京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第24796号医博第4988号新制||医||1066(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 竹内 理, 教授 上野 英樹, 教授 椛島 健治学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Sakamoto, Yusuke

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Differential involvement of LUBAC-mediated linearubiquitination in intestinal epithelial cells andmacrophages during intestinal inflammation( Abstract_要旨 )Sakamoto, YusukeSakamoto, Yusuke. Differential involvement of LUBAC-mediated linear ubiquitination in intestinal epithelial cells andmacrophages during intestinal inflammation. 京都大学, 2023, 博士(医学)2023-05-23https://doi.org/10.14989/doctor.k24796                                                                                             要 旨 公 開 可 能 日 ：       年    月    日  以 降  京都大学 博士（医学） 氏名 阪本 裕亮 論文題目 Differential involvement of LUBAC-mediated linear ubiquitination in intestinal epithelial cells and macrophages during intestinal inflammation （LUBACが生成する直鎖状ユビキチン鎖の腸管上皮細胞およびマクロファージにおける細胞特異的な腸炎への寄与機構） （論文内容の要旨）  炎症性腸疾患（IBD）は世界的に広く見られる難治性疾患であり、その病因として腸管上皮細胞のバリア機能の破綻やマクロファージの機能異常が近年着目されている。 LUBAC はユビキチンリガーゼ複合体であり、直鎖状ユビキチン鎖を生成することでNF-κB 活性化や細胞死抑制に働くことが知られている。直鎖状ユビキチン鎖によって制御される NF-κB と細胞死は、腸管上皮のバリア機能の維持やマクロファージによる炎症反応誘発に寄与することが知られているが、直鎖状ユビキチン鎖の腸炎における生理学的機能は不明であった。そこで、本研究では腸管上皮細胞およびマクロファージにおける直鎖状ユビキチン鎖の腸炎への細胞特異的な関与を解析した。  LUBACのサブユニットの1つであるHOIPに存在する直鎖状ユビキチン鎖生成の活性中心を腸管上皮細胞あるいはマクロファージ特異的に欠失したマウスを作出したが、いずれのマウスにおいても定常状態の腸管では明らかな表現型を認めなかった。そこで、これらのマウスに、Toll 様受容体（TLR）4のリガンドであるLipopolysaccharide (LPS) の腹腔内投与により小腸上皮に細胞死を誘発する LPS 誘導性腸管上皮細胞死モデルと、腸管上皮を直接障害することで炎症を誘発するデキストラン硫酸ナトリウム (DSS) 誘導性腸炎モデルを適用した。  腸管上皮特異的に直鎖状ユビキチン鎖生成能を欠失したマウスに対して LPS を投与したところ、大腸炎と腸管上皮の細胞死亢進を認めた。また、直鎖状ユビキチン鎖生成能を欠失した腸管上皮由来の腸管オルガノイドを用いた解析で、LPS ではなく、LPSにより発現誘導されるTNF によりアポトーシスが亢進したことなどから、腸管上皮細胞での直鎖状ユビキチン鎖は、炎症環境で誘導される TNF 依存性のアポトーシスを抑制し腸管上皮のインテグリティーを維持することで、腸炎を抑制することを見出した。一方で、腸管上皮特異的に直鎖状ユビキチン鎖生成能を欠失したマウスは腸管上皮の細胞死感受性が亢進しているにもかかわらず、DSS 誘導性腸炎モデルでは野生型マウスと比べて大腸炎の程度に差は認めなかった。  次に、腸管上皮障害後に腸管免疫の中心的な役割を果たすマクロファージに着目し、マクロファージ特異的に直鎖状ユビキチン鎖生成能を欠失したマウスに DSS を投与したところ、野生型マウスと比べ､マクロファージの浸潤量が減少し大腸炎が軽減した。 骨髄由来マクロファージを用いて LPS 依存的なシグナル活性化を解析したところ、直鎖状ユビキチン鎖生成能の欠失によってNF-κBとERK経路の活性化の減弱と、その下流の TNF と IL-6、および単球遊走因子であるMCP-1 の産生量低下を認めた。これらの結果から、マクロファージにおける直鎖状ユビキチン鎖は、TLR刺激依存的に誘導されるNF-κBとERK経路の活性化を介して炎症性サイトカインの産生を制御し、腸管上皮障害時の腸炎を増悪させることを見出した。  以上より本研究は、腸管上皮細胞とマクロファージにおいて直鎖状ユビキチン鎖は細胞特異的に腸炎を制御していることを明らかにした。また、汎用される DSS 誘導性腸炎モデルのみでは腸炎の惹起に関わる腸管上皮のインテグリティーを十分には検出できない可能性があり、LPS誘導性腸管上皮細胞死モデルとの併用が腸炎研究において有用であることが示唆された。これらのことから本研究は、IBDの病態解明の一助となる可能性があり、医学的にも非常に意義深い研究成果である。  （論文審査の結果の要旨）  炎 症 性 腸 疾 患 は 難 治 性 疾 患 で あ り 、 病 因 と し て 腸管上皮細胞とマクロファージの機能異常が着目されている。LUBAC が生成する直鎖状ユビキチン鎖はNF-κBと細胞死を制御することが知られているが、腸炎における腸管上皮細胞とマクロファージでの直鎖状ユビキチン鎖の役割は不明であった。  本研究では、腸管上皮あるいはマクロファージ特異的に直鎖状ユビキチン鎖生成能を欠失したマウスを作出し、これらのマウスにLipopolysaccharide（LPS）誘導性腸管上皮細胞死モデルとデキストラン硫酸ナトリウム（DSS）誘導性腸炎モデルを適用することで、各細胞における直鎖状ユビキチン鎖の腸炎への関与を解明した。  LPS モデルの解析により、腸管上皮細胞での直鎖状ユビキチン鎖は、LPS が発現誘導する TNF 依存性にアポトーシスを抑制し腸管上皮のインテグリティーを維持することで、腸炎を抑制することを見出した。一方で、DSSモデルの解析から、マクロファージにおける直鎖状ユビキチン鎖は、Toll様受容体の下流でNF-κBとERK経路の活性化、また炎症性サイトカインの産生を促進することで、腸炎を増悪させることを明らかにした。  以上の研究は、炎症性腸疾患の病因究明における2つの腸炎モデルの異なる有用性を示すとともに、直鎖状ユビキチン鎖の腸炎における細胞特異的な機能を解明し、炎症性腸疾患の病態解明に寄与するところが多い。   したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、本学位授与申請者は、令和 5 年 3 月 24 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 

LUBACが生成する直鎖状ユビキチン鎖の腸管上皮細胞およびマクロファージにおける細胞特異的な腸炎への寄与機構

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/284092/2/yigak04988.pdf

LUBACが生成する直鎖状ユビキチン鎖の腸管上皮細胞およびマクロファージにおける細胞特異的な腸炎への寄与機構

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