ブータン王国における食用野生植物の利用とその伝統知識に関する調査報告(第一次)

Abstract

ブータン王国における食用野生植物種を明らかにするとともに,これらに関する健康効果等の伝統的知識を保全,再評価することを目的に,2005年4月,ブータン国内3カ所の市場と2カ所の農村で調査を実施した。本調査において確認された全ての食用種子植物は98種にのぼり,このうち21科30種は野生植物,40科68種は栽培植物であった。今回の調査期間中,シソ科の香草であるPogostemon amaranthoides,葉菜として利用されているヤマゴボウ科のPhytolocca acinosaおよび同じく葉菜として利用されているイラクサ科のElatostema sp.の三種が最も頻繁に各市場で見られた。また,これら食用野生植物の中には,健康効果が信じられているものがあることが確認された。例えば,アブラナ科のNasturium officinaleとユリ科のHemerocallis sp.は血液(血流)を改善するとされ,イラクサ科のGirardiana palmateおよびシソ科のMenta sp.は血圧を低下させる効果があると信じられていた。また,イラクサ科のUrtica dioiaは結核に効くと回答が得られた。この他,ある種のヤドリギ(Loranthaceae sp.)は茶として利用されており,体の痛みの改善や骨折時に効果があるとされ,バラ科のDocynia indicaの果実は下痢止めとしての効果があるとされた。さらに,トウ(Calamus sp.)の新芽が吐き気に,ある種のランの花序については,頭痛やめまいに効くとも信じられていた。また,シダ植物の若い茎(NakeyおよびPangkey)が野菜として頻繁に利用されていることが確認され,少なくとも8種類のシダ植物が観察された。ブータンにおいては苦味の強い植物を特に好んで野菜として利用しており,これら苦い食品がより良い健康効果を持つとも信じられていた。今後も継続的に現地調査を実施し,同国の野生植物の食用利用とその伝統知識について詳細に調査する予定である。Article信州大学農学部紀要. 42(1-2): 37-47 (2006)journal articl

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