Chihiro Yukawa

Kyohei Toyoshima

Tetsuya Oda

Yuki Nagai

オダ テツヤ

トヨシマ キョウヘイ

ナガイ ユウキ

ユカワ チヒロ

小田 哲也

湯川 千尋

豊島 恭平

長井 祐樹

長井, 祐樹

ナガイ, ユウキ

Nagai, Yuki

小田, 哲也

オダ, テツヤ

Oda, Tetsuya

豊島, 恭平

トヨシマ, キョウヘイ

Toyoshima, Kyohei

湯川, 千尋

ユカワ, チヒロ

Yukawa, Chihiro

AROUS Academic Repository of Okayama University of Science / 岡山理科大学学術リポジトリ

貯水槽監視を目的とした無線センサネットワークの開発―通信遅延と周囲気温予測の評価―長井  祐樹・小田  哲也 ＊・豊島  恭平・湯川  千尋 岡 山 理 科 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 修 士 課 程 情 報 工 学 専 攻*岡 山 理 科 大 学 工 学 部 情 報 工 学 科1. はじめに 貯水槽は，浄化槽，工業用水，農業用水，防火水槽など様々な用途で利用されている．貯水槽は一般的に屋外に設置され，気象条件や流入する水量によって貯水槽の状態は変化し，豪雨時には浸水する危険性がある．また，貯水槽の構造は様々であるが，特に壁に土が使用されている場合，地形的に低く周囲が斜面になっている場合において壁や斜面の崩壊により土砂が流入する危険性がある．このような事象は，貯水槽の用途によっては周辺地域に大きな影響を与える可能性がある．そのため，貯水槽を監視し，変化を予測することで早期に危険を知ることができれば，被害を軽減することが可能である．しかし，災害の発生や水位等の変化の監視はリアルタイムに行う必要があり，全ての状況を把握し監視・予測することは困難である． 貯水槽の監視と類似するものとして，河川の監視がある．河川は長距離かつ広範囲に広がっており，地形や気象条件によって状態が変化するため，状況を把握するとともに，災害を予測し，河川周辺に情報を提供することは困難である．そこで，論文[1]では，河川を監視するセンシングデバイスを開発し，無線センサネットワーク [2, 3, 4, 5]を提案した．無線センサネットワークは，広域から様々な情報をリアルタイムに収集し，知的システムに基づく予測・分析が可能である． 本稿では，貯水槽を監視するためのセンシングデバイスの開発と無線センサネットワークの提案を行い，通信を行うノード間に遮蔽物のない Line of Site (LoS)シナリオを考慮した屋外環境での遅延を解析する無線センサネットワークテストベッドを実装する [6, 7]．また，センシングデバイスで収集した気温データから，気温変化の予測を行う．以下, 本稿の構成を述べる．2 章では，貯水槽の監視・予測システムの概要を示す．3 章では，テストベッドの説明を示す．4 章では，実験結果について述べる．5 章で，本稿の結論を述べる． 2. 提案システム図 1 提案システムのイメージ 図 1 に提案システムのイメージを示す．無線センサネットワークは，複数のセンシングデバイスで得られたセンシングデータを無線センサネットワークにより広範囲からリアルタイムに収集する．無線センサネットワークは，各センサノードが複数のセンサノードと無線通信によって接続された無線メッシュネットワークを用いており，複数の経路で情報を伝達する．そのため，あるセンサノードに障害が発生しても，センシングデータの収集を継続して行えることに加え，故障したセンサ端末をネットワークを経由して通知することが可能である．収集したセンシングデータは，複数のデータをまとめて処理するセンサフュージョンにより予測・分析することで，単一のセンシングデバイスでは得られない情報を抽出することが可能である．提案システムでは，水位，雨量，土壌水分，温度，湿度，気圧，水温をセンシングデバイスを用いて計測する．提案システムは，貯水槽の周囲に無線センサネットワークを設置し，センシングデータを収集する．収集・蓄積したセンシングデータを知的システムに基づく時系列解析を行うことで，貯水槽の状態や気象状況の予測を行う． 岡山理科大学紀要　第58号 A pp. 33-38 (2022)(2022年10月31日受付、2022年12月5日受理) 2.1 貯水槽監視のためのセンサ  図 2 に測定に使用したセンシングデバイスを示す．以下に各センシングデバイスについて説明する．  ・ 水位計 図 2(a)に水位計を示す．水圧センサで測定した水圧ｗ [Mpa]と地上の気圧計で測定した気圧𝑃 [hPa]から，水圧𝑊 [Mpa]は式(1)で算出する． 𝑊 =  ｗ −  𝑃 (1) 水圧𝑊 [Mpa]における水位ℎ [m]は，式(2)で算出する． ℎ =  𝑊 ×  0.0098 (2)  ・ 温湿度・気圧計 図 2(b)に温湿度・気圧計を示す．温湿度・気圧計の計測範囲を以下に示す． - 温度計 (𝑇 [℃])： −40.000 ≤  𝑇 ≤  85.000 (3) - 湿度計 (𝐻 [%])：  0 ≤  𝐻 ≤  100 (4) - 気圧計 (𝑃 [hPa])： 300.000 ≤  𝑃 ≤  1100.000 (5)  ・ 土壌水分計 図 2(c)に土壌水分計を示す．土壌水分量を求めるための水(0.000 ≤  ℃ ≤  90.000)の比誘電率𝜇の範囲を式(6)に示す． 58.150 ≤  𝜇 ≤  88.150 (6)  ・ 雨量計 図 2(d)に転倒マス式雨量計を示す．1 [hour]あたりの傾斜回数𝑁 [unit]と 1 [unit]あたりの計測値0.500 [mm]から，1 [hour]の総雨量𝑄 [mm]は式(7)で算出する． 𝑄 =  0.500 ×  𝑁 (7)  防水・防塵機構とセンシングデバイスの一部のパーツは 3D プリンタを用いて開発することにより，市販されている同用途のセンシングデバイスと比較して低コスト化を図る [8]．  2.2 気温予測を目的としたセンサフュージョン 収集したセンシングデータはシンクノードに集約・蓄積する．