京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第24903号工博第5183号京都大学大学院工学研究科分子工学専攻(主査)教授 梶 弘典, 教授 関 修平, 教授 寺村 謙太郎学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Ren, Yongxia

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京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第24903号工博第5183号新制||工||1989(附属図書館)京都大学大学院工学研究科分子工学専攻(主査)教授 梶 弘典, 教授 関 修平, 教授 寺村 謙太郎学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Acceleration of Reverse Intersystem Crossingin Purely Organic Emitters and itsApplication to Hyperfluorescence Systems(Abstract_要旨 )Ren, YongxiaRen, Yongxia. Acceleration of Reverse Intersystem Crossing in Purely Organic Emitters and its Application toHyperfluorescence Systems. 京都大学, 2023, 博士(工学)2023-09-25https://doi.org/10.14989/doctor.k24903許諾条件により本文は2024-09-01に公開; 1.“Near-infrared-red-orange thermally activated delayed fluorescenceemitters using a strong tetracoordinated difluoroboronated acceptor” Japanese Journal of Applied Physics, Volume 61,081001 (2022).© 2022 The Japan Society of Applied Physics. DOI:10.35848/1347-4065/ac7a7c 2. “Efficient blue thermallyactivated delayed fluorescence emitters showing very fast reverse intersystem crossing” Applied Physics Express,Volume 14, 071003 (2021). © 2021 The Japan Society of Applied Physics DOI:10.35848/1882-0786/ac06df 3. “PromotingReverse Intersystem Crossing in Thermally Activated Delayed Fluorescence via the Heavy-Atom Effect” The Journal ofPhysical Chemistry A. Volume 127, 439-449 (2023). © 2023 American Chemical SocietyDOI:https://doi.org/10.1021/acs.jpca.2c06287京都大学 博士（工学） 氏名 Yongxia Ren 論文題目 Acceleration of Reverse Intersystem Crossing in Purely Organic Emitters and its Application  to Hyperfluorescence Systems  (純有機発光材料における逆項間交差の高速化と Hyperfluorescence 系への応用) （論文内容の要旨）  有機発光ダイオード（OLED）は、大型でフレキシブルなディスプレイを含む照明技術において大きな注目を集めている。一般に、OLED は有機半導体からなる多層膜によって構成され、エミッター（発光）材料とそのホスト材料からなる発光層が高効率化を達成するための重要な要素となっている。中でも、熱活性化遅延蛍光（TADF）材料において、最低三重項 (T1)と最低励起一重項 (S1)との間のエネルギー差 ΔEST を極力小さくし、T1 から S1 への逆項間交差（RISC）を可能とすることにより、電気的に生成された励起子をすべて光に変換することがすでに実現化されている。このような利点から、TADF 分子は、高効率かつ低コストの OLED 用発光材料として最も有望視されている。しかし、RISC が TADF における律速過程であること、また、TADF 分子は電荷移動型の S1（ 1CT）を有するため、発光スペクトルがブロードになることが問題であった。本論文では、TADF における RISC を高速化するための分子設計を実験、理論の両面から検討した（第 1 章、第 2 章、第 3 章）。