Article信州大学医学部附属病院看護研究集録 1995: 102-104(1995)departmental bulletin pape

中村,  友枝

二木,  朗江

伊藤,  寿満子

小平,  京子

山口,  雅子

百瀬,  真由美

Japanese

Shinshu University Institutional Repository

脳腫瘍で維持療法を受ける患児とその家族への看護介入中病棟3階: ○中村友枝　小平京子　百瀬真由美山口雅子　伊藤寿満子　二木朗江1.研究目的脳腫癌に対する治療法には外科的治療と,補助的療法として放射線療法,化学療法があげられる｡近年では,更に免疫療法が行われている｡当科でも,脳腫癌の手術後,外来での維持療法 (インターフェロン)を行う患者が増えてきている｡小児悪性腫湯においては,この治療法は欠かせないものとされているが,その継続方法についての定説はまだなく,現在評価の段階である｡この治療法の特徴としては,再発を防ぐために永久的に,定期的な投与が必要とされることがあげられる｡そこで,継続治療が阻害されないように息児の抱える問題点,母親の再発に対する不安,成長に対する悩みを明らかにし,今後の継続看護に生かすことを目的にまとめた｡2.研究方法現在通院治療中の患児9名を対象とし,その患児および母親との面接調査を行ったOこれらの情報をゴードンの 〔機能的健康パターンの分類〕に沿ってデータベースとしてまとめた｡3.研究 ･考察事例 1) Tさん 4歳 男〔診断名〕 悪性神経豚腫〔現病歴〕 H4年12月 発症H5年1月 腫蕩摘出術施行術後より全盲,尿崩症出現デスモプレッシン点鼻使用,胃管挿入し永分コントロール中幼児期は r歩行による活動範囲の急速な拡大により,自我境界も次第に明らかとなり,自主独立を主張し,友達を求めるようになる｡言語活動も活発となり幼稚園などでの地域社会における社会化がすすめられる時期｣1)である｡Tさんの両親は父が医師,母は元看護婦という家族背景もあり,疾患,治療に対する知識,家庭生活において尿崩症で点鼻が必要なことや,胃管を挿入し水分コントロールをしながら生活を送らなければいけない事への受容もスムーズであった｡Tさんの問題点として,言語,運動発達遅延および,全盲による視力障害により社会的刺激の不足が考えられた｡母親の ｢できるかぎり健常時と同じ環境で生活させたい｣という強い希望もあり,幼稚園へ入園することとなった｡幼稚園へ通い始め,表情はかなり豊かになり,最近では発語も増え人の名前も覚えるようになった｡また遊びを通し,家庭では自分の思い通りにするが,幼稚園では順番を守るという社会性も身についてきた｡運動についても,手で辺りを触りながら一人で歩くことができるようになった｡最近では運動会の練習にも参加していたが,やはり,息児が見せものになるのではないかと心配し,出場を断念したことを開いた｡患児を支える母親の負担や,不安は,はかり知れな- 102-いものと考える｡幼児期における看護上の課題は,息児が可能な限り,迭びの中で楽しみながら心身の発達を促せるように働きかけると伴に,母親の負担も考慮して行く事が重要であると考える｡事例 2) Mさん 11才 女〔診断名〕 悪性神経謬腫〔現病歴〕 H4年7月 発症10月 腫癌摘出術施行H5年6月 放射線,化学療法施行脳腫蕩患児の学校生活において,身体機能の障害のほかに外観的なボディイメージの変調が,隻団生活を阻害する要因として考えられているoMさんも同様に,術後の放射線,化学療法により頭髪が薄いことに対し,中学枚に進学する前にかつらを希望していた｡現在,このことで学校生活において支障はないようだが,思春期の児にとって,ボディイメージの変調は重要な課題である｡放射線,化学治療に伴う変化として脱毛はあらかじめ予測できる問題点であるので,早い時期での働きかけが必要であった｡言語,認知に関し,学童期は具体的な理解に焦点を当たる時期といわれている｡そこでもう一つの問毘点としては,インフォームドコンセントや告知の問題があげられるO現在は ｢できものがあるので悪くならないように治療Lにきている｣ということで毎週外来通院しているが,いずれは,できものとは本当はどうゆうものなのか,なぜ毎週治療に来なければいけないのかという疑問を持つことが予想される｡