京都大学新制・課程博士博士(エネルギー科学)甲第24712号エネ博第455号新制||エネ||85(附属図書館)京都大学大学院エネルギー科学研究科エネルギー社会・環境科学専攻(主査)教授 河本 晴雄, 教授 亀田 貴之, 教授 髙野 俊幸学位規則第4条第1項該当Doctor of Energy ScienceKyoto UniversityDFA

ワン, ジャキ

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Pyrolysis-assisted Catalytic Hydrogenolysisof Lignin in Solvents for Aromatic MonomerPreparation( Abstract_要旨 )ワン, ジャキワン, ジャキ. Pyrolysis-assisted Catalytic Hydrogenolysis of Lignin in Solvents forAromatic Monomer Preparation. 京都大学, 2023, 博士(エネルギー科学)2023-03-23https://doi.org/10.14989/doctor.k24712許諾条件により本文は2024-03-22に公開様式Ⅰ   博士学位論文調査報告書   論文題目 Pyrolysis-assisted Catalytic Hydrogenolysis of Lignin in Solvents for Aromatic Monomer Preparation リグニンの溶媒中での熱分解支援接触水素化分解による芳香族モノマー生産   申 請 者 Wang Jiaqi   最終学歴  令和４年９月 京都大学大学院エネルギー科学研究科エネルギー社会･環境科学専攻 博士後期課程 研究指導認定退学   学識確認   平成    年    月    日（論文博士のみ）                        調査委員        京都大学大学院エネルギー科学研究科                     （主査）        教 授  河本 晴雄                              調査委員        京都大学大学院エネルギー科学研究科                                     教 授  亀田 貴之                              調査委員        京都大学大学院農学研究科                                     教 授  髙野 俊幸         （ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（エネルギー科学） 氏名 Wang Jiaqi 論文題目 Pyrolysis-assisted Catalytic Hydrogenolysis of Lignin in Solvents for Aromatic Monomer Preparation （リグニンの溶媒中での熱分解支援接触水素化分解による芳香族モノマー生産） （論文内容の要旨）  本論文は、リグニンの溶媒中での熱分解支援接触水素化分解による芳香族モノマー生産について研究した結果をまとめたものであり、7 章からなっている。 第１章は序論であり、エネルギー・環境問題とバイオマスの潜在的な役割、リグニンの化学的性質、石油由来のケミカルスを代替できる潜在的市場、リグニンの熱分解および従来の接触水素化分解法の課題などをまとめ、研究の目的および意義を述べている。 第２章では、針葉樹（スギ）木紛の非プロトン性溶媒中での熱分解によるリグニンからの熱に安定なオリゴマー生成について検討した結果をまとめている。リグニンは、フェニルプロパン単位がエーテル型（C－O、約 70%）および縮合型（C－C、約 30%）結合でつながったポリマーであり、250〜350 ℃の温度域で熱分解し、エーテル結合が開裂してリグニン分子の低分子化が起こるが、再縮合反応が優先して進行するため大部分は炭へと変換される。そこで、非プロトン性であり高温で安定な芳香族溶媒（ジフェノキシベンゼン）と水素供与体を用いて熱分解する方法を提案した。この条件では再重合が効率的に抑制され、スギ木紛から 80%以上の収率（リグニン芳香環ベース）で熱に安定な芳香族オリゴマーを得ることに成功した。なお、この条件では縮合型（C－C）結合が開裂しないことから、芳香族モノマーの生成量はわずかであった。 第３章では、再重合の反応性が制御される芳香族溶媒中での熱分解に触媒（Pd/C） および水素を添加した系でのスギ磨砕リグニン（MWL）の変換について検討した結果をまとめている。芳香族溶媒としてアニソール（メチルフェニルエーテル）を用い加圧下で検討した結果、200℃以下の比較的低温度域で行われる従来の水素化分解条件での収率が 20 mol%以下であったのに対し、より高温（250～350℃）での本実験条件では、60 mol%以上の収率（リグニン芳香環ベース）で芳香族モノマーを得ることに成功した。また、従来法と異なり、低沸点のグアイアコールおよびアルキルグアイアコール（メチル、エチル、プロピルグアイアコール）が主要成分であり、その後の気相での触媒変換などにおいて有利であることも明らかにした。モデル化合物を用いた検討などにより、本法で芳香族モノマーが高い収率で得られる理由として、制御熱分解により可溶性オリゴマーが最初に生成することで触媒が効率的に作用できること、熱分解では開裂しない縮合型（C－C）結合やジフェニルエーテル型の結合が開裂すること、高温ではベンゼン環の水素化が抑制されることなどを明らかにした。また、縮合型結合が開裂することから、再縮合の進んでいるオルガノソルブリグニンなどの工業リグニンにも適用可能であることも示した。なお、本提案方法を、「熱分解支援接触水素化分解（pyrolysis-assisted catalytic hydrogenolysis）」と命名した。 第４章では、 フェニルプロパン単位のプロパン鎖間で縮合したβ-β 型のピノレジノール構造の熱分解支援接触水素化分解について検討した結果をまとめている。β-β型構造は、木材のパルプ化においても分解し難く、クラフトリグニンなどの工業リグニンにおける主要な結合様式である。