京都大学新制・課程博士博士(理学)甲第24407号理博第4906号新制||理||1701(附属図書館)京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻(主査)教授 鶴 剛, 准教授 細川 隆史, 教授 永江 知文学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDFA

Kayama, Kazuho

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:X-ray Study on Microquasar SS 433/W50Extended Jets: Propagation of Non-thermalParticles and Origin of Hotspots( Abstract_要旨 )Kayama, KazuhoKayama, Kazuho. X-ray Study on Microquasar SS 433/W50 Extended Jets: Propagation ofNon-thermal Particles and Origin of Hotspots. 京都大学, 2023, 博士(理学)2023-03-23https://doi.org/10.14989/doctor.k24407許諾条件により本文は2024-03-01に公開; 許諾条件により要旨は2023-04-01に公開  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 佳山 一帆 論文題目 X-ray Study on Microquasar SS 433/W50 Extended Jets: Propagation of Non-thermal Particles and Origin of Hotspots (X 線観測を用いたマイクロクエーサー SS 433/W50 ジェットの非熱的粒子の伝搬とホットスポット形成の研究) （論文内容の要旨）  宇宙ジェットとは、ブラックホールなどの天体から噴出されるプラズマやガスの噴流である。ジェットからはガンマ線放射が検出されており、宇宙線加速源の候補としても注目されている。しかし、どのようなメカニズムで、ジェットのエネルギーを宇宙線のエネルギーに変換しているのかは明らかではない。本研究では、視直径の大きい銀河系内ジェット天体で、高エネルギーガンマ線放射が検出されているSS 433に着目した観測的研究を行なった。  SS 433はW50星雲の中心に位置する天体であり、我々から5.5 kpcの距離に位置する恒星とコンパクト星の連星系である。光速の26%の速さで東西の方向に、歳差運動しながらジェットを噴出している。W50が中央のシェルに加え、SS 433の最差軸の方向に引き伸ばされた構造を持つことから、SS 433がW50星雲の形成にも影響を関係していると考えられている。これまでのX線観測からは、ジェットの歳差軸に沿って東西に伸びたローブ状の構造が検出されている。また、歳差軸上には、局所的に明るいknotと呼ばれる構造がいくつか見つかっている。これらは先行研究で、SS 433に近い順に head, lenticular, ring (東側)と w1, w2 (西側)と定義されている。このローブやknotからのX線放射はシンクロトロン放射であり、粒子加速や放射のメカニズムを探る上ではX線のスペクトルの変化を調べることが重要な情報となる。しかし、先行研究のX線観測では角度分解能が悪く、ジェット軸上での細かい空間スケールでのスペクトルの変化はよくわかっていない。そのため、高い角度分解能を持つ衛星による撮像分光観測が必要不可欠である。  そこで、本研究は高い角度分解能を持つXMM-NewtonおよびChandra衛星を用いて、W50の東西のローブから放射されるX線のスペクトルを空間構造ごとに抽出して調査した。その結果、東西のローブから熱的放射と非熱的放射を検出した。非熱的放射はジェット中からのシンクロトロン放射であり、また熱的放射はジェットなどによって加熱された周囲の物質からの放射であると考えられる。その空間分布は熱的放射が星雲全体に広がっているのに対し、非熱的放射はジェット歳差軸に沿って分布していることを明らかにした。最もSS 433に近いknot(head, w1)より外側からはX線の非熱的放射が検出され、そのスペクトルの傾きは、SS 433からジェットの歳差軸に沿って遠ざかるにつれて急峻になる。これは、シンクロトロン放射をする電子の最大エネルギーが小さくなることを意味している。また、特に西側ローブのknot w2の外側では急激にスペクトルがソフトになることを発見した。これらのスペクトルの変化は、1 つ目のknotで電子が加速され、その電子がジェット中を伝搬しながらシンクロトロン放射冷却によってエネルギーを失っている描像で定性的に説明ができる。特にknotは局所的に磁場が強いため、シンクロトロン放射の局所的な増光と、それに伴う急激な放射冷却によるスペクトルの軟化がみられていると考えられる。そこで、ジェット中での非熱的粒子の時間発展モデルを構築し、観測結果と比較を行ったところ、この描像を定量的に説明することができた。一方で、東側ローブの knot w2と対をなす    lenticular領域のスペクトルは、knotの外側でも平坦な傾きを持っており、西側と同じモデルでは単純に説明できないことがわかった。これは粒子の再加速の可能性を示唆している。また、これらの外側のknot位置は、それぞれジェットとW50の中央シェルが相関する領域と一致することから、もともと強い磁場を持つW50のシェルを電子が通過することによってknotが形成されていると考えられる。また内側のknotの位置は、モデル計算から予想されるジェットとW50シェルの相互作用によって生じた逆行衝撃波の場所と一致する。このことから、粒子は逆行衝撃波もしくはそれによって掃き寄せられた物質とジェットの相互作用によって発生する衝撃波で加速されると考えられる。     （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  宇宙線は宇宙を飛び交う数TeV以上のエネルギーを持った荷電粒子のことである。およそ100年前にV.Hessによる気球実験でその存在が発見されて以降、この宇宙線がどこでどのようにして高いエネルギーまで加速されているのかを明らかにすることは長年の課題となっている。超新星残骸などの衝撃波が加速源であると考えられている一方、AGNやマイクロクエーサーなどのジェット天体からも高エネルギー粒子由来のガンマ線放射が検出されており、加速源の有力な候補と考えられている。しかし、どこでどのようなプロセスで衝撃波を形成し、ジェットのエネルギーを粒子のエネルギーに散逸させているのかは明らかではない。そこで、申請者はガンマ線が検出されているマイクロクエーサーであるSS 433/W50に着目し、X線を用いた観測的研究を行なった。  ジェット中での粒子のエネルギーの変化を観測から制限するためには、小さい空間スケールでの撮像分光が最適である。そこで申請者は、優れた角度分解能を持つXMM-Newton衛星およびChandra衛星によって得られた観測データを使用した。天体からの放射はバックグラウンド成分に比べて十分暗く、その切り分けが難しい。そのため、観測データの中には2003年に取得されたにもかかわらず、その後の詳細な解析は行われていないものもある。これらのデータに対し、申請者はバックグラウンドモデルを構築し、そのパラメータ・強度の見積もりを慎重に行うことで、これらの観測から信頼度の高い解析結果を導き出した。  本研究では、マイクロクエーサージェット中での非熱的粒子の持つエネルギーが、加速や冷却によってどのように時間発展していくのかを観測から測定した。その結果、ジェット中にあるknotと呼ばれる局所的に明るい領域で、衝撃波によって粒子が数PeVを超えるエネルギーまで加速されていることを明らかにした。これは電波からTeVガンマ線放射まで、幅広い帯域のスペクトルと矛盾しないものであり、この天体における粒子加速の描像は、本研究によって揺るぎのないものになったと言える。また、ジェットが伝搬する周辺環境からの熱的放射を調べることで、W50星雲が超新星残骸であることを決定付けた。これらの結果に基づき、マイクロクエーサージェットと超新星残骸の相互作用に起因する、粒子加速やローブ・knotなどの構造の形成シナリオを提案した。これらの成果は、本天体のみならず、他の銀河系内外の宇宙ジェットにおける粒子加速の描像を解明する上でも非常に重要なものであり、評価に値するものである。 以上から、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和5年1月27日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。   要旨公表可能日：  2023 年 4 月 1 日以降   

X線観測を用いたマイクロクエーサーSS 433/W50ジェットの非熱的粒子の伝搬とホットスポット形成の研究

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