Article信州医学雑誌 24(1): 27-34(1976)journal articl

三村,  尚

丸山,  雄造

宮腰,  正信

富永,  潤

小沢,  利明

岡田,  千曲

川原,  健治郎

松田,  国昭

水上,  悦子

熊沢,  成幸

相沢,  正樹

飯島,  義浩

Japanese

Shinshu University Institutional Repository

信州医誌，嵐（1）：27～34，1976原　　著消化管の内視鏡的ポリペクトミー飯島義浩1）　松田国昭1）　小沢利明1）　熊沢成幸1）　宮腰正信1）　岡田千曲1）　三村尚1）　川原健治郎1）　富永潤1）　丸山雄造2）　水上悦子3）　相沢正樹3）　　　　1）信州大学医学部篤二内科学教室（三k任：小田正幸教授）　　　　2）僧州大学医学部付属病院rli央検査部　　　　3）相沢中央病院（松本市）ENDOSCOPIC POLYPECTOMY OF THE GASTROINTESTINAL POLYPSYoshihiro IIJIMA1), Kuniaki MATSUDA1), Toshiaki OZAWA1), Shigeyuki KUMAZAWA1), Masanobu MIYAKOSHI1), Chikuma OKADA1), Hisashi MIMURA1), Kenjiro KAWAHARA1), Jun TOMINAGA1), Yuzo MARUYAMA2), Etsuko MIZUKAMI3) and Masaki AIZAWA3)　　　1）Department　of　Internal　Medicine，　Facしilty　of　Medicine，　　　　Shinshu　University（Director：PrQf．　Masayuki　ODA）　　　2）Central　Clinical　Laboratories　Shinshu』University　Hospital　　　3）Aizawa　Central　Hospital（Matsumoto　City）Key　wOrdS　l内視鏡的ポIJペクトミー（endoScopic　polypectomy）　　　　　　胃・大腸ポリープ（Polyps　of　the　stomach　alld　colon）　　　　　　高周波電流（high　frequency　current）　　°　近年，ファイバースコープの進歩に伴い消化管の内　　　便潜血反応等に異常のないことを確めて3日目の午後視鏡検査も飛躍的な発展をとげ，治療面にまで応用さ　　　退院させる。なお，胃の場合には抗潰瘍剤を約2週間れて来ている。内視鏡的ポリペクトミーも最近その　　　服用する。また，原則として1週間後に内視鏡検査を安企性と有用性が確められて，広く臨床的に施行され　　行なう。つつある。我々も昭和50年2Jjから12月までに，相沢　　　　使用器械は，胃に1よ直視式のGIF－D2（オリソバス1・1“．1央病院で胃ポリープ9例9個，大腸ポリープ7例8　　　製），大腸は我々の試作集検用大腸ファイー1’　一一スコー個に高周波利用による内視鏡的ポリペクトミーを行な　　　プまたはCF－LB（オリンパス製）の金属部分に絶縁をって来たのでその結果を報告し，若予の考察を試み　　　施して用い，高周波発生装1醒はオリンパス製のPSDた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　を，スネアーはルー一プワイヤー式のものを使用してい　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　る（図1，2，3）、なお，患者には対極枝を装着し，　　　　　　　　対象ならびに方法　　　　　　　　　　　術者はゴム乎袋を使用する。　患者は術前日の午後入院させi白腋型，出【血L性素囚，　　　　ポリペクトミーの方法は，先ずスネアーでポリーゾ胸部レ線，心電図等の一・般検査を行ない，当1－U；贈通　　　．！i9，・i’；11のやや1二方（約5mm）を絞擁し充分うっ【血Lさせ，の内硯鏡検査と同様な方法で前処胤を行なう。術後は　　　スネアーやポリープ先端が粘膜面に接触していないこ半1ヨ間の絶食と安静，止Ir［L剤を混じた点滴湘謝を行な　　　とを確認する。履初に凝固電流を数秒間ずつ数圃流い，翌日には五分粥，全粥を与え，全身状態，血圧，　　　し，これで切断されぬ場台は更に切断肇琶流を通電してNo，　1，　1976　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　27　　　　　　飯島・松田・小沢・熊沢・宮腰・岡田・三村・川原・富永・丸山・水上・相沢聾難弼綴纏鍵購蕪舞雛講灘灘翻ゑ　　　　　　　　　繋雛輯　　Aw獲驚難　 図2ス不アー先端＿幽上よ晶滋滋㍊灘盤血誌PSD（ナリンパス製）28　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　信州医誌VoL　24消化管の内視鏡的ポリペクトミャ切断する。