渡邊 聡子

高知県立大学看護学部research repor

渡邊, 聡子

University of Kochi Repository for Academic Resources / 高知県立大学学術情報リポジトリ

研究実施責任者 プロジェクト名 期間 配分額(円) 看護学部・教授 渡邊 聡子 新型コロナウイルス禍における人々の 健康維持に向けたケア方略 R2-R3 1,925,000 研 究 概 要  2019年 12月下旬から流行が始まった新型コロナウイルス（COVID-19）について、現時点では感染を遮断し合併症等を予防するために、マスクの着用などの公衆衛生戦略がとられているが、人から人への見えない感染が今後も長く続くことが考えられる。  COVID-19は新しい疾患であり情報は限られているが、高齢者・糖尿病や高血圧などの基礎疾患を有する人などは、重症化のリスクが高いとして認識されている。また、医療体制の危機的状況により、治療や手術を延期するなどの影響や、リプロダクティブ・ヘルスの領域では、妊娠初期の感染が胎児にどのような影響をもたらすかについては現時点では不明で、分娩方法・場所にも影響が及んでいる。感染拡大を抑えるために人の移動を物理的に制限することは結果的に経済問題につながり、就労や暮らし・家族の問題など課題が複合し深刻化する可能性がある。また移動制限による社会的孤立・社会的距離が、不安・抑うつ・ストレスなどの否定的な感情を増加させることから、メンタルヘルスへの影響を緩和させる戦略の必要性が言われている。さらに、感染拡大を予防するために、新しい生活様式への移行が余儀なくされ、この影響が健康観を含む人々の意識や価値観に変化をもたらすことも考えられる。  そこで、本事業では、新型コロナウイルス禍における人々の生活・健康状況やニーズ等に関して情報を収集し、ヘルスケアに関するニーズならびに問題点を明らかにすることを目的とする。  研 究 成 果 概 要 対象者は、A県内在住の高齢者・外来通院患者・在宅療養者・妊婦・聴覚障がい者・在日外国人であった。データ収集は 2020年 12月～2021年 10月に、無記名自記式質問紙調査を行った。質問項目は、①属性、②感染予防および健康行動（13 項目）、③知識と情報（6 項目）、④健康状態および生活の変化（36項目）、⑤健康への影響の受けやすさ（4項目）、⑥心の状態（40項目）であった。⑤については新版 STAI（肥田野ら）を、許諾を得て使用した。質問紙は郵送にて回収した。本事業は、高知県立大学研究倫理委員会の承認を得て実施した（承認番号：看研倫 20-30）。 回収した質問紙は 388 部（52.2％）であり、有効回答率は 83.8％であった。対象者は、女性が 79.4％であり、70歳以上が 52.7％を占めていた。有病者は全体の 60.0％、妊婦が 24.3％、在日外国人が 2.2％、聴覚障がい者が 0.9％であった。感染予防行動について、「手洗い」「咳エチケット」「マスク着用」「体調不良時の休息」は 88.0％～95.4％が「常に」行っていたが、「換気」「混雑回避」「接触回避」は 63.7～72.9％、「目・鼻・口に触れない」は 39.4％と低くかった。 研 究 成 果 概 要 コロナ禍以前に比べ増加した健康行動は「休息」33.0％、「こころの健康への気配り」31.4％、「栄養」30.1％、「睡眠」24.3％、「運動」23.4％であった。一方、減少した健康行動は「運動」が 23.4％で、特に「20歳代」「30歳代」「疾患無」にその傾向があった。新型コロナウイルスに関する知識について、「よく知っている」と「まあ知っている」を合わせて 85.2％であった。主な情報源は、20歳代がインターネット（83.3％）、その他の年代がテレビ（84.0～92.6％）であった。情報過多による迷いが「ある」と回答した人は 50.5％であり、「20歳代」「30歳代」「80歳以上」が 5割を超えていた。外来通院患者のうち、「これまで通りの通院ができなくなった」は 33.3％、「予定していた治療が変更/中止/延長になった」「医師などに直接会って相談できなくなり不安である」が 9.4％、「病院を受診すると感染リスクが高まる不安がある」が 58.1％であった。また、「自分が感染するリスク」「感染した場合の批判や差別」「悲しみや喪失感」「経済的ストレス」などについて、「同居人有」が「同居人無」よりも有意に得点が高かった。STAI状態不安は 46.69（SD10.71）、特性不安は 45.04（SD10.59）であり（p＝.001）、有意な相関があった（r＝.708, p=.000）。 多くの人々は感染を予防する行動の必要性を理解し、迅速に身を守る行動変容を起こしていた。しかし、溢れる情報の中で迷いも生じていた。パンデミック下において健康に関する適切な情報を発信すること、対象に応じた内容を発信すること、受け手のヘルスリテラシーの向上は今後の課題である。また、パンデミック下における医療サービスの利用に不安を抱いていたことから、医療機関における対応の実際を明らかにすることを含め、課題および対応を検討していく必要がある。さらに、人‐人感染という特徴が、特に同居者がいる家庭生活での緊張感をもたらしていたことが推察され、安心・安全な生活を送れるようにするための支援が必要である。また、不安になりやすい性格傾向の人には、より丁寧な関わりが必要であることが示唆された。    成 果 物 等 【学会発表】 1．渡邊 聡子、森本 悦子、高谷 恭子、岩崎 順子、中井 あい（2022）新型コロナウイルス感染症流行下における人々の生活と健康．日本災害看護学会第 24回年次大会（示説）．高知．      

新型コロナウイルス禍における人々の健康維持に向けたケア方略

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新型コロナウイルス禍における人々の健康維持に向けたケア方略

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