Article信州大学医学部附属病院看護研究集録 1985: 37-44 (1985)departmental bulletin pape

丸山,  公子

北沢,  光子

大月,  和子

宮崎,  清子

小幡,  礼子

尾崎,  千恵子

朴沢,  裕子

村田,  明子

橋本,  知子

穂谷,  尚美

藤原,  みつる

金井,  都

長谷部,  恵

青木,  周子

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経尿道的前立腺切除患者への援助南 6 階 病 棟  発 表 者  大 月 和 子金 井 都 　 朴 沢 裕 子 　 青 木 周 子 　 藤 原 み つ る丸 山 公 子 　 宮 崎 清 子 　 小 幡 礼 子 　 橋 本 知 子村 田 明 子 　 北 沢 光 子 　 穂 谷 尚 美 　 尾 崎 千 恵 子長谷部 恵Ⅰ はじめに70歳以上の男性のすべてに前立腺肥大があり,症状がでるのはそのうちの約 1割といわれている｡当科では,S53年度よりその治療法のひとつとして,経尿道的前立腺切除術 (以下TUR-Pと略す)を施行している｡この手術は皮膚に創傷もなく,短時間のため高齢者に適応となる｡しかし,実際には術後に血尿やテネスムス (痘撃性痔痛)が出現し,多くの人が苦痛を訴えている｡そこでTUR-Pをうける患者の術後の安楽を目的にこれらの問題点を検討した｡Ⅱ 研究期間 (S59年 8月～S60年 2月)Ⅲ 研究方法1.症例調査 (S53年～S59年TUR-P133例)2.アンケート調査 (S59年8月～S60年2月,血尿33例中テネスムス20例)3.血尿とテネスムスについての検討4.看護ポイント作成Ⅳ 実施及び評価1.症例調査 (資料 1参照)o手術対象年齢は70歳代が過半数をしめる｡｡術後 1週間以内で血尿が消失 した人 65.4%oテネスムスを訴えた人 60.9%o血尿が強い人の方がテネスムスを訴えることが多い｡oパルンカテーテルをけん引した人がテネスムスを訴えることが多い｡o術後の合併症 (血圧低下,TUR症候群,副等丸炎,腎孟腎炎)が併発 した人 36.8%これらの結果より,改めて血尿とテネスムスに対する援助が必要であることを感じた｡2.アンケート調査 (資料2参照)TUR-P後に限らず,手術後に血尿やテネスムスを訴えた人にアンケートを行なった｡A.血尿について① 血尿を予想したり聞いていた人 81.8%o血尿を予想した人27名中予想外に濃いと思った人5名㊥ 血尿を予想しなかった人聞いてもいなかった人 18.2%-37-｡血尿を予想しなかった人 6名中予想外に濃いと思った人 1名B.テネスムスについて (手術後の苦痛として)(∋ 絶えず尿意のあった人 30%㊤ パルンカテーテルによる痛みのあった人 45%これらのことより,患者にはなんらかの不安があり,術前オリエンテーションが重要であることを感じた｡3.血尿とテネスムスについての検討A.血尿について看護婦は,術後の血尿をみた時,尿量は十分でているだろうか,テネスムスを訴えるのではないかと予測する｡その肉眼的血尿の観察が重要となる｡今までの血尿の程度は±～≠ (資料3参照)と表現してきた｡もっと客観的な方法はないだろうかと考え,尿比重,硫酸銅法,比色表を検討した結果,正確で観察しやすいのは比色表だった｡これを利用することで,今までより同じ基準で血尿の観察ができ記録や報告がしやすくなった｡また,血尿の程度を正確にとらえる事で,持続磨洗の速度や中止する時期などに役立てることができた｡血液凝固について不明な点や持続勝洗 (生食)の量もあり,血尿の観察はまだまだ難 しい｡B.