ある日母親から,Mさんが脳旋癌を取り上げたテレビ番組を見ている姿を見て,どうゆうつもりで見ているのか.自分の病気について分かっているのか,また,いずれは病気について開いてくる時期がくるのだろうかなど,不安になったという話を聞かされた｡今後,疾患について詳しい説明を求められたときに備えどこまで説明をするのか,医師,母親と十分に話し合う必要があることを感じ,看護婦はよき相談相手,医師との梼渡しとしてサポートできるような役割があると考える｡事例 3) Yさん 17才 女〔診断名〕 悪性神経膨隆〔現病歴〕 H3年5月 発症6月 腫蕩摘出術施行術後より右同名半盲,右麻痔出現H4年6月 再発にて再手術放射線,化学療法施行H7年 ガンマーナイフ療法施行青年期では将来設計につい七計画を立てる時期である｡来年高校卒業にあたり進学,就職についての悩みが開かれた｡片麻痔という障害があるため,就職先が限られてしまうのではないか,希望の職業につけないのではないか,また,この事を誰に相談すればよいのかなどがあげられた｡その不安に対し,当院ソーシャルワーカーに相談し,また,同じ疾患で同じような障害をもちながら就- 103-戦し,働いている21才の男性に相談相手となってもらい,本人も交え直接話を開く場を提供した｡就職活動,進学問題においては,直接援助することはできないが,悩みを聞き,できるかぎりの情報提供をするという姿勢でいることが,援助になるのではと考えた｡4.まとめ以上より,小児の維持治療法を必要とされた息児の看護のポイントをまとめてみると次のようになる｡(D母親の抱える不安として再発,病名告知のことが一番にあげられたOこれらの不安は,週一回の治療を通し,他の息児の母親と顔を合わせて話をしていくことで,お互いに不安の軽減につながり,患児と伴に外来通院の助みとなっていることが分かった｡看護婦は,母親の不安の解消のたわって行く事が必要である｡②維持治療法における看護は,息児の成長,発達に伴い生じる問題を見逃さず,その時々に解決することが重要である｡③看護婦は,身体面だけでなく心理的,社会的,経済的な両も配慮し,熟練した技能をもって看護介入していくことが重要である｡(重恩児の生活リズムを乱してしまったり､正常な発達を阻害しないように､恩児の成長を含めて将来を考慮した継続看護が必要である｡今回の研究にあたり,ゴードンのデータベースシートを活用し,外来での維持療法を受ける患児とその家族の問題点が明確,かつ迅速に把撞できた｡継続看護において,ゴードンのデータベースシートを活用し,看護介入することは有効であると考える｡5.あわりに最良の治療が要求される大学病院では,その性格上最新の治療法が選択される傾向にある｡そのため,治療法の変化に応じて柔軟な看護計画を立案していくことは重要であると考えられるが,最新の治療法であっても,一人の患者およびその家族を対象にしている点には違いなく,確実な看護評価にもとずいた積極的な看護介入が必要である｡〔引用 ･参考文献】1)諏訪 望 :乳幼児の発達と精神衛生,_第1版,川島書店,1976,P16.2)リンダJ.カルペニート:看護診断ハンドブック,新訂第2版,医学書院,1995,P218-226.3)森本 -良他 :化学療法と免疫療法,小児看護,14(8):966-971,1991.4)小城 文子他 :小児脳腫痔のアセスメントと看護計画の立て方,小児看護,14(8):977-984,1991.5)紙屋 克子 :学校復帰へ向けての援助,小児看護,14(8):994-997,1991.6)武田 浮子 :子どもの成長発達と看護,小児看護,17(4):40ト406,1994.- 104-

脳腫瘍で維持療法を受ける患児とその家族への看護介入

https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/8657/files/Nurshing_Research25-19.pdf

脳腫瘍で維持療法を受ける患児とその家族への看護介入

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