Akio Takahashi

Byambaa Purevsren

Khishigjav  Tsogtbaatar

Masanori Shimada

Mototaka Saneyoshi

Shinobu Ishigaki

イシガキ シノブ

サネヨシ モトタカ

シマダ マサノリ

タカハシ アキオ

実吉 玄貴

島田 将徳

石垣 忍

髙橋 亮雄

島田, 将徳

シマダ, マサノリ

Shimada, Masanori

髙橋, 亮雄

タカハシ, アキオ

Takahashi, Akio

実吉, 玄貴

サネヨシ, モトタカ

Saneyoshi, Mototaka

石垣, 忍

イシガキ, シノブ

Ishigaki, Shinobu

Khishigjav Tsogtbaatar

AROUS Academic Repository of Okayama University of Science / 岡山理科大学学術リポジトリ

54  ネメグト層産の基盤的カメ類モンゴロケリスの形態学的再検討   島田 将徳・髙橋 亮雄＊・Byambaa Purevsren＊＊・実吉 玄貴＊・ 石垣 忍＊＊＊・Khishigjav Tsogtbaatar＊＊                               岡山理科大学大学院生物地球科学研究科 *岡山理科大学生物地球学部生物地球学科                            **モンゴル科学アカデミー古生物学研究所                           ***岡山理科大学古生物学・年代学研究センター   １．はじめに モンゴロケリス（Mongolochelys efremovi）は，モンゴル国ゴビ砂漠の南部に分布するネメグト層より多産するモノタイプの化石カメ類としてよく知られている（e.g., Su-khanov, 2000）．本種の化石のうち，頭蓋や下顎，甲羅などは，ほぼ完全な状態で保存されているものも少なくない．こうした化石にみられる形態形質にもとづく分岐分類学的研究から，モンゴロケリスはかつて基盤的な潜頚亜目Cryptodiraの一種とされてきた（Hirayama et al., 2000）．ところが，近年の網羅的な再解析の結果により，本種は一般に認識されている“カメ”（＝カメ目：Testudines）には含まれず，無階級体系におけるクレードTestudinataのステム群Perichelydiaの構成要素のひとつであるシチュアンケリス科（Sichuanchelyidae）の一系統と考えられている（Joyce et al., 2021）．しかしながら，モンゴロケリスの頭蓋内部の形態データに関する知見が乏しいため（Khosatzky, 1997；Sukhanov, 2000)，シチュアンケリス科における本種と近縁種との関係は明らかとなっていない（Anquetin, 2012；Joyce, 2016）．さらに，本種の化石は豊富に発見されているにもかかわらず，形態形質の変異に関する評価も適切に行われていない（e.g, Suzuki and Chinzorig, 2010）．そこで，本研究では，モンゴロケリスのタイプ標本と本種に参照されている頭蓋化石について比較を行い，頭蓋内部の形質や基本的な形態の情報の充実を試みた．  ２．研究材料と方法 本研究では，モンゴル国ゴビ砂漠ブギンツァフ・グリリンツァフより発見されたモンゴロケリスの頭蓋５点（MPC 25/105，MPC 25/110，MPC25/115，MPC25/127，MPC/178）について，直接観察に基づく形態データの抽出を行い，さらに文献情報にもとづきタイプ標本（ネメグト産；PIN 551-459）と比較した．５点の頭蓋化石はすべてモンゴル科学アカデミー古生物学研究所に保存されている．   ３．結果 本研究により，これまで不明であったモンゴロケリスにおける底蝶形骨の吻部の形状が確認できた．底蝶形骨の吻部には，平らな形状と棒状の形状の２種類の形質があり，モンゴロケリスの底蝶形骨の吻部は棒状の形状を示していた．また，Suzuki and Chinzorig（2010）によるMPC25/105の線画で示された頬骨が方形骨と接触しない状態について，実際に化石を観察し確認を行った．ホロタイプの頭蓋では，頬骨は方形骨と縫合関係で接触しており，この形質はシチュアンケリス科の共有派生形質のひとつとされている．このため，Suzuki and Chinzorig（2010）の線画が正しければ，ブギンツァフ産の標本はモンゴロケリスとは異なるばかりか，シチュアンケリス科にさえ帰属しないこととなる．標本を直接観察した結果，Suzuki and Chinzorig（2010）によるMPC25/105の線画にはクラックと縫合線の識別に誤解があり，実際には当該標本の頬骨は方形骨と縫合関係で接触していることが確認された（図１）．さらに，ホロタイプとそのほかの５つの標本の間で，頭蓋の鱗板や頭蓋後部，眼窩の形状などが異なっていた．加えて，頭蓋後縁のフリルの形状においては，化石の産地にかかわらず，個体ごとに著しい変異が見られた．  ４．考察  モンゴロケリスの頭蓋に関する検討の結果，本種の底蝶A B 図１．ブギンツァフ産のモンゴロケリスの頭蓋MPC25/105（左側面観）の線画．A：Suzuki and Chinzorig（2010）による線画，B：本研究における再検討の結果描かれた線画．ju, 頬骨；qj, 方形頬骨；qu，方形骨． 55  形骨は棒状の吻部を持つことが確認された．