Himuro Fujiwara

藤田医科大学博士(医学)doctoral thesi

Fujiwara, Himuro

3744

Fujita Health University Academic Information Repository / 藤田保健衛生大学学術情報リポジトリ

− 2 − − 3 −論文内容の要旨【緒言】　周術期管理センター（PMC）は、手術を受ける患者に安全な周術期環境を提供することを目的としている。周術期の肺塞栓症（PE）は致死率が高いが、予防可能な医療関連合併症である。術前静脈血栓塞栓症（VTE）合併例は周術期に中枢への血栓症進展のリスクが高い。そのため、周術期のPEの予防には、術前VTE診断と二次血栓予防が重要である。【目的】　PMCを中心とした術前VTEプロトコルの推進が術前VTEの診断と二次性血栓症予防に与える影響を調べるため、本研究を立案した。PMC設立前と設立後で術前VTE検出率とその後の治療に及ぼす影響を比較・検討した。【方法】　本後方視的研究は、藤田医科大学病院臨床研究倫理審査委員会の認可を受けて実施した。対象患者は20歳以上の予定全身麻酔患者とし、PMC設立前後でpre-PMC群（2014年1月～10月）とpost-PMC群（2019年1月～ 12月）の2群に分けた。術前下肢圧迫超音波検査（CUS）実施率や術前VTE検出率、抗凝固療法の実施率と使用抗凝固薬、術後の新規PE発生率について両群で比較した。データはカイ二乗検定を用い、P<0.05で有意差ありとした。【結果】　pre-PMC群は3737例、post-PMC群は5388例が対象となった。術前CUSの実施状況は、pre-PMC群270例（7.2 ％）、post-PMC群1379例（25.6 ％）とpost-PMC群 で 有 意 に 多 く(P＜0.001)、post-PMC群のプロトコル遵守率は96.9％であった。術前VTEはpre-PMC群では54例（1.42％）、post-PMC群では209例（3.93％）に検出され、同様にpost-PMC群で術前VTE検出率が有意に高かった（P＜0.001）。術前VTEを有する患者で抗凝固療法が実施されたのはpre-PMC群48例（88.9％）、post-PMC群177例（84.7％）で有意差は認めなかった(P＝0.43）。抗凝固薬はpre-PMC群はヘパリン、post-PMC群は直接経口抗凝固薬が主に使用されていたが、有効性と安全性は両群間で同等であった。術後新規PEは両群とも検出されなかった。【考察】　本研究では、PMCが主導する術前VTEプロトコルの推進により、術前CUSの実施率および術前VTE検出率が向上することが示された。術前CUSの実施率向上の理由としては、PMCの中心的役割を担う麻酔科医が96.9%と高率にプロトコルを遵守したこと、患者が手術の2～4週間前にPMCを受診することで、追加検査を行う時間が確保されたことがあげられる。　周術期PEの予防は理学的予防法のみでは困難で、抗凝固療法が重要といわれている。本研究では、術前VTE合併患者に対する術前抗凝固療法実施率はPMC前後ともに高く、差は認められなかったが、post-PMC群では術前VTE検出率上昇に伴い、術前抗凝固療法の導入数は向上したといえる。術後PEの新規発症は両群ともに認められなかったが、PE発症率が低く、サンプル数が不十分であったためと考えられ、術前VTE症例における抗凝固療法の有用性を否定するものではないと考える。【結語】　PMCが主導する術前VTEプロトコルの推進により、術前VTE検出率および術前抗凝固療法施行数が上昇し、術前二次血栓予防の推進につながった可能性がある。論文審査結果の要旨　周術期の肺塞栓症(PE)は致死率が高いが、予防可能な医療関連合併症である。周術期管理センター (PMC)では術前静脈血栓塞栓症（VTE）プロトコルの推進を行い、VTE診断と二次血栓予防を行っている。　本研究では、PMC開設前(pre-PMC群)と開設後(post-PMC群)でVTE検出率とその後の治療に及ぼす影響を後方視的に調査・検討した。　pre-PMC群3737例、post-PMC群5388例が対象とし、post-PMC群では96.9%がプロトコルを遵守していた。術前下肢超音波検査の実施率、術前VTE検出率はpost-PMC群で有意に高かったが、両群共に術後PEの発症はなかった。PMCの周術期管理における安全性への貢献が明らかにされた。　審査会では、PMCが術前VTEプロトコル運用に関わることにより、VTE評価や検査のための時間的余裕が生まれたなどの考察が示された。また、PEの発症がなかったことについては、術後VTE 検査のプロトコルが存在せず、無症候性PEの見落としの可能性やサンプル数の不足などが示された。また、本研究を発展させる次の計画についての議論では、術後についてもVTEフォローアップの環境を整備することや、年齢調整D-dimer値などを用いることで下肢超音波検査の適応を見直すなどの的確な提案がなされた。いづれの質疑に関しても適格な回答および議論がなされ、周術期管理センターのVTE予防プロトコルにおける存在意義が科学的に立証された。以上より本研究は侵襲制御医学に貢献し、学位論文として十分な質を持つものと評価した。氏　　　　　名 藤　原　　　凌学 位 の 種 類 博士（医学）学 位 記 番 号 甲 第 1332 号学位授与の日付 2023年3月12日学 位 論 文 題 名 Promotion of a venous thromboembolism prevention protocol at a perioperative management center 「 周術期管理センターによる静脈血栓塞栓症予防プロトコルの推進」 Fujita Medical Journal. in press指 導 教 授  　　　西　田　　　修論 文 審 査 委 員 主査 教授　白　木　良　一 副査 教授　星　川　　　康  教授　高　木　　　靖

Promotion of a venous thromboembolism prevention protocol at a perioperative management center

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周術期管理センターによる静脈血栓塞栓症予防プロトコルの推進

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