KOBAYASHI, Keiko

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Okayama University Scientific Achievement Repository

氏    名 小林 慧子 授与した学位 博 士 専攻分野の名称 工 学 学位授与番号 博甲第 ６８５８ 号 学位授与の日付 ２０２３年 ３月 ２４日 学位授与の要件 環境生命科学研究科 環境科学専攻  （学位規則第４条第１項該当） 学位論文の題目 Effect of Entanglement between Cyclic and Linear Polymer on Crystallization under Quiescent and Flow Field （環状と直鎖状高分子の絡み合いが静置場および流動場結晶化に及ぼす影響） 論文審査委員 教授 木村 幸敬  教授 木村 邦生  准教授 山崎 慎一  講師 田嶋 智之 学位論文内容の要旨 現在高分子は多種多様な材料が存在し、より高性能・高機能な材料が求められている。さらに近年深刻化する環境問題においても、大量に生産・消費されている高分子材料が与える影響は大きく、地球環境に対して更なる配慮が求められている。高性能・高機能な高分子材料を創製するためには、その物性に大きく影響を及ぼす分子鎖の絡み合い状態ならびにそれに伴う結晶化挙動の変化に対する理解が重要である。そこで本論文では、環状および直鎖状高分子を混合することによって形成されたそれぞれの単体とは異なる新奇の絡み合いが、静置場および流動場結晶化に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 第一章では、環状および直鎖状高分子ブレンドの静置場結晶化挙動について研究した。その結果、ブレンド組成を幅広く変化させたとき、50%結晶化完了時間を表す半結晶化時間が、両者の等量ブレンドにおいて極大を示すことがわかった。環状および直鎖状高分子が解消しにくい新奇な絡み合いを形成するため、静置場等温結晶化に大きな影響を与えたと推察された。 第二章では、環状および直鎖状高分子単体の流動場結晶化挙動について研究した。その結果、環状高分子は直鎖状高分子よりも流動場で生成する繊維状結晶（シシ）が形成しにくいことがわかった。これは、流動場結晶化では分子鎖の絡み合いを起点としてシシが生成するため、環状高分子は直鎖状高分子よりも解消しやすい絡み合いを形成するためであると考えられた。さらに、環状高分子に少量の直鎖状高分子を添加すると、シシ生成が大幅に促進されることもわかった。 第三章では、第二章にて実施した研究の発展として、環状および直鎖状高分子のそれぞれの分子量を変化させた系での流動場結晶化を研究した。その結果、単体でシシを生成できる分子量を持つ環状高分子に高分子量または低分子量の直鎖状高分子をブレンドすると、直鎖状高分子添加量の増大に伴い、シシ生成速度に極大値が表れることがわかった。このシシ生成速度が極大値を示す直鎖状高分子添加量は、環状高分子の分子量に依存することがわかった。環状と直鎖状高分子が形成する新奇な絡み合いが、流動場結晶化挙動に大きな役割を担うことが推察された。 以上より、環状や直鎖状高分子の分子量や添加量によって分子鎖絡み合いの状態を変化させ、静置場および流動場結晶化挙動を制御できる可能性が見いだされ、結晶高次構造制御のための重要な研究結果の一つとなることができた。 論文審査結果の要旨 現在、高分子は多種多様な材料が存在し、より高性能・高機能な材料が求められている。高性能・高機能な高分子材料を創製するためには、その物性に大きく影響を及ぼす分子鎖の絡み合い状態ならびにそれに伴う結晶化挙動の変化に対する理解が重要であるが、不明な点も数多く残っているのが実状である。そこで本論文では、環状および直鎖状高分子を混合することによって絡み合い状態を変化させ、それが静置場および流動場結晶化に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本論文は 3 章で構成されている。第 1 章では、環状ポリエチレン(C-PE)および直鎖状ポリエチレン(L-PE)ブレンドの静置場結晶化挙動について検討している。その結果、ブレンド組成を幅広く変化させたとき、50%結晶化完了時間を表す半結晶化時間の逆数が、両者の等量ブレンドにおいて極小を示すこと明らかにしている。C-PE と L-PE 間で解消しにくい新奇な絡み合いを形成するため、それが静置場等温結晶化に大きな影響を与えると結論している。第 2 章では、C-PE および L-PE 単体の流動場結晶化挙動について検討している。その結果、C-PE は L-PE よりも流動場で生成する shish 状繊維状結晶が生成しにくいことを見出している。これは、流動場結晶化では絡み合いを起点として配向融液が形成し、shish 状繊維状結晶が生成するため、C-PE は L-PE よりも解消しやすい絡み合いしか持たないためであると推論している。さらに、C-PE に少量の L-PE を添加すると、shish 状繊維状結晶の生成が大幅に促進されることも見出している。第 3 章では、第 2 章にて実施した研究を発展させ、C-PE および L-PE のそれぞれの分子量を変化させた系の流動場結晶化を検討している。その結果、単体で shish 状繊維状結晶を生成できる分子量を持つ C-PE に高分子量または低分子量の L-PE をブレンドすると、L-PE添加量の増大に伴い、shish 状繊維状結晶生成速度に極大値が表れることがわかった。生成速度に極大値が表れるのは、配向融液形成の促進と結晶化の抑制の相反する二つの効果の競合であると結論している。 以上より、環状や直鎖状高分子の分子量や添加量によって絡み合いの状態を変化させ、静置場および流動場結晶化挙動を制御できる可能性を見出し、絡み合いという重要でありながらこれまで十分議論されてこなかった概念によって高分子結晶化を理解するための重要な知見を提示するものである。よって、学位に十分値すると判断できる。  

環状と直鎖状高分子の絡み合いが静置場および流動場結晶化に及ぼす影響

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