実験発がん系におけるトリチウム水のRBE

Abstract

金沢大学薬学部研究目的:核融合炉の稼働に伴って、トリチウムβ線に被曝する機会の増加することが予想される。本研究はトリチウムガスの酸化物であるトリチウム水由来β線のヒトにおけるリスク推定に資するために、各種の実験的発がん系を用いて、発がんにおけるトリチウムβ線のRBEを求めることを目的とした。研究計画と方法:細胞がん化系として、ゴールデンハムスター胎児由来初代培養細胞、C3H10T1/2マウス株化細胞2系、及びマウス個体発がん系を導入した。細胞がん化系の2系では、トリチウム水、中性子、コバルト-60γ線の照射線量率と照射時の温度を実験者間で統一した。マウス個体系では高線量率、急照射と、生涯にわたってトリチウム水を投与する実験を行った。一方、照射線源間の違いを無くするため、全ての実験に広島大学・原医研の照射装置を用いた。トリチウムβ線のRBEの測定精度を高めるため、正確に線量を測定したコバルト-60γ線の他に、カリフォルニウム-252中性子線照射を行った。結果と考察:トリチウム水β線のRBEを求めたところ、ハムスター胎児細胞系で1以下、マウス株化細胞系で1、6〜2となった。両者の違いはトリチウム水処理法によるものではなく、2つの細胞系のたどるがん化の過程の相違に起因することが明らかになった。一方、マウス個体の急照射時の、トリチウムβ線の白血病発症に関するRBEは1となったが、照射条件が異なるので細胞がん化系のそれらとの単純比較は出来ない。低線量率のトリチウム水β線処理による、各種の臓器がん発生に関するRBEを求めるのは今後の大きな課題である。これらの実験系で得られたトリチウム水β線のRBEをヒト発がんのリスク推定に利用するためには、げっ歯類由来細胞、個体からヒトへの外挿理論を確立する必要がある。研究課題/領域番号:63050021, 研究期間(年度):1988出典:研究課題「実験発がん系におけるトリチウム水のRBE」課題番号63050021(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63050021/)を加工して作

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