Buuvei Mainbayar

Byasgaa Ganzorig

Khishigjav Tsogtbaatar

Shinobu Ishigaki

イシガキ シノブ

石垣 忍

石垣, 忍

イシガキ, シノブ

Ishigaki, Shinobu

Ganzorig, Byasgaa

AROUS Academic Repository of Okayama University of Science / 岡山理科大学学術リポジトリ

47  モンゴル国ゴビ砂漠中央部Khongil (in Arts Bogd Mountain)地域の 上部白亜系より新たに発見された恐竜足跡化石産地について（概報）   石垣忍･Buuvei MAINBAYAR＊･Byasgaa GANZORIG＊･Khishigjav TSOGTBAATAR                               岡山理科大学古生物学年代学研究センター，恐竜学博物館                             *モンゴル科学アカデミー古生物学研究所                              １．はじめに モンゴル国ゴビ砂漠中央部Khongil (in Arts Bogd Moun-tain)地域はジャドフタ層と推定される赤色砂泥互層からなる上部白亜系が分布し，アンキロサウルス類，ハドロサウルス類をはじめとする多様な恐竜の体化石を産出する（e.g. Watabe et al., 2010）．しかし，足跡化石は林原自然科学博物館―モンゴル科学アカデミー古生物学研究所共同調査隊（以下HMNS-IPと略）の1998年と2000年の調査で，鳥脚類と四足歩行恐竜の保存状態不良な足跡化石がそれぞれ，3個，12個発見されているだけで詳しい調査はなされなかった（Ishigaki, 2009）．2015年8月，岡山理科大学ーモンゴル共同調査隊（（以下OUS-IPと略）によってこの地域の概査を行った際に，竜脚類と鳥脚類の足跡化石が大量に産出する可能性が示唆された (Saneyoshi et al., 2015)．2015年の調査で示された可能性を探るために2022年6月にOUS-IPが足跡化石の詳細な調査を行った．またKhongil の東方に二か所，西方に一か所，足跡化石（凸型足印）の新産地を発見した． 本論文ではこれら2022年の足跡化石調査の概報を行う．  ２．研究材料と方法 記録はそれぞれの行跡および単体の足印について，①ハンドスケッチとメジャーによる計測，②地上約2.5ｍからの移動連続撮影によるデジタル写真記録（Fig.1），③iPad Pro のLiDAR スキャン機能を使った3ＤScanner App による三次元画像データの取得の三つの記録を行った．  ３．結果 Khongil の中央部のMain Sayr 周辺と西部地域，および新たに発見された周辺の3つの新産地，Gun Sukhait (Khongil 西方 ), Chavgants Tolgoi (Khongil 東方 ),  Ulaan Chonj  (Chavgants Tolgoiよりさらに東方)において，多数の凸型足印群（印跡動物による印跡後に足跡のくぼみを充填した砂が固化し周囲の泥質堆積物が削剝を受けても浸食に耐えて残ったもの）が発見された．印跡面は赤色の泥質極細粒砂岩～泥岩である．凸型足印は，原足印のくぼみを粗粒～極粗粒砂が充填後に硬化して風化にも耐えて足印ブロ Fig.1: Khongil Mayn Sayrにおける竜脚類足印化石の産状．上部にある砂岩層には深さ20‐50cmの竜脚類足印が密集して印跡されている．風化とともにそれらは崩壊分離し，個々の足跡化石が斜面を転がり落ちるという産状を呈する．手前斜面の転石の多くは分離し破壊された足印化石．  Fig.2: 竜脚類の大型後足印の例． I-IVの四趾の跡が確認できる．こうした足印が転石として産する． II I III IV 48   Fig.3: 竜脚類前足印の例（分離して転石として産出したもの）．スケールは10cm．周縁部はなめらかである．第I趾の爪の突出のような，趾，爪の跡は見られない．  ックとして産出する．印跡を受けた泥質細粒砂岩層を覆って堆積した粗粒砂岩層は，風化に耐えてキャップロックとして分布するほか，崖の斜面から突出することが多い．こうした突出した砂岩層から多くの足印化石が産出する．印跡動物の種類は，竜脚類，鳥脚類，獣脚類，アンキロサウルス類である． 竜脚類足印化石は最も多く発見される．後足の足印長 Fig.4：竜脚類の行跡の例①．P:後足印，M:前足印 白い矢印：印跡動物の歩行方向．後足印長75cm． 70cm前後のものが最も多いが，最小は30cm台から最大は90cmにおよぶ．前足印・後足印が合わせて全体で約800個が発見された．保存状態がよいものは，足印壁に擦過痕が Fig.5：竜脚類の行跡の例②．P:後足印，M:前足印 白い矢印：印跡動物の歩行方向．後足印の足印長は最大90cm． Fig.6a（左）, Fig.6b（右）： 小型の竜脚類の後足印のみからなる行跡．左右とも足跡の形状と大きさはほぼ同じだが，歩様を示すGaugeが大きく異なる．  P M P P M M P M P M P M P 49  Fig.7:竜脚類足印の足印壁に見られる擦過痕．スケールバーは10cm．  見られる． 竜脚類の行跡は6本が発見され，そのうち4本は同じ地層面上にあり，前足印を伴うとともに保存状態が良好であった．