スギ MWL の熱分解支援接触水素化分解において生成する二量体画分の分析においてピノレジノールが認められなかったことから、何等かの生成物へと変化していることが示唆された。そこで、β-β 型 二量体モデル化合物を用いて検討した結果、芳香族モノマーへの変換はほとんど起こらず、ナフタレン構造へと変換されることを見出した。また、六員環のシクロヘキサン環が生成し、続いて脱水素することでベンゼン環へと変換される機構を提案した。本結果は、リグニン熱分解におけるナフタレン骨格の生成機構に関する重要な知見である。 第５章では、リグニンの熱分解支援接触水素化分解における熱分解の役割と触媒変換機構について検討した結果をまとめている。リグニンは芳香族溶媒として使用したアニソールに溶解しないため、固体の Pd/C 触媒による直接変換は効率的ではないと考えられる。一方、リグニンは熱分解によりオリゴマーへと変換されアニソールに可溶化することから、まずリグニンの熱分解が起こることで、触媒変換が効率的に進行する機構が考えられた。そこで、リグニンからの一次熱分解物であるコニフェリルアルコールのアニソール中での熱分解生成物組成および反応性に対する触媒（Pd/C）の影響、スギＭＷＬの反応性などから検討した。その結果、熱分解により様々な官能基を含む側鎖が生成し、これらのアルキル鎖（メチル、エチル、プロピル）への変換あるいは脱離する機構が提案された。また、アルキル鎖が安定である一方、共役アルデヒドや OH 基を有する側鎖がアルキル鎖へと変換された結果を、極性な Pd 表面への吸着性との観点から説明できることを提案した。さらに、これらの構造が触媒表面で変換される過程で活性水素種が生成していることがわかり、水素を用いなくても Pd/C 触媒を添加するだけで接触水素化分解を行うことができることを明らかにした。水素が不要であることは、工業化を考える上で有利である。 第６章では、スギ木材の熱分解支援接触水素化分解に及ぼす溶媒の影響について検討した結果をまとめている。プロトン性（水、メタノール）、非プロトン性の芳香族（アニソール、トルエン）および非極性（ヘキサン）溶媒を用いて検討した結果、プロトン性の水、メタノールでは再縮合が、水ではメトキシル基の加水分解とそれに続く分解が、アニソールを除くその他の溶媒では溶媒由来のラジカル種とのカップリング反応が競合して起こることで芳香族モノマー収率が低下することを見出し、検討した溶媒の中ではアニソールが最適であることを明らかにした。また、非極性溶媒であるヘキサン中では脱メトキシル化によるフェノール類の生成が優先して起こることを見出した。 第７章（結論）では、本研究で得られた成果についてまとめている。   （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨） 本論文では、熱分解支援接触水素化分解によるリグニンからの芳香族モノマー生産について検討したもので、得られた成果は以下の通りである。 1) リグニンは、熱分解においてエーテル構造が開裂して低分子化するものの、生成物が極めて再重合しやすいことから、最終的に炭化物へと変換される。この性質がモノマー生産を目指す上での最大の課題である。そこでまず、リグニンの熱分解分子機構の知見を基に再重合の抑制方法につていて検討した。その結果、非プロトン性の芳香族溶媒と水素供与体を用いることで、キノンメチド中間体およびラジカル中間体を経由する再重合反応が効果的に抑制され、針葉樹であるスギ木紛から、リグニン由来のオリゴマーを 80％以上の収率で得ることに成功した。 2) 芳香族溶媒系に触媒（Pd/C）と水素を添加し、250～350℃の温度域で熱分解することで、オリゴマーはさらに低分子化し、スギリグニンより芳香環ベース 60 mol％以上の収率でモノマー（主にアルキルグアイアコール）を得ることに成功した。また、200℃以下で行われる従来法の最大収率 20 mol％と比べて高収率であった理由として、熱分解で開裂しないジフェニルエーテルや縮合型（C－C）結合が開裂すること、好ましくないベンゼン環の水素化が高温では進行しないことなどを明らかにした。さらに、再縮合の進行した工業リグニンにも適用可能であること、リグニン芳香核の側鎖より活性水素種が生成するため水素の添加が不要であることなどを見出し、提案した方法を「熱分解支援接触水素化分解」と命名した。 3) リグニンの熱分解で生成するコニフェリルアルコールなどの種々の中間体と触媒（Pd/C）との反応性を詳細に調べ、芳香族溶媒中での制御熱分解によりリグニンが溶媒に可溶なオリゴマーへと変換され、その後 Pd/C によるモノマーへの変換が起こる機構を提案した。また、共役二重結合を含む中間体が触媒上で高い反応性を示す一方、非極性なアルキル側鎖の分解が全く進行しないこと、側鎖のヒドロキシアルキル構造から活性水素種が生成することなどを明らかにし、これらの結果が触媒の Pd 表面との相互作用の違いにより説明できることを示した。さらに、水、メタノール、トルエン、ヘキサンなど種々の溶媒のモノマー生産および競合する副反応への影響を検討し、溶媒効果を明らかにした。  以上、本論文は、リグニンの熱分解反応の制御方法について検討し、熱分解支援接触水素化分解による芳香族モノマーの高収率生産およびバイオケミカルスへの変換のための指針を提案するものであり、バイオマスに関わる学術領域に寄与するところが少なくない。  よって、本論文は博士（エネルギー科学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和５年１月２４日実施した論文内容とそれに関連した試問の結果合格と認めた。 論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文の全文は、本学学術情報リポジトリに掲載し、公表とする。ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。 要旨公開可能日： 令和 年 月 日以降 

リグニンの溶媒中での熱分解支援接触水素化分解による芳香族モノマー生産

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リグニンの溶媒中での熱分解支援接触水素化分解による芳香族モノマー生産

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