また、高効率とシャープな発光スペクトル、また、低コストをすべて両立することが可能な溶液塗布型 hyperfluorescence (HF) OLED に対する検討を行った（第 4 章、第 5 章）。  第 1 章では、2 つの長波長 TADF エミッター、DMAC-PAPB と m-DMAC-PAPB について報告している。理論計算から、DMAC-PAPB と m-DMAC-PAPB はいずれも小さな S1エネルギー（それぞれ 2.04eV と 1.85eV）と小さな ΔEST（ 0.01eV）を有し、長波長 TADFエミッターの必要条件を満たすことが予測された。実験的にも、 DMAC-PAPB とm-DMAC-PAPB は、それぞれトルエン中で 650 nm と 701 nm のピーク発光波長を持つ赤色と近赤外の発光を示した。両方のドープ膜の過渡 PL 減衰曲線は明確な遅延成分を示し、DMAC-PAPB と m-DMAC-PAPB がともに TADF 性を有することも示されている。蛍光量子収率（Ф PL）は高くなかったものの、長波長有機ホウ素ベースの TADF エミッターを開発する上で、アクセプターである PAPB の可能性が示されている。  第 2 章では、2×108 s -1 という極めて大きな RISC 速度定数（ kRISC）を持つ高効率青色 TADF 発光素子 MCz-TXO の実現に成功している。本章で新たに設計した MCz-TXOにおいて、アクセプターであるチオキサントン（TXO）中の硫黄は、重原子効果によるスピン軌道相互作用（SOC）の増強、ひいては RISC の高速化を可能にしている。理論計算の結果、MCz-TXO は 1CT と電荷移動型三重項（T1、 3CT）のみならず、局所励起三重項（T2、 3LE）のエネルギーもほぼ一致することが明らかとなっている。以上の分子設計に基づいて MCz-TXO を実験的に合成し、その光特性を測定した結果、CzSi をホストとして用いた真空蒸着膜において、2×108 s -1 という極めて大きな kRISC を得ることに成功している。ほとんどの TADF 分子における kRISC が 105~106 s -1 程度である中、飛躍的に大きな値を得たことになる。参照分子である酸素類縁体 MCz-XT と比較しても、100 倍の値である。濃度 5vol%の MCz-TXO:CzSi ドープ膜は青色発光を示し（最大発光波長 475 nm、CIE 座標 (0.16, 0.21)）、Ф PL は 64.7%であった。対応する真空蒸着 OLEDは、17.4%という高い外部量子収率を得ている。   - 27 - 京都大学 博士（工学） 氏名 Yongxia Ren 第 3 章では、MCz-TXO の TADF 発光メカニズムを明らかにしている。量子化学計算の結果、MCz-TXO では、T1－T2 間のエネルギー差が小さいため高速で T1→T2 遷移が起こること、また、T2－S1 間の SOC が十分に大きく、それらのエネルギー差も小さいことから高速の T2→S1 遷移が起こり、結果として、RISC は T1 から S1 への直接過程ではなく、T2 を経由した T1→T2→S1 過程により進行していることが示されている。また、本計算手法によって得られた各種速度定数、各種量子収率はすべて実験結果と一致し、この分子の発光過程を包括的に説明することを可能としている。特に、この T2 を介した RISC の速度定数は 1.0×108  s -1 と計算され、実測値との良い一致が得られている。また、この計算手法を用い、 1010  s -1 以上の大きな kRISC を示す 2 つの新規 TADF 分子、MCz-SeXO と MCz-TeXO を設計している。さらに大きな重原子効果を導入すると、TADFではなくりん光を示すことが計算上予測されたことから、高速 RISC を示す TADF の実現には、適度な重原子効果が必要であることが示されている。  第 4 章では、塗布系 HF-OLED における蛍光共鳴エネルギー移動（FRET）とデクスターエネルギー移動（DET）に対するホストの影響について考察している。ここでは、ホストに CzSi または PPF を、TADF 補助ドーパント（TAD）に MCz-TXO を、シャープな蛍光を示す終端発光体（FTE）に tPhBODIPY を用いている。TAD においてすべての励起子を一重項に変換し、そこから FTE への FRET によって効率と発光線幅の両立を実現している。これらの HF-OLED において、発光の半値幅（ fwhm）は CzSi で 29 nm、PPF で 32 nm と、対応する TADF-OLEDs（CzSi で 104 nm、PPF で 113 nm）よりもはるかにシャープな発光を得ることを可能としている。また、ホストに CzSi を用いた場合は FRET の競合過程である ISC が速かった一方、PPF ホストにおいては、 ISC よりもFRET の方が速く、効率的な FRET が起こることが示されている。さらに、 tPhBODIPYの代わりに TPBi を用いることにより、DET に対する検討も進められている。