貯水槽内の水位や貯水槽周辺の土壌水分は時間と共に変化することから，貯水槽の状態変化を予測するために時系列を考慮した解析 [9]が必要である．そこで，収集・蓄積したセンシングデータに対して  図 2(a) 水位計   図 2(b) 温湿度・気圧計   図 2(c) 土壌水分計   図 2(d) 転倒マス式雨量計 図 2 貯水槽監視のためのセンシングデバイス 34 長井祐樹・小田哲也・豊島恭平・湯川千尋 図 3 実験環境：岡山理科大学 貯水槽   図 4 シンクノードとセンサノードの位置関係  センサフュージョン  [10]を行い，Long Short-Term Memory (LSTM) [11, 12]を用いて，貯水槽の状態の変化を予測する．予測精度を向上させるため，気象庁が提供する観測点付近に設置されている Automated Meteorological Data Acquisition System (AmeDAS)の気温，湿度，気圧，雨量のデータセットを考慮し，AmeDASの観測データをあらかじめ LSTM に学習させる．学習後，LSTM は，貯水槽周辺に設置したセンシングデバイスから収集した計測値を学習することにより，提案システムの設置直後の学習初期段階における予測誤差の低減を目指す．  3. 無線センサネットワークテストベッドの説明  本稿では，無線センサネットワークを構築するためのデバイスとして，ZigBee [13, 14, 15]を備えたXBeeを使用する．XBeeの通信距離は，屋内外環境で30 [m]から60 [m]であり，LoSシナリオにおける最大の通信距離は約120 [m]である．XBeeの最大通信速度は250 [Kbps]である．センサノードで得られたセンシングデータを集約し分析するシンクノードにはJetson Nano，センサノードにはRaspberry piを用いてXBeeとセンサの制御を行う．  図 5(a) シンクノード  図 5(b) センサノード 1  図 5(c) センサノード 2  図 5(d) センサノード 3 図 5 各ノードの実験環境 貯水槽監視を目的とした無線センサネットワークの開発 ―通信遅延と周囲気温予測の評価― 35表１ 実験パラメータ    ──────────────────────     機能     パラメータ    ──────────────────────    試行回数    10    ──────────────────────    計測時間    60 [sec.]    ──────────────────────    センサノード数    3    ──────────────────────    通信距離    10 [m]    ──────────────────────    MAC     IEEE 802.15.4    ──────────────────────     ルーティングプロトコル   AODV    ──────────────────────     トランスポートプロトコル  UDP    ──────────────────────     ビットレートモード   CBR    ──────────────────────     センシングデータ  52 [bit]    ──────────────────────   3.1 実験シナリオ  実験は，図 3 に示す岡山理科大学内の貯水槽周辺でLoS を考慮し，図 4 に示すシンクノードとセンサノードの位置で実施する．図 4 の赤丸がシンクノード，黒丸がセンサノードであり，各ノード間の距離は 10 [m]である．また，実験環境周辺の建物は鉄筋コンクリート製である．図 5 に各ノード周辺の環境を示す．無線センサネットワークの実験パラメータを表 1 に示す．無線センサネットワークの遅延と LSTM の予測の実験に用いたセンシングデータは，図 2(b)に示した温湿度・気圧計の出力値である．LSTM による予測の評価実験として温湿度・気圧計で計測した気温データを用いて，気温の予測を行う．  4. 実験結果 4.1 無線センサネットワークの遅延の実験結果  評価には，センサノードからシンクノードまでの単一フローを使用した．図 6 に平均遅延時間を示す．シンクノードとセンサノード間の距離が 10, 20, 30 [m]の場合で計測を行った．センシングデバイスは 1 [sec.]間隔で計測を行う．また，温湿度・気圧計から出力されるセンシングデータのサイズは 52 [bit]である．センシングデータは 1 [sec.]間隔で転送され，遅延時間は 60 [sec.]間の計測を 10 回行った平均値である．図 6 より，  図 6 平均遅延時間   図 7 気温の予測結果   通信距離が長くなるにつれて遅延時間が大きくなることが確認できる．この原因として，距離が増加したことにより電波が減衰し，パケットの到達率が減少したことで遅延が増大したと考えられる．また，前述の 4台のセンシングデバイスのセンシングデータのサイズは，水位計が 24 [bit]，温湿度・気圧計が 52 [bit]，土壌水分計が 12 [bit]，雨量計が 1 [bit]であり，最もセンシングデータのサイズが大きい温湿度・気圧計の 52 [bit]の遅延時間は 0.2 [sec.]以下であることから，提案システムはリアルタイムにセンシングデータを収集し，貯水槽の監視を行うことが可能であると考える．  4.2 LSTM による気温予測の実験結果  図 7 に岡山理科大学内の貯水槽付近における気温の予測結果を示す．予測に用いる LSTM の学習は，実験場所に最も近い AmeDAS の 2010 年から 2020 年までの気温データを用いて行った．加えて，岡山理科大学内の貯水槽付近で提案システムを用いて計測・収集を行った気温データのみを用いた学習は，平均的な気温の変化から逸脱した場合であっても予測を可能とするため，24 時間の寒暖差が 12.5[℃]，14.7 [℃]と気温の変化が大きかったそれぞれ 2022 年 5 月 23 日と 24 日の気温データを用いた．LSTM は，過去 4 時間の気温36 長井祐樹・小田哲也・豊島恭平・湯川千尋データから 1 時間後の値を予測するモデルを用いる． 