Baiyin, Bateer

Japanese

Tottori University Research Result Repository

（様式第９号／Format No。9）  学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨                Summary of Doctoral Dissertation Examination  氏   名／Name   Baiyin Bateer 審 査 委 員       Examining Committee  主Chief    査Examiner      山 田    智         ◯印  副Assistant 査Examiner       山 本 定 博        ◯印  副Assistant 査Examiner     荊 木 康 臣      ◯印  副Assistant 査Examiner     増 永 二 之       ◯印  副Assistant 査Examiner     西 原 英 治      ◯印  題    目 Title 水耕栽培における養液流量が植物生長( Beta vulgaris L. ssp. cicla‘Seiyou shirokuki’)に与える影響および養液流れ場の可視化  審査結果の要旨（２,０００字以内）／Summary of Doctoral Dissertation Examination (Within 1200 words)  栽培基質として培養液を流動させる水耕栽培では，植物の根を培養液に浸し，生育に必要な水，養分，および酸素を根から吸収させるため，効率的な資源利用と安価で高品質な植物生産が期待されている。特に，水耕栽培の養液流量を増加させることは，植物の栄養となる無機イオンの移動を促進させ，植物の養分吸収や収量の向上に寄与すると考えられている。しかしながら，植物の生長や養分吸収に与える養液流量の影響を調査した研究例は数少なく，その要因やメカニズムについては不明な点が多い。 そこで本研究では，水耕栽培における植物の生長および養分吸収に及ぼす養液流量の影響について，フダンソウを用いた水耕栽培および養液流れ場の可視化により，1)培養液の流動特性，2)根の形態形成，および 3)養分利用効率の観点から調査している。これらの調査から，具体的に以下の 3 項目の結論を得ている。なおフダンソウは，乾燥や塩性環境下でも旺盛な生育を示す葉菜類である。  1. 異なる養液流量条件での水耕栽培試験および養液流れ場の可視化を行うことにより，根の伸長と 窒素(N)吸収を促進し，フダンソウの生長と収量を向上させる適切な養液流量が存在することを 明らかにした。 フダンソウを供試作物として，異なる養液流量（0, 2, 4, 6, 8 L/min）による水耕栽培を行い，葉面積，新鮮重，乾物重，根の長さ，および窒素（N）吸収量を調査した。その結果，養液流量が 2 L/minから 6 L/min の範囲で増加するにつれ，フダンソウの新鮮重，乾燥重，葉面積，根の長さ，および N吸収量は増加したが，8 L/min になると各値は大きく減少した。この傾向は，根の N 吸収と伸長を促進し，植物生長を促進する適切な養液流量が存在することを示している。また，養液流れ場の可視化では，粒子画像流速測定法（PIV）を用いて，各養液流量における栽培容器内の養液流れ場および根系の挙動を解析し，養液流れ場の平均速度・渦度分布および根の挙動について検討した。特に，8 L/minの場合には，フダンソウの根系が培養液の速い流れに沿うように浮き上がって揺動しており，このことが根の表面に対する物理的刺激によるストレスとなり，フダンソウの生長および養分吸収を阻害したと考えられた。      2. フダンソウの根の形態および細胞壁構成成分であるセルロースおよびヘミセルロース含有量に及ぼす養液流量の影響を明らかにすることで，植物の生長および養分吸収を促進する適切な養液流量が存在することを明瞭化した。 屋内栽培室の人工光照明下で，各養液流量（2, 4, 6, 8 L/min）条件のもとフダンソウの水耕栽培を行い，生長量，N 吸収量，根系の形態，および細胞壁構成成分量を調査した。この場合，養液流量が 4 L/min において，乾物重や N 吸収量が最大になる傾向を示した。また，養液流量が 8 L/min の場合には，単位新鮮重当たりの根の体積および根の表面積が減少した。植物は物理的刺激を受けると，伸長生長を抑制し，肥大生長を促進すること（接触形態形成）が生じることから，培養液の流動状態に対する根系の形態学的応答の可能性が考えられた。このことから，養液流量が 8 L/min では，根のコンパクト化と表面積の減少により，根の N吸収量が小さくなったものと考えられる。 一方で，養液流量 6 L/min および 8 L/min における根のセルロース・ヘミセルロース含有量が，養液流量 2 L/min および 4 L/min 場合よりも増加した。根の強度はセルロース含有量と高い正の相関を示すことから，高い養液流量における根系は，強度が高くコンパクトな状態にあると考えられる。  3.  フダンソウの養分利用効率に及ぼす養液流量の影響を明らかにした。 2. の栽培条件と同じくフダンソウの水耕栽培実験から，葉面積，新鮮重，乾物重，根の長さと N，P，および K 吸収量の各項目間において，有意な正の相関関係が認められた。また，N，P，および Kの養分利用効率は，2 L/min および 4 L/min 場合に比べて，8 L/min の場合が高くなったことから，養液流量の増加がフダンソウの養分利用効率を向上させる可能性を示唆した。   以上のことをまとめると， 本研究では，水耕栽培における植物の生長および養分吸収に及ぼす養液流量の影響を，培養液の流動状態や根の形態形成，さらには養分利用効率の観点から明らかにしている。この研究成果は，水耕栽培における植物生長に関する基礎的研究分野で活用されるとともに，水耕栽培の実用設備設計や流量制御などの応用的研究分野で活用されることが期待されるものであり、新規性とともに有用性が高いものである。よって本論文は，博士（農学）の学位論文に値するものと判断した。     

Effect of Flow Rate on Plant Growth (Beta vulgaris L. ssp. cicla ‘Seiyou Shirokuki’) and Visualization of Nutrient