切断後は断端の止血を確認して，ポリープ　　　ない。の付着したスネアーをファイA’一スコ　e一プと共に抜去する。途中でポリープが落ちた時は生itStt－コでつまん　　　　　　成　績で来る。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　切除ポリー一プの部位と大ぎさは図4のごとくで，胃　適応と禁忌は，竹本らDによる、と表1のごとくであ　　　ポリープは胃角～幽門部と胃体上’・中部に約半数ずるが，我々もポリープの形は山田の分類2）の皿，IV型　　　つ，大腸ポリ・・一プの75％が直腸～s状結腸に分布してで基部の大きさは約1cm以下，生検で悪性像の見ら　　　いた。大きさは両者とも1～2Cmのものが多かった。れない例を適応とし，山田のLI型で基部の大きな　　　また，胃の9例中4例，大腸は7例申3例が多発性でもの，生検で悪性所見が見つかった例には施行してい　　　他は単発性であった。表｛　　　　　　ポリペクトミーの適応と禁忌　　 （竹本等1）による）A．形態学的条件　　　　（山田分類）B・大　　き　　さ　（ポリープの基部）C，病理組織学的条件D．隙床的条件1　　適　　　応工［，皿，w型胃：約5～20mm大腸：約3～15mm①生検にて癌が否定されるもの②GrOUP　3以下　③非開腹的治療　　　　　（高令蔚，合併症，急性出⊥ftt）　②ポリープの完全生検　③経過観察中の不安と煩わしさから1　の開放1禁　　　　　　忌1型胃　；21　mm以上大腸：16mm以上①生検にて癌が認められるもの②Gr。uP　4以上①ポリポージス②血液疾患　胃〈9コ〉㊦　④　e大　腸〈8コ〉ゆ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｝●●　　　　②の　　　◎⑤　　　　　　　　　　　　●　1Cm以下　　　　　　　　　　　　●　1～2cm図4　　　　切除ポリープの部位と大きさNo，1，1976　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　29飯島・松田ξ小沢・熊沢・宮腰・岡田・三村・川原・富永・丸山．・水上・相沢　胃ポリベクトミーの症例（表2）では，年令は38　　電時に大きなポリープ頭部が対側壁に触れ潰瘍を形成～73才，ポリープ頭部の最大径は8～19mm，形は山　　　した例を経験したが，1週間後に行なった内視鏡検査田の亙型2個，W型7個，組織像はすべてbenign　　では発赤と軽い陥凹がみられ軽快していた。他には穿adnornatous　polypで術前の生検結果と一致してい　　　孔・火傷等は経験していない。た。一般に無症状の例が多く，大きさ，形，経過観察　　　　回収は，胃・大腸とも全例可能であったが，大腸での煩わしさから適応としたものが大部分であった。　　　　1例糞便中で回収した例があった。　大腸ポリペクトミーの症例（ue　3）では，年令は39～　　　　術後経過をみた症例（胃ポリープ症例1）を示す。77才，ポリープ頭部の最大径は5～15mm，形は山田　　　図5は胃角部前壁の有茎性ポリープで表面にびらんをの皿型5個，IS「型3個，組織像はほとんどがtubular　　有する。　IX　6はスネアーをかけてポリープを引き上げadenomaで1例（症例5）にGroup－3の組織異型が　　　ているところを示している。図7は切断直後の残存茎認められた（本例は術前に生検を行なっていなかっ　　　部で，白苔で覆われている。図8は2週間後の像で茎た）。癌は1例もなかった。また，大半が下血を主訴　　　部は発赤を残し縮小している。図9は切除ポリープでとしており，全例に術後症状の消失をみている。　　　　　大きさ8×7×5mm，暗赤色で切断面は白色を呈して　偶発症としては，胃で軽度出血1例，中等度出血1　　　おり，その組織像はbenign　adenomatous　polyp（図例を経験したが，前者は有茎性ポリープでスネアーに　　　10）であった。よる絞掘が強過ぎて高周波使用前に切断されたことにより，後港は亜有茎性ポリープで切断端が7×3mmと　　　　　　　　　　　　考　　察太く，切断電流を早く流し過ぎたためと思われる。い　　　　我が国における消化管の内幌鏡的ポリペクトミーずれも輸血を必要とせずに治癒した。まte，大腸で通　　　は，最初常岡らs）（1968）により胃ポリープの切断器に表2　　　　　　胃ポリペクトミー症例　　　（？：標本紛央）症　　例1）M．1・2）W，M．3）1，K．4）N．S．5）H．A．6）M，L7）K．M．8）Y．Y．9）K．