気温の予測は，24 時間の寒暖差が 12.6 [℃]と気温の変化が大きかった 6 月 2 日の 0:00 から 10:00 間で行い，平均的な気温の変化から逸脱した場合であっても予測を可能であるかを確認する．図 7 の青線は実験環境において 1 [sec.]間隔で計測された気温，赤線はLSTM による予測値で，00:00 が予測開始点である．図7 より，気温の実測値に沿って予測値が推移していることが確認できる．LSTM による予測誤差の最大値は1.206 [℃]，平均絶対誤差は 0.620 [℃]である．  5. まとめ  本稿では，貯水槽の監視を行うためのセンシングデバイスを開発し，LoS シナリオを考慮した屋外環境における無線センサネットワークの性能を調べるために，無線センサネットワークのテストベッドを実装した．実験結果より，センシングデータの遅延は 0.2 [sec.]以下であることから，提案システムはリアルタイムにセンシングデータを収集できるため，貯水槽の監視を行うことが可能である．また，LSTM による気温の予測は，大きな誤差なく予測を行えることを確認した．  参考文献 1) Y. Nagai, T. Oda, “A River Monitoring and Predicting System Considering a Wireless Sensor Fusion Network and LSTM”, Proc. of The 10-th International Conference on Emerging Internet, Data and Web Technologies, Okayama, Japan, pp. 283-290, (2022). 2) T. Lewi, et. al., “Aerial Sensing System for Wildfire Detection”, Proc. of The 18-th ACM Conference on Embedded Networked Sensor Systems, pp. 595-596, 2020. 3) G. Mulukutla, et. al., “Deployment of a Large-Scale Soil Monitoring Geosensor Network”, SIGSPATIAL Special, Vol. 7, No. 2, pp. 3-13, (2015). 4) M. Gellhaar, et. al., “Design and Evaluation of Underground Wireless Sensor Networks for Reforestation Monitoring”, Proc. of The 41-st International Conference on Embedded Wireless Systems and Networks, pp. 229-230, (2016). 5) T. Oda, et. al., “Design and Implementation of a Simulation System Based on Deep Q-Network for Mobile Actor Node Control in Wireless Sensor and Actor Networks”, Proc. of The IEEE 31st International Conference on Advanced Information Networking and Applications Workshops, pp. 195-200, (2017). 6) T. Oda, et. al., “Implementation and Experimental Results of a WMN Testbed in Indoor Environment Considering LoS Scenario”, Proc. of The IEEE 29-th International Conference on Advanced Information Networking and Applications, pp. 37-42, (2015). 7) Y. Nagai, T. Oda, “A Wireless Sensor Network Testbed for Monitoring a Water Reservoir Tank: Experimental Results of Delay”, Proc. of The 16-th International Conference on Complex, Intelligent, and Software Intensive Systems, Kitakyushu, Japan, pp. 49-58, (2022).  8) N. Saito, et. al., “A LiDAR Based Mobile Area Decision Method for TLS-DQN: Improving Control for AAV Mobility”, Proc. of The 16-th International Conference on P2P, Parallel, Grid, Cloud and Internet Computing, pp. 30-42. (2021). 9) P. Sharma, et. al., “A Machine Learning Approach to Flood Severity Classification and Alerting”, Proc. of The 4-th ACM SIGSPATIAL International Workshop on Advances in Resilient and Intelligent, pp. 42-47, (2021). 10) C. Hang, et. al., “Recursive Truth Estimation of Time-Varying Sensing Data from Online Open Sources”, The 14-th International Conference on Distributed Computing in Sensor Systems, pp. 25-34, (2018). 