高茎草本群落が発達したスキー場休業地における森林回復の可能性

Abstract

1990年以降,日本全国において営業スキー場が連続的に減少しているが,環境保全や景観保全の観点から出来るだけ早期に森林回復することが望ましい。本研究では休業から9年が経過したサンアルピナスキー場(長野県大町市)における植生調査を行い,今後の森林回復の可能性を検討した。ゲレンデ踏査の結果,主にススキ群落,オオイタドリ群落,タニウツギ群落,カラマツやミズナラを主体とした高木性樹木群落の4群落が成立していた。このうち高木性樹木群落については上層と中層が主に高木性木本によって構成されており,また下層においても高木性木本の実生が多く出現した。しかしながら,その面積割合はゲレンデの17 % に過ぎず,森林への遷移は部分的なものに留まっていると結論された。これに対して,ゲレンデの36 %,33 % および5% を占めるススキ群落,タニウツギ群落,オオイタドリ群落の3群落タイプについては,高木性木本類およびそれらの実生の出現数が極めて少なかった。一般化線形モデルを用いた解析結果から,侵入を困難にしている要因は高い上層被覆率と厚いリター層であると結論された。一般にススキ群落では,上層の被服率が小さいため,群落内への光の透過が大きく,木本植物が侵入しやすいといわれる。しかしながら,本調査地のススキ群落には上層や中層にオオヨモギが侵入しており,その遮光によって高木性木本の更新が阻害されたと考えられる。さらに本調査地ではリター層が更新阻害要因となっていたが,その厚みはススキ群落とオオイタドリ群落において大きかった。すなわち本調査地では,ススキやオオイタドリを主体とする高茎草本群落における高木性木本の更新は停滞しており,速やかな森林回復の可能性は低いと判断された。Article信州大学農学部AFC報告 17: 27-36(2019)departmental bulletin pape

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