京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第24804号医博第4996号新制||医||1067(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 武藤 学, 教授 藤田 恭之, 教授 川口 義弥学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Matsubara, Hiroyuki

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Efficacious Combination Drug Treatment forColorectal Cancer that OvercomesResistance to KRAS G12C Inhibitors(Abstract_要旨 )Matsubara, HiroyukiMatsubara, Hiroyuki. Efficacious Combination Drug Treatment for Colorectal Cancer that Overcomes Resistance toKRAS G12C Inhibitors. 京都大学, 2023, 博士(医学)2023-05-23https://doi.org/10.14989/doctor.k24804許諾条件により本文は2024-02-10に公開京都大学 博士（医学） 氏 名 松 原 弘 侑 論文題目  KRAS G12C阻害薬耐性の大腸癌に対する有効な併用療法の開発  （論文内容の要旨） KRAS遺伝子の活性化変異は、膵臓がん、大腸がん、肺がんなどの致死的ながんの主要な原因となっている。KRAS の活性を直接阻害することは長年研究されてきたが、KRAS変異体はGTPへの親和性が高く、アクセス可能な薬物結合部位がないため、創薬不可能と考えられてきた。しかし、近年の創薬技術の進歩により KRAS G12C 変異タンパク質に限り、それを標的とした阻害薬が開発された。  いくつかのKRAS G12C 阻害薬は臨床試験が行われており、sotorasibやadagrasibなどのKRAS G12C阻害薬は臨床試験においてKRAS G12C変異を有する肺がん患者に対して有望な抗腫瘍活性を示された。しかし、大腸がんにおいてはその単独療法の有効性は限定的であることがわかっている。したがって、KRAS G12C阻害薬治療の恩恵を十分に受けるために、該当する大腸がん患者に対して有効な併用療法を探索する意義がある。  本研究では、患者由来の大腸がん幹細胞スフェロイド培養を用いて、KRAS G12C変異大腸がん細胞の増殖抑制に関わる有効な薬剤の組み合わせと増殖シグナルの探索を行った。KRAS G12C阻害薬単独では、in vitroでのがん幹細胞の増殖抑制効果はいずれも限定的であった。これらの結果から、併用療法によってより効率的に腫瘍増殖を抑制できる薬剤を探索することにした。     KRAS G12C 変異大腸がん細胞において、sotorasib 投与後にEGFR 及びFGFR の活性化を認めた。したがって、RAS 変異型および野生型蛋白の両方を介したシグナル伝達を阻害することにより、KRAS G12C変異大腸がん細胞の増殖を効率的に抑制するのではないかと推測された。予想通り、KRAS G12C、EGFR およびFGFR に対する阻害剤の3剤併用療法による腫瘍の増殖抑制は、スフェロイドだけでなく in vivo マウスモデル（PDSX, patient derived spheroid xenograft）においても認められた。ウエスタンブロッティング解析を行ったところ、併用療法は一貫してそれらの単独療法よりも強力にRAS-GTPおよびMEK/ERKタンパクのリン酸化レベルを低下させていた。  SHP2 は主に RAS-ERK シグナル伝達経路の活性化を通じて、細胞の生存と増殖を制御しているため、SHP2阻害薬はEGFR阻害薬とFGFR阻害薬の併用療法に代わる有効な選択肢のひとつになる可能性があると考えられる。SHP2 阻害薬 RMC4550 とsotorasibとの併用は大腸がんの腫瘍増殖抑制に有効であった。  PI3K/AKT経路の強力な活性化因子であるheregulinは、 KRAS G12C変異大腸がん細胞に対する sotorasib の治療効果を減弱させた。sotorasib、RMC4550、PI3K 阻害薬alpelisibの併用は、heregulin存在下で大腸がん幹細胞スフェロイドの増殖を効果的に抑制するので、PI3K阻害薬の選択がG12C変異大腸がんに対する併用療法において有効である可能性が示唆された。  本研究は患者由来の大腸がん幹細胞スフェロイドを用いて、KRAS G12C阻害薬に対する耐性メカニズムの一端を解明し有効な併用療法を提示した初めての論文である。患者由来の大腸がん幹細胞スフェロイドを用いた薬剤感受性試験は、大腸がんの個別化治療に有効な薬剤の組み合わせを探索する際に有用であると考えられる。    （論文審査の結果の要旨） KRAS 遺伝子の活性化変異は致死的な癌の主要な原因となっている。近年の創薬技術の進歩によりKRAS G12C 変異タンパク質を標的とした阻害薬が開発されたが、大腸癌においてはその単独療法の有効性は限定的であることがわかっている。したがって、大腸癌患者におけるKRAS G12C 阻害薬に対する耐性メカニズムを解明し有効な治療法を探索する意義がある。 申請者は、KRAS G12C 変異を有する患者由来大腸癌幹細胞スフェロイドを用いて、KRAS G12C 阻害薬の単独治療後ではEGFR 及び FGFR の活性は抑制されず、AKT のリン酸化は維持されていることを見出した。さらに、KRAS G12C、EGFR および FGFR それぞれに対する阻害薬の 3 薬併用療法は大腸癌細胞の増殖を効果的に抑制することを示した。同様に、KRAS G12C と SHP2 阻害薬の併用も有効であることを示した。また、PI3K/AKT 経路の活性化はKRAS G12C 阻害薬の効果を減弱させ、それはPI3K 阻害薬を組み合わせることで克服可能であること示した。  以上の研究は、大腸癌のKRAS G12C 阻害薬に対する耐性メカニズムの一端を解明し、KRAS G12C 阻害薬とEGFR 阻害薬、FGFR 阻害薬の 3 薬併用療法や、KRAS G12C阻害薬とSHP2阻害薬またはPI3K阻害薬の併用による新規治療の開発に貢献すると考えられる。   したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、本学位授与申請者は、令和 ５ 年 ４ 月 ２４ 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

KRAS G12C阻害薬耐性の大腸癌に対する有効な併用療法の開発

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/284100/2/yigak04996.pdf

KRAS G12C阻害薬耐性の大腸癌に対する有効な併用療法の開発

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