テネスムスについてTUR-Pを施行することにより,膜状三角部が刺激に対 して非常に敏感な状態となり,濃い血尿で尿の流れが悪くなったり,パルンカテーテルの刺激が加わると骨盤神経が興奮 し,尿意を頻回に感ずる｡患者は ｢おしっこがしたい｣としきりに訴えたり, トイレに行こうと起き上がろうとする｡不穏状態となり,パルンカテーテルを抜こうとする人もある｡このような時に,インダシン坐薬が効果があったため,薬にたよることが多かった｡そこで,膜耽炎や腸揺動促進に効果のある温電法がテネスムスを軽減させるのではないかと思い試みた｡その結果,術直後の強いテネスムスに対しては,患者は ｢あつい｣と訴え,ホットパ ックを取り除いてしまう様子がみられ,中止せざるをえなかった｡急性炎症がおさまった翌日以後のテネスムスには効果があり,｢気持ちがよい｣という感想が聞かれ,自ら温罵法を希望する患者もいた｡4.看護ポイント作成これまでの症例から得られた問題点をまとめ,看護ポイントを作成した｡その中で,術前術後に′ヾルンカテーテル留置中の感染予防として水分摂取をすすめているが,実際にどのくらい摂取が可能なのか検討した｡その結果,看護婦13名中5名は2000ml/日の摂取は無理で 1500ml/日なら可能だった｡患者も2000ml/日くらいは可能という人が多かったが,高齢者のため1500/日をめやすに個々の生活習慣にあった指導を行なうことにした｡Ⅴ 考察 まとめ研究期間中にも術後合併症として,TUR症候群,血圧低下,せん妄,副署丸炎などの症例を経験した｡なんの トラブルもなく約2週間で退院できる人が多い反面,TUR症候群から肺水腫になった人もあり,看護ポイントが生かされなければならないと感ずる｡血尿については出血量を推定することは難しく,比色表にたよるのみでなく,全身状態の観察が大切である｡-38-血尿が濃いとテネスムスが誘発され,テネスムスによって血尿が濃くなるという悪循環を繰り返す｡この苦痛を緩和するために,持続嘩洗により尿の流出を促し,早目に坐薬を使用する｡手術翌日以後は,温篭法を施行することが効果的である｡最近,塩酸モルヒネの硬膜外注入がテネスムスに効果があるという報告もあり,経過をみていきたい｡Ⅵ おわりに温電法は予想以上の効果があり,前立腺腫癌で出血が止まらず,何度もテネスムスを訴える患者からも ｢楽になった｣という声を聞くことができた｡身近なことで援助ができ,こうした経験を大切にしていきたいと思う｡この研究にあたり御協力下さいました方々に深く感謝致します｡参考文献o吉井良子 :TUR-Pの術前準備と術後看護 メディカ出版 19830 河野南雄他 :膜耽炎を考える 杏文堂 19750高橋秀子他 :前立腺疾患患者の術前術後の看護 看護技術 26-30 1982 110川島みどり:実践的看護マニュアル 看護の科学杜 198310西山勉 :前立腺TUR後の磨耽テネスムスに対するモルヒィン硬膜外投与の効果 臨床泌尿器51-54 1984.10平田久子他 :前立腺肥大症で排尿障害をきたした患者の看護 1263-1272〔前立腺肥大とは〕前立腺肥大症は原因不明の疾患である.前立腺は顕微鏡でみると外腺と内腺に分かれる｡外腺は尿道に精液の一部である前立腺液を分泌 している｡内腺の働きは不明である｡45歳 くらいになり男性ホルモンの分泌が減ってくると外腺はだんだん萎縮 してくる｡ところが一方の内腺はその頃になると肥大 してくる｡これが前立腺肥大症である｡〔症 状〕第 Ⅰ期 刺激期 夜間頻尿第Ⅱ期 残尿発生期 (150ml以下)排尿困難前立腺は血管に富む臓器であり,この時期に過量の飲酒,薬などで尿閉となる｡第Ⅱ期 慢性尿閉期 奇異性尿失禁 腎機能低下高齢となるにつれ膜耽機能の衰えも加わり排尿困難が強くなる｡