Article信州大学医学部附属病院看護研究集録 1981: 1-6 (1981)departmental bulletin pape

上條,  恵美子

上野,  公子

伊藤,  隆子

大沢,  陽子

太田,  みさ江

太田,  美八子

宮原,  ゆみ江

山下,  美智子

山本,  多賀子

巣山,  美佐

満沢,  佳子

白川,  みち

矢ケ崎,  智子

羽根,  篤子

高野,  みどり

鰐川,  洋子

鷲沢,  生恵

Japanese

Shinshu University Institutional Repository

重症筋無力症患者の看護の充実をめざして北 4階病棟 発表者 宮 原 ゆき江上 條 恵 美 子 　 高 野 み ど り 　 矢 ケ 崎 智 子 　 巣 山 美 佐鷲 沢 生 恵 　 伊 藤 隆 子 　 上 野 公 子 　 太 田 美 八 子山 下 美 智 子 　 山 本 多 賀 子 　 鰐 川 洋 子 　 白 川 み ち太 田 み さ 江 　 清 沢 佳 子 　 大 沢 陽 子 　 羽 根 篤 子山田川根Ⅰ はじめに重症筋無力症 (Myastheniagravis以後M.Gと略す)は,その病因等不明な点が多い疾患である｡治療法として,薬物治療,外科的治療としての胸腺摘出術が主流をなしている｡最近本庄に対する胸腺手術の効果は,呼吸管理の進歩とともに認められつつある｡当病棟においても,年間5例前後の胸腺手術が行われている｡数的には多い症例ではないが,症状観察の重要さ.薬の特殊性,術後の呼吸管理の困難さ等から,看護していく上で問題の多い疾患である｡そこで私達は,MGに対する理解を深めるとともに,全員が同一レベルで看護が行えるようにこの研究にとりくんだ｡Ⅱ 研究方法1)研究期間 S55年 6月～12月2)研究対象 S50年～S55年まで当病棟に入院したMG患者22名3) 研究内容 旬過去 5年間の看護記録の検討㊤MGについての学習㊥基準表の作成④実 施Ⅲ 今までの看護の検討今まで行われていた看護にどのような問題があるかを知る為に,過去5年間の看護記録を検討し,次のような事があげられた｡1)病歴についてオッサーマンの分類が記入されているものは少なく,主訴は書かれていても現症状は記載されていない｡病識の把握は不十分で,手術をすれば治ると思っている患者に対し,実際には ｢手術はこれ以上の悪化を防ぐ為の治療｣とオリエンテーションしてきたが,記録上では医師よりどのように説明され,スタッフがどのようにオリエンテーションし,患者が理解できたのか明確にされていない｡2)症状の観察についてMGに独特な検査ばかりでなく.一般検査に対する関心が薄く,検査値が把握されていない｡又,結果が記載されていても,それに対 して判断 ･対応がされていない｡-1-薬物の種頬 ･量 ･内服時間については,指示の変更のあった時には,その都度記されていることが多く,時間通りに与薬できていたと思われるが,薬の変更理由 ･副作用については全くといってよい程記録がない｡筋無力症状は,その時点で見ただけ,聞いただけのことが記載されているだけであり,内服による症状の変化,一日の中での推移をとらえていない｡術後,急性期は定期的な一般状態のチェック･処置など細かく記録されており.患者の安全 ･安楽に対する積極的な働きかけがみられる｡しかし,急性期から回復期への状態の推移をとらえた看護計画の記録が残っていない｡3)術前オリエンテーションについて術前訓練は手術記録のチェック事項に ｢済み｣と記されているのみで,問題点,患者の反応などの記録もなく,計画的な訓練は行われていなかったと思われる｡MGの術後の呼吸管理の重要性,特殊性はわかっていながらも,術前オリエンテーションは軽視されがちである｡また,訓練を行っているのに,術後との関連が薄く,評価されていない為,その症例から次の症例へと応用することができていない｡4)退院指導について内科へ転科してから退院するケースが多い.このため,十分な退院指導が行われていないO以上により,今までの看護は,観察 ･記録が不十分で計画的に行われていなかったと言える｡これは,疾患及び薬物に対する知識不足,無関心さから生ずるものと思われ,全員のレベル統一のため学習会をもち,基準表を作成した｡作成した基準は次のとおりである｡重症筋無力症の看護基準 ､1.