生および炎症細胞浸潤の増加を認めた．また，ナノキチンは THP-1細胞におけるVEGF，TNF-α，IL-1，IL-8および bFGFの発現を増加させた．ナノキチンは高濃度でも細胞の成長を阻害せず，ベスキチン®と同等の創縮小効果を示し，創傷面積，肉芽組織面積ともに有意差はなかった．本研究では，ナノキチンが糖尿病性皮膚潰瘍における創傷治癒を促進させることを示した．2型糖尿病において Toll-like receptor 2の発現が増加するとの報告があり，ナノキチンが Toll-like receptor 2に作用して炎症を誘発し，創傷治癒過程の炎症期を促進することで創傷治癒に寄与する可能性を示唆している．  以上が本論文の要旨であるが，新たにゲル状のナノキチンを生成し，糖尿病マウスモデルで創傷治癒促進を確認したこと，また in vitroでキチンの創傷治癒促進効果におけるメカニズムを検討した報告は過去になく，本研究がはじめてである点で，医学上価値ある研究と認める．     令和 4年 11月 17日    審査委員 教授   田 中 秀 央  ○印       審査委員 教授   奥 田   司  ○印   審査委員 教授   池 谷   博  ○印   

Topical application of nano-chitin accelerates wound healing in diabetic mice

https://kpu-m.repo.nii.ac.jp/record/2000027/files/sk1987.pdf

Topical application of nano-chitin accelerates wound healing in diabetic mice

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