-3 9 -資料 1.症例調査 (133人)① 手術件数人30201053 54 55 56 57 58 59年度㊥ テネスムスを訴えた人◎ 年齢別人数④ けん引を施行した人⑨ けん引した人でテネスムスを訴えた人 ㊥ けん引せずテネスムスを訴えた人-401(参 血尿日数㊥ 夜間排尿回数 (57人)㊥ 持続磨先を施行した人⑲ 麻酔方法lo因/夜-41-⑪ 術後合併症 (133人)1.血 圧 低 下 15人2.腎 孟 腎 炎 8人3.副 宰 丸 炎 6人4.TUR症候群 5人5.穿 孔 5人6. タンボナ-デ 3人7.尿 道 狭 窄 3人8.せ ん 妄 3人⑲ けん引時間 S57-S59年 (50人)5 10 15 20 25(時間)資料 2.アンケート調査(彰 血 尿 (33人)予想以上に濃いと思った人 10人うすくなるだろう 13人資料3.± 肉眼的血尿が初めてわかる｡+ 新聞の字がすけてみえる｡≠ 新聞の字はみえないが東血なし.一帖 凝血あり｡10.1% 肉眼的血尿が初めてわかる｡0,5%1%5% i肉眼的血尿が区別できそうな濃度10% 凝血あり｡光が通らない｡⑱ 血尿とテネスムスの関係血尿日数 人数 テネスムスあり 割 合lW未満 87人 39人 44.8%lW以上 23人 23人 100%㊥ テネスムスを訴えた人 (20人)手術後の苦痛として1. たえず尿意があった2.残尿感3.パルンカテーテルの痛み4.尿のつまった感 じ-42-人人人人6595資料 4.看護ポイントA.術前(1)術前オリエンテーションを行なう｡① 前立腺肥大症はどんな病気か｡㊥ 手術後血尿 となる｡㊥ 手術後テネスムスを訴える人が多い｡④ 手術後の経過,食事,安静,パルンカテ挿入期間(2) 排尿状態の観察① 排尿困難の程度 ㊤ 尿量,性状(3) 尿路感染の防止① パルンカテーテルの管理 ㊥ 十分な水分摂取 ㊥ 陰部の清潔(4) 検査介助及び検査結果の把握① 尿流量 ㊥ 内視鏡 ㊥ 残尿測定 ④ ⅠVP ⑤ 血液検査(5) 全身状態の観察と援助① 運動,聴力,視力障害の程度 ㊥ 既往歴 (TUR経験の有無)(6) 事故防止(7) 精神面への援助B.術後(1)全身状態の観察① バイタルサイン ㊥ 出血性ショック ㊥ TUR症候群,肺昔,意識状態,血液ガス,水分出納バランス,電解質(2)パルンカテーテルの管理① 尿量 ㊥ 血尿の観察 ㊥ けん引 ④ 持続勝洗(3) テネスムスに対する援助① 鎮痛剤を早目に使用 ㊥ 翌日以後は温奄法を施行する｡ ㊥ 洗浄液は体温程度とする｡(4) 尿路感染の予防(む 陰部の清潔(5) 精神面への援助① せん妄(6) 術後の合併症の予防(7) パルンカテーテル抜去後の援助 (頻尿に対 して)① 排尿状態の観察 ㊥ 保温 ㊥ 十分な水分摂取 ④ 虻門括約筋の運動⑤ 排尿終末時勝耽部圧迫(8) 便通を整える｡C.退院時オリエンテーション(1) 果物,お茶などで水分 1500ml/日をめやすに摂取する｡(特に血尿の続いている人に)(2) 身体の清潔を保つ｡-43-(31 下腹部の保温に注意する｡(4)便通を整える｡(5) 外来受診について排尿状態,血尿,発熱に注意する｡(6) 退院後 1週間で普通の生活にもどる｡-44-

経尿道的前立腺切除患者への援助

https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/8852/files/Nurshing_Research16-06.pdf

経尿道的前立腺切除患者への援助

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