この形質はシチュアンケリス科では知られていないばかりか，カメ類のなかでもウミガメ上科のみが保有する形質とされている（Joyce, 2007）．今後，本形質に関する情報をデータマトリクスに加えて系統解析を行うことにより，モンゴロケリスと近縁種の系統仮説に関する新たな知見がもたらされるかもしれない． また，ネメグト産のホロタイプとブギンツァフ産およびグリリンツァフ産の５標本の間で確認された形態的差異は，モンゴロケリスが２つの地域集団を含んでいることを示唆している．頭蓋のフリルに認められた多型は，雌雄差や成長段階における変異によるものと考えられる．  ５．引用文献 Anquetin J. (2012) Reassessment of the phylogenetic interrelationships of basal turtles (Testudinata). Journal of Systematic Palaeontology 10: 3–45. Hirayama R., D. B. Brinkman, and I. G. Danilov. (2000) Distribution and biogeography of non-marine Cretaceous turtles. Russian Journal of Herpetology 7: 181–198. Ishigaki S., Kh. Tsogtbaatar, B. Mainbayar, A. Takahashi, B. Buyantegsh, P. Byambaa, B. Ganzorig, B. Bilguubold, E. Ochirjantsan, T. Hatakeyama, M. Saneyoshi, R. Takasaki, and K. Chiba. (2022) Report of Okayama University of Science – Institute of Paleontology, Mongolian Academy of Sciences Joint Expeditions in 2022. Bulletin of Research Institute of Frontier Science and Technology 4: 1–4. Joyce W. G. (2007) Phylogenetic relationship of Mesozzoic turtles. Bulletin of the Peabody Museum of Natural History 48: 3–102. Joyce W. G., M. Rabi, J. M. Clark, and X. Xu. (2016) A toothed turtle from the Late Jurassic of China and the global biogeographic history of turtles. BMC Evolutionary Biology 16: 236. Joyce W. G., J. Anquetin, E-A. Cadena, J. Claude, I. G. Danilov, S. W. Evers, G. S. Ferreira, A. D. Gentry, G. L. Georgalis, T. R. Lyson, A. Pérez-García, M. Rabi, J. Sterli, N. S. Vitek, and J. F. Parham. (2021) A nomenclature for fossil and living turtles using phylogenetically defined clade names. Swiss Journal of Palaeontology 140: 5. Khosatzky L. I. (1997) Big turtle of the Late Cretaceous of Mongolia. Russian Journal of Herpetology 4: 148–154. Sukhanov V. B. (2000) Mesozoic turtles of middle and central Asia. In: Benton M. J., Shishkin M. A., Unwin D. M., and Kurochkin E. N. (eds.), pp.309–367, The age of Dinosaurs in Russia and Mongolia. Cambridge University Press. Suzuki S. and T. Chinzorig. (2010) A catalog of Mongolochelys collected by the HMNS-MPC Joint Paleontological Expedition. Hayashibara Museum of Natural Sciences Research Bulletin 3: 119–131. 

ネメグトソウサン ノ キバンテキ カメルイ モンゴロケリス ノ ケイタイガクテキ サイケントウ

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ネメグトソウサンノキバンテキカメルイモンゴロケリスノケイタイガクテキサイケントウ

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