その結果、CzSi ホストでは TPBi 濃度が 0.5wt%と低くても DET が生じる一方、PPF ホストでは TPBi濃度が 3wt%と高くても DET が抑制されることが示されている。これらの実験は、望ましくない DET を抑制するための新しい戦略を提供している。  第 5 章では、第 4 章の結果に基づき、さらに HF 系におけるホストの効果についての検討を進めている。HF-OLED においては、理想的には、できるだけ大きな kRISC を持つ TAD を用いることが望ましい。しかし、その場合、 ISC が同時に速くなり、FRETの効率が落ちてしまうことが考えられる。本章では、HF-OLED のホスト材料を検討することにより、大きな kRISC を有しながら、同時に kFRET と k ISC を調節可能なホストエンジニアリングにより HF-OLED の高性能化が可能であることを提案している。6 つの異なるホストを用いて HF-OLED を作製し、その光物性を測定した結果、TAD の k r、k ISC、また、TAD から FTE への kFRET の相対的な大きさを調整することが可能であり、特にkFRET を大きくすることにより、より効率の良い HF-OLEDs を実現できることが示されている。  最後に結論において、本論文で得られた成果について要約している。    - 28 -   氏 名 Yongxia Ren （論文審査の結果の要旨）  本論文は、有機熱活性化遅延蛍光（TADF）材料における逆項間交差（RISC）の加速と、TADF 分子を発光体ではなく補助ドーパントとして用いた溶液型 hyperfluorescence （HF）有機発光ダイオード（OLED）に関する研究をまとめたものであり、主な成果は次の通りである。  1. 2 つの新しい TADF 分子、DMAC-PAPB と m-DMAC-PAPB を開発した。最低励起一重項状態 (S1)と最低三重項状態 (T1)の間のエネルギーギャップを極めて小さくすることにより、明確な TADF 特性を有する長波長（赤、深赤、近赤外）発光を実現した。  2. 大きな RISC 速度定数 kRISC を有する青色発光 TADF 分子の実現のため、新たにMCz-TXO と名付けた分子を設計した。硫黄の重原子効果を有効に用いる分子設計により 2×108 s-1 という極めて大きな速度定数 kRISC を実験的に得ることができた。これは、現在報告されている有機 TADF 発光体の中で、最大級の kRISC である。真空蒸着 OLEDに応用することにより、高い発光効率を有する青色発光デバイスも実現することができた。  3. 量子化学計算によって、MCz-TXO の RISC 過程を含む発光メカニズムの包括的理解を得た。MCz-TXO 中の硫黄原子は、S1(1CT)－T2(3LE)間の大きなスピン軌道相互作用をもたらすとともに、S1(1CT)－T2(3LE)間、また、T1(3CT)－T2(3LE)間のエネルギー差を小さくすることにも寄与し、MCz-TXO における RISC が T1→T2→S1 を経由して進行することを定量的に解明した。また、セレン原子、テルル原子を導入した誘導体では1010 s-1 を超えるさらに大きな kRISC を示すことが、計算上、予測された。一方、さらなる重原子効果の導入は、TADF ではなく、りん光を示すことも予測された。  4. HF 系における蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)とデクスターエネルギー移動 (DET)に対するホストの効果を明らかにした。CzSi ホストと比較し、PPF ホストの HF-OLEDは、FRET の促進と DET の抑制を同時に実現できることを示した。  5. HF 系において、RISC の高速化は非常に望ましいが、同時に高速化してしまう ISCが不利に働くという、HF-OLEDs の問題点に対する一つの解決策を提案した。ホスト材料を変えることにより、FRET と ISC の相対的な速度を調整することが可能であることを示し、デバイスの特性向上が図れることを明らかにした。また、溶液塗布系 HF-OLEDを作製し、高効率と高色純度を両立させることに成功した。  本論文は、有機発光材料において非常に高速な RISC を実現するとともに、効果的なHF システムの設計、開発を行ったものである。これらの成果は、TADF/HF 研究領域において貴重な情報を提供し、高効率 OLED の実現に貢献するものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和 5 年 8 月 1 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた   

純有機発光材料における逆項間交差の高速化とHyperfluorescence系への応用

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/285837/2/ykogk05183.pdf

純有機発光材料における逆項間交差の高速化とHyperfluorescence系への応用

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