T・零・性52　♀63　♂72　♂64　♀58　♀63　♀73　♀38　δ57　♀部　　　位胃角部　前壁胃角部　後壁　　〃前庭部　前壁体中部　後壁胃角部　前壁噴門部　前壁体上部　後壁　　〃大きさ i型1組　織　像（山田分類）　　　　rnm8×7×5　　1V15×10×6i　〃13x8×5　　　〃14×8×7　　　”13×10×9　　皿14x7×4　　W19×13×8　　　　　〃15x8×61　］1【13×11×10　　　　1S「Adenomatous　polyp　　　〃　　　〃　　　〃　　　？Adenomatous　polyp　　　〃　　　〃〃症　　　　状貧血，便潜血陽性下腹部痛上腹部痛上腹部不快感嘔気，めまい無症状　〃　〃　〃表3　　　　　　　大腸ポリペクトミー一症例　　　（？：標本紛失）、症　　例1）S．K．2）T．M．3）T．M，4）K．N．5）K．T．6）T．H．7）Y，1。零・性72　♂39　♂43　δ56　？77　♀70　♂59　♀部　　　位横行結腸直腸S状結腸　〃〃　〃下行結腸大きさ　　　　rnm15×15×35×4×315×10×412×11×612×6×510xlOx68×6×5　　？　型（山田分類）m〃Is「皿〃〃組　　織　　像Tubular　aden｛♪maHyperplastic　1〕clyPTubular　adenoma　　　〃　　　〃　　　　（Group－3a）Tubular，　adenoma　　　？症　　　　　状無症状下1血〃〃　下痢下血〃30　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　，　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　儒州医誌　Vo1，24消化管の内視鏡的ホリペクトミー図5　胃角部前壁の有茎性ポリーフ図6痢一鯛て 謔驍ﾆころ図7　切断直後の残存茎部No．1，1976　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　31飯島・松田・小沢・熊沢・宮腰・岡田・三村・川原・富永・丸山・水上・相沢図8　切除後2週間目図9切除されたポリープ　　　　　　　（8×7×5mm）32　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　信州医誌　Vol．24消化管の内視鏡的ポリペクトミー一よる機械的絞断法が行なわれた。続いて薬剤注入によ　　　合併症は起こらないと思われる。る局注法4），冷凍法5）なども考案されたが，これらは　　　　　IV．術後経過と再発について切断面からの出血ポリープの回収に難があった。現　　　　切除後の潰瘍は通常2～3週間で治癒し，2ケ月後在は丹羽6）により導入された高周波電流を用いるポリ　　　の検査では搬痕も指摘できないと言われているDlo）。ペクトミーが一一般的となっている1）7）8）9）10）。我々もこ　　　竹本ら1）は胃・大腸ポリペクトミーの27症例についの方法による内視鏡的ポリペクトミーを胃と大腸で行　　　て，1年6ケ月間の経過観察で1例も再発を認めていなっている。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ないQ　　I．胃ポリペクトミー一について　胃ポリープの胃集団検診における発見頻度はおおよ　　　　　　　　　　　　ま、とめそ0．24・－O．　37％であり，50才以上の高令者に頻度が高　　　　1．昭和50年2月から12月までに胃で9例9個1大いm。我々の日常診療においても稀な疾患ではない。　　　腸では7例8個のポリープに内視鏡的ポリペクトミーしかし，一般にその癌化率は低く単発性ポリープの癌　　　を行なった成績について述べた。その結果，慎重に行化は3％内外であろうと言われている11）12）。我々が施　　　なえば重篤な合併症もなく安全に施行でぎることが分行したポリペクトミーの9例8個の病理学的検索の結　　　かった。果も，すべてbenign　adenomat。us　pQlypで術前の　　　　1・内視鏡的ポリペクトミー一の適応は，有茎ないし鉗子生検結果と一致していた。　　　　　　　　　　　　亜有茎性ポリープで，大きさ2cm以下，生検で悪性　たとえ，レ線・内視鏡所見，生検で悪性像がなくて　　　でないものが妥当と考える。も100％癌を否定できないので完全生検の意味と，半　　　　貼胃ポリープは，経過観察の煩わしさからの解年～1年毎に行なう経過観察の煩わしさからの開放と　　　放，大腸ポリープでは完全生検と下1血に対する治療という治療的な面からも，今後内視鏡的ポリペクトミー　　　しての意義が大ぎかった。は有効な手段となるであろう。　　皿．大腸ポリペクトミーについて　　　　　　　　　　　なお，本論文の要旨は第11回日本消化器内視鏡　大腸ファイバVスコープの開発普及により，大腸ポ　　　　学会甲信越地方会（昭和50年8月），第26回畏野リ．