病歴聴取のポイント1)病名 aオッサーマンの分類 ♯参照 b胸腺腫の有無 (可能なら良性,悪性の別)2)現病経過 a病脳期間 (発病時期の明確化)b今までの治療状況 (内服治療-量,薬品名,時間は詳しく)C発症より経過に沿った具体的症状あげるたとえば･--下肢-･階段の昇降,歩行状態etc.上肢川南傘,はみがきについてetc.岨しゃく,言語障害,眼症状,呼吸d症状増悪の誘因となるもの (感染疲労,月経)e現症状--握力 (左右)肺活量 (薬内服との関係も記入)3) 日常生活動作の障害の有無｢有｣の場合は具体的に状態と援助方法を記入4)病識,手術をどうとらえているか (薬と症状との関係etc.)★オッサーマンの分類成人型 Ⅰ型-外眼筋のみおかされるもので予後はよい｡E型-外眼筋,頚筋および四肢筋の麻痔をきたす｡球麻痔をともなうことがあるが,呼吸障害はない｡Ⅱa軽症型 Ⅱb中等症型Ⅲ型-急激に発症.全身型をとり,さらに呼吸麻棒をきたす｡-2-Ⅳ型-全身型で長期経過中に何 らかの機序で急激に悪化 し呼吸麻痔をきたす0新生児型若年型2.検 査肺機能検査-肺宿屋,ガス分析提力測定-内服時間を考慮してテンシロンテス ト胸部Ⅹ-R 気縦隔造影,気縦隔側面断層造影,静脈造影,胸腺シンチ,CTスキャン,内胸動脈造影.その他術前一般検査｡3.治 療1) 薬物治療a 抗コリンエステラーゼ剤 (抗Ch-E剤)効 果 発 現 効 果 持 続 副 作 用 1日 用 量テンシロV,アンチレックス旬診断用㊥抗ChTE剤の投与決定 最 も早い な し(10秒以内) 強 い 静注long(lmB)ワコ汰チグミt/,永わくチグミン旬初期軽症例及び急性増悪例に多用㊥他の紅 h-E剤と併用 早 い 短 い かなり強い(特にムスカリン作用) 経口10-307ng筋注 0.25- 1mgメスチノン匂アセチルコリン作用 やや遅い 長い 軽 い 経口60-3007ng㊥眼型,球型によい夜間増悪防止(3-6h) 筋注 1～57ngマイテラーゼ 早 い 長 い6 12 かなり強い(特にニコチン作用) 経口10-50wtgウプレシツド①他の紅 h-E剤と併用㊥筋注 2回法可能点眼可能 やや遅い 長 い(24h) 軽い 経口5-2078g筋注 0.5- 17ng点眼0.5- 1%b.抗Ch-E剤の副作用Q) ムスカリン症状発汗.流涙,流喪,食思不振.腹痛.下軌 喝気,喝吐,頻尿,失禁,瞳孔緒瞳,旺祝,気管内分泌物増加,呼吸障害,噴息,前胸部圧迫,気管支れん縮㊥ ニコチン症状筋れん縮,構音障害,噴下障害,筋硬賄,全身筋㊥ 中枢神経症状不安感,肱牽.頭痛,錯乱.昏迷,昏睡,けいれん④ 長期使用により肝機能障害や運動ノイロン障害,筋萎縮,腺反射などを生ずる｡♯硫酸アトロピン-ムスカリン作用の強い場合,クリーゼ予防のため併用する｡C.その他の薬剤･ACTH-呼吸状態増悪する場合あり ･カリウム剤･免疫抑制剤 ･血栄交換2)外科的治療--･胸腺手術★手術適応 胸腺腫群 :年令に関係なく重篤な心肺合併症を有せず麻酔及び手術侵襲に耐えられるもの｡非胸腺腫群 :学童期以降で抗Ch-E剤の効果 が不確実で症状が進行性のもの｡できれば病悩期間が5年以内で40才以下の症例がよい｡3) 放射線治療4.術前看護の要点1)症状の観察a.検査データ把捉b.筋無力症状の発現の有無と程度,内服との関係の観察,眼険下垂,構音障害,呼吸障害,顔筋麻痔,口腔内分泌物貯留,全身筋力低下2)与薬a.正確な与薬b.副作用の観察C.薬効と症状の観察d.患者自身に内服薬の重要性を自覚させる3) 日常生活の援助a.疲労の状態を考慮し,日常生活の自立をはかるb.食事は岨しゃく,喋下状態により考慮するC.感染予防d.事故防止4)術前オリエンテーション胸部外科オリエンテーションに準ずる (特に下記3項目に留意する)a.呼吸 (深呼吸,疾の噂出,体位交換)b.コミュニケーションの方法 (文字板,筆談,読唇etc)C.闘病意欲をもたせる5.術後看護の要点1)急性期♯術後24-48hは筋無力症状の少ない呼吸も良好な時期であるが,以後5-7病日までは分泌量増加,呼吸困難,筋無力症状増悪,薬の闘値がせまく,抗Ch-E剤を使用できない不安定時期である為,この時期は最も注意を要する｡-4-a.気管内チューブ抜管まで旬 一般状唐のチェック･･特に呼吸状態の詳細な観察㊥ 一回換気量の測定とその変化の把握㊥ 筋無力症状の観察④ 垣力測定とその変化の把握㊥ 人工呼吸器,酸素テントの管理㊥ 胸腔内 ドレーンの管理⑦ 経管栄養施行時の観察と援助㊥ 精神的援助 ･患者を励まし,意欲をもたせる･コミュニケーションの充実･頻回の吸引,胃管よりの食事注入などによる苦痛の緩和b.