家事・育児における性別役割分業とサポートネットワーク : 名古屋・ハルビン・コペンハーゲンの比較考察

Abstract

 本稿の目的は、日本(名古屋)、中国(ハルビン)とデンマーク(コペンハーゲン)を対象に家事や育児の遂行のあり方を性別役割分業とサポートネットワークの視点から明らかにし、各地域の特徴を考察すること、および、名古屋における問題と課題を明らかにすることである。 本調査から、第1 に、育児に対するポジティブな主観的評価は、コペンハーゲン、ハルビン、名古屋の順に高いこと、第2 に、性別役割分業意識は、名古屋、ハルビン、コペンハーゲンの順に強固であることがわかった。そして第3 に、育児・家事に対するサポートは、コペンハーゲン、名古屋で比較的多く、ハルビンにおいて少なかった。  名古屋においては、育児に対するネガティブな主観的評価が高くなっていた。夫・親族・友人らによるインフォーマルな育児サポートネットワークは存在してるものの、日常の家事・育児は夫婦をその担い手とし8割近くが妻の負担となっていた。夫はサポートネットワークの主たるエージェントであるが、日常的に役割を共有できる存在とはなっていない。名古屋には依然として性別役割分業規範が根強く存続していることが明らかになった。「孤育て」問題を解消するためには、夫婦間の家事・育児の役割共有に向けジェンダーの変容を促進するための政策を継続して推進することが必要である

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