11) S. Hochreiter, et. al., “Long Short-term Memory”, Neural Computation, Vol. 9, pp. 1735-1780, (1997). 12) Z. Karevan, et. al., “Transductive LSTM for Time-Series Prediction: An Application to Weather Forecasting”, Neural Networks, Vol. 125, pp. 1-9, (2019). 13) T. Oda. et. al., “A Genetic Algorithm-based System for Wireless Mesh Networks: Analysis of System Data Considering Different Routing Protocols and Architectures”, Soft Computing, Vol. 20, No. 7, pp. 2627-2640, (2016). 14) T. Oda. et. al., “Evaluation of WMN-GA for different mutation operators”. International Journal of Space-Based and Situated Computing, Vol. 2, No. 3, pp. 149-157, (2012). 15) Y. Nishikawa, et. al., “Design of Stable Wireless Sensor Network for Slope Monitoring”, The IEEE Topical Conference on Wireless Sensors and Sensor Networks, pp. 8-11, (2018).     貯水槽監視を目的とした無線センサネットワークの開発 ―通信遅延と周囲気温予測の評価― 37Development of a Wireless Sensor Network for Water Reservoir Monitoring －Evaluation of Communication Delay and Surroundings Temperature Prediction－ Yuki Nagai, Tetsuya Oda *, Kyohei Toyoshima and Chihiro Yukawa Graduate School of Engineering, * Department of Information Science and Computer Engineering,Okayama University of Science, 1-1 Ridai-cho, Kita-ku, Okayama 700-0005, JapanThe water reservoir tank have various roles such as septic tanks, agricultural water storage and also as fire protection tanks. The condition of the water reservoir tank changes with weather conditions and there is a risk of overtopping of the embankment and collapse of the surface of a wall during heavy rainfall. Therefore, by monitoring the water reservoir tank and predicting changes, the damages can be reduced by learning of hazards in an early stage. Wireless sensor fusion networks have the advantage of being able to collect and analyze a variety of information from a wide range of sources. In this paper, we develop sensing devices and propose a wireless sensor fusion network to monitor the water reservoir tank. For the experiment, we implemented a wireless sensor network testbed and analyze the delay of a wireless sensor network in an outdoor environment considering Line-of-Sight (LoS) scenario. In addition, we predicted the temperature in an experimental environment by Long Short-Term Memory (LSTM). Keywords: Wireless sensor network; Sensor fusion; Long Short-Term Memory (LSTM). 38 長井祐樹・小田哲也・豊島恭平・湯川千尋(Received October 31, 2022; accepted December 5, 2022)

チョスイソウ カンシ オ モクテキ トシタ ムセン センサ ネットワーク ノ カイハツ : ツウシン チエン ト シュウイ キオン ヨソク ノ ヒョウカ

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チョスイソウカンシオモクテキトシタムセンセンサネットワークノカイハツ : ツウシンチエントシュウイキオンヨソクノヒョウカ

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