(Fig.4,5)  モンゴル国で，保存状態が良好で形状の観察が可能な前足印を伴う竜脚類の行跡の発見はこれが初めてである． また至近距離で発見された2本の小型竜脚類の行跡ではそれぞれの後足印の形状と大きさがほぼ同じにもかかわらず，GaugeがNarrow とWideであった．ほぼ同じ場所で産したほぼ同じ大きさの足印を有する２本の行跡が，それぞれの印跡動物の異なる歩様を示唆することの原因については問題を提起する．つまり同種内の個体変異なのかそれとも別種なのかという問題である（Fig.6a，6b）． 鳥脚類の単体凸型足印は約100個発見された．大きさは足印長20～30cm程度のものが最も多く最小で約15cm，最   Fig.8:鳥脚類足印の例． 大で約45cmである．Bugin Tsavuya や Gurilin Tsavなどのネメグト層から発見される足印長70～100cmのような大型の鳥脚類足跡化石は見られない．行跡としての確認はないが，数10個の小型足印がほぼランダムの進行方向を示す状態で密集した産出状態が見られた． Fig.9a(左) Fig.9b（右）:獣脚類足印の例．  獣脚類と考えられる足跡化石（凸型足印）は約30個発見された．足印長20cm前後のものが多く見られ（Fig.9a,b），大型のものは発見できなかった．行跡としての発見はない． アンキロサウルス類による印跡と考えられる凸型足印は単体で約50個発見された．いずれも後足印であるが，前足印の上を後足印がオーバーラップして印跡されたと考えられる足印が1個発見された．行跡としての発見はない． Fig.10:アンキロサウルス類の印跡と考えられる足印．四本の指の跡が残されている．  ４．考察  Khongil 地域はArts Bogd山の南麓に位置する．この山の南東から南麓地域はTugrikin ShireやAlag Teg，Udy Sayr, Dzamin Khondなどの化石産地が点在する．また,北東部にはAbdrant Nuruの産地が存在する．これらの化石産地はジャドフタ層が分布するとされており，Khongilの地層も位置的な関係からジャドフタ層と考えられている（Watabe et al., II I 50  2010）．ジャドフタ層は竜脚類化石の産出が大変少なく，それは乾燥気候ゆえに低栄養で大型の動物を支えるだけの食物生産量がなかったと推定され，それが小型恐竜が多産することと関連付けられていた． しかし2020年にAverianov et al.,（2020）によって大型竜脚類骨格の産出が報じられた．それに加えて，今回の大型竜脚類の足跡化石が多数発見されたことは，ジャドフタ層の堆積環境や古気候復元に関して見直しを迫るものである． また，白亜紀末は大型の竜脚類は衰退期とみられ，世界的にこの時期の竜脚類足跡化石の産出が少ないが，今回の発見は，白亜紀末のモンゴルがこうした巨大恐竜が多数生き延びていた場所であることを示すとともに，彼らの運動・姿勢・社会などの生態を解明する手がかりとなる．  ５．引用文献 Averianov A. O.and Lopatin A. V. (2020) An unusual new sauropod dinosaur from the Late Cretaceous of Mongolia, Journal of Systematic Palaeontology． http://dx.doi.org/10.1080/14772019.2020.1716402 Ishigaki, S., Watabe, M., Tsogtbaatar, Kh. and Saneyoshi, M., 2009. Dinosaur footprints from the Upper Cretaceous of Mongolia. Geological Quarterly 53 (4): 449–460. Saneyoshi, M., Ishigaki S., Tsogtbaatar K., Mainbayar B., Ul-zitseren S., Aoki K., Bayardorj C., Otgonbat B., Amarbayasglan K., Asai H., Tanabe T. Bull. Res. Inst. Nat. Sci., Okayama Univ. Sci. 41, 35-44 Watabe, M., Tsogtbaatar, Kh., Suzuki, S. and Saneyoshi, M., 2010. Geology of dinosaur-fossil-bearing localities (Jurassic and Cretaceous: Mesozoic) in the Gobi Desert; Results of the HMNS-MPC Joint Paleontological Expedition. Hayash-ibara Museum of Natural Sciences Research Bulletin 3: 41–118. 

モンゴルコク ゴビ サバク チュウオウブ Khongil in Arts Bogd Mountain チイキ ノ ジョウブ ハクアケイ ヨリ アラタニ ハッケン サレタ キョウリュウ ソクセキ カセキ サンチ ニツイテ ガイホウ

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モンゴルコクゴビサバクチュウオウブ Khongil in Arts Bogd Mountain チイキノジョウブハクアケイヨリアラタニハッケンサレタキョウリュウソクセキカセキサンチニツイテガイホウ

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