プの謝臓が近牡昇して来てV、る謂ポリー　賑験（昭和5°年11月）において熾した・プに比し大腸ポリープの癌化率は高いと考えられ，武藤18）はtubular　adenomaで5％，　papillary　ade－　、　　　　　　　　文、』献nomaで23％，　vMous　adenomaで41％と報告して　　　1）竹本忠良・中村光司，生沢啓芳：内視鏡的ポリペいる。田島10）もポリペクトミーにより見つかった早期　　　　クトミーのi爽際．胃と腸，9：333－339，1974癌を4例報告している。我々の7例8個のうち大部分　　　2）山田達哉，福當久之：胃隆起性病変，胃と腸，1はtubular　adenomaであり，1例にGroul）一一3の組　　　　　：145－150，1966織異型があったが，癌例は経験していない。大腸ポリ　　　3）常岡健二，内田隆也：われわれの考案した内視鏡一プは小さくても癌化するものがあることが知られて　　　　　下の胃ポリープ切断採取法。Gastroellt，　Elldosc．，いるのでls），完全生検の意義は胃の場合よりも大き　　　　　11：174－184，1969い。また，粘膜内癌の治療にもなると言う意見が多　　　4）河内秀希，諸岡忠夫，上田則行，関谷干尋，中川い16）。更に我々の例では下血を主訴とするものが7例　　　　健一，仲紘嗣，千秋孝夫，古田豊治，長鼠英俊，中6例もあり，術後全例に症状の消失をみている。　　　　　　並木1ピ義：胃疾患の局注療法．Gastroent．　En－　　】旺．偶発症に8）14）ついて　　　　　　　　　　　　　　　　dosc，，13：269，1971　竹本ら15）のアソケート結果によると，胃では出，血が　　　　5）城所　働ほか：昭和47年度厚生省がん研究助成922例111コ14例（1，　5％），穿孔0，疹痛2例（6．2％）で　　　　　金．崎田班報告書あるが，我々は小黒9）による第2度，第3度の出1打Lを　　　6）丹羽寛文：生検用ファイバースコープの改良並び各1例経験した。大腸では326例中出血1例（0，3％），　　　　にカラーテレビジョンおよび高周波竃流の生検へ穿孔が2例（0．6％）であったが，我々の場合は出thL例　　　　　の応用・Gastroent．　Enclosc、，10：315，1968はなく対側壁に潰瘍形成例を経験したが，約1週間後　　　　7）赤坂裕三，川井啓市，中島正継，酉家　進，多田には軽快していた。以上より，慎重に行なえば重篤な　　　　　正大：高周波電気メスによる内視鏡的直視下ポリNo，1，1976　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　33飯島・松田・小沢・熊沢・宮腰・岡田・三村・川原・富永・丸山・水上・相沢　　一一プ切断斑Gastroent．　Endosc．，15：389－393，　　19738）中村光司，遠藤光夫，榊原　宣，浜野恭一，鈴木　　博孝、生沢啓芳，秋本　伸，竹本忠良：高周波電　　流による内視鏡的胃ポリペクトミー．Gastr。ent．　　Endosc．，15：728－735，19739）小黒八七郎：内視鏡による高周波胃ポリペクトミ　　ー．　胃と腸，9；309　－316，197410）田島　強：内視鏡的大腸ポリペクトミー．胃と　　腸，9：317－324，197411）種子田哲郎，石井　学：胃ポリープの経過観察．　　Gastroent．　Endosc．，16：311－313，197412）望月孝規安田弘文：胃ポリープの癌化について　　の…考察，胃と腸，3：720－723，196713）武藤徹一一郎：大腸隆起性病変の病理．胃と腸，8　　：739－749，　197314）多田正大，宮岡孝幸，川井啓市，高橋俊雄，奥田　　庚三，大川原康夫：内視鏡的ポリペクトミーによ　　る結腸穿孔の一例．Gastroent．　Endosc．，15：　　736－739，　197315）竹本忠良，中村光司，生沢啓芳，常岡健二，崎田　　隆夫：内視鏡的ポリペクトミーの現況・胃と陽・　　9：325－330，　197416）武藤徹一郎，松丸　清：大腸ポリープとその取り　　扱い方．内科，36：431－436，1975（51．　2。　26　受稿）34　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　信州医誌　Vol．24

ENDOSCOPIC POLYPECTOMY OF THE GASTROINTESTINAL POLYPS

https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/record/5319/files/Shinshu_med24-1-05.pdf

消化管の内視鏡的ポリペクトミー

消化管の内視鏡的ポリペクトミー

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