酸素テント離脱まで① 一般状態チェック㊥ 与薬 (術前に準ずる)㊥ 経口摂取状唐の把握と誤飲防止2) 回復期旬 症状観察㊥ 与薬 (術前に準ずる)㊥ 日常生活の援助④ 退院指導Ⅰ)日常生活指導Ⅱ)内服の必要性を正しく理解 しているか再確認するⅢ)闘病意欲を失わせないⅣ)定期受診の必要性を理解させるⅣ 2症例の看護の検討基準表作成後,術後も軽度の筋無力症状,内服薬の副作用出現がみられた程度で比較的良好な経過をたどった2症例を経験したのでその看護の検討を行った｡病歴については,基準表に沿い,オッサーマンの分類,病悩期間及び経過など明確にされており,現症状も十分とは言えないが記載できている｡病識は入院時一応把捉され,さらに術前オリエンテーションを通して十分把握し記載できている.術前の症状観察については,2症例とも日常生活における障害はなかったが,薬の内服と関連づけて観察,記録され,握力測定も自主的に行われている｡薬の重要性は,患者自身自覚 しており,時間通り内服でき,副作用もみられなかった｡検査値に対しては目を向けられているが記載が不十分である｡術前オリエンテーションは,オリエンテーション表に基づき,計画的に施行されており,患者も理解できていた｡術後,急性期における一般状態のチェック,症状の観察は,定期的にポイントをとらえ行われており,看護計画も急性期,回復期を通し,適切にたてられ記載できている｡-5-長期気管内チューブ挿入,経管栄養等の苦痛を伴う状態に対 して,その都度適切な援助,言葉かけが行われている｡回復期における症状観察は,術前同様に行われ,症状によって,例えば嘩下困難出現時,食事を変更するなど,適切に対応ができ,また内服薬の副作用の早期発見 もできている｡-症例は,術前にはみられなかった茄無力症状が術後出現 し,患者に精神的動揺がみられたが,それに対 し,訴えを聞き,励ますことにより不安は軽減した｡他の症例では,悪性胸腺腫であった為,放射線治療開始となったが,患者が放射線治療をどうとらえているか等把捉できていない｡退院指導は,内服薬の重要性に重点がおかれがちである｡Ⅴ 評価 ･考察過去5年間の記録がふり返ることにより,今までの看護に何が欠けていたかを知ることができた｡第一は知識不足があげられ,病態生理を知るため学習会をもち,理解を深めることができた｡第二は,状態に応 じた看護の展開がされていないことであったが.基準表を作成することにより,ポイントをとらえた観察ができるようになった｡また,術前,術後を通 して患者の安全,安楽に対し積極的に働きかけ,スタッフ全員が同一レベルで看護できるようになった｡しかし,長期間の闘病生活に対する援助は不十分であり,疾患に対する意識を持ち続机 社会復帰できるよう働きかけてゆかなければならない｡尚,転科の際は.転科先へのひき継ぎを充実させる必要がある｡第三は.記録の不十分さであった｡前に述べた2項目が改善されたことにより.記録も充実 してきたが,簡潔明瞭に記録するという点では,もう一歩の努力が必要である｡Ⅵ おわりに今回の研究により,MGに対する理解が深まり,問題の多いMG患者の苦痛を軽減できるようになったと思われる｡今後は.看護記録を充実させるとともに,学習態度を持ち続け,積極的な姿勢で看護できるよう心がけてゆきたい｡最後に,この研究にあたり御協力いただきました患者さん,第二外科の諸先生方に深く感謝いたします｡<参考文献>看護技術 (メヂカルフレンド)1980年7月号臨床看護 (へるす出版)1976年6月号臨床内科全書 (金原出版)I-ⅠⅠ神経疾患最近病理学 (改訂第2版文光堂)竹内正 他著日本胸部臨床 (克誠堂)第36巻3号 MGの外科的治療の問題点日本医事新報 (Na2909)(S_55.1.26付胸腺外科)正岡昭 著新臨床外科全書 (金原出版)内分泌外科重症筋無力症の外科 志田寛 著-6-

重症筋無力症患者の看護の充実をめざして

https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/8947/files/Nurshing_Research12-01.pdf

重症筋無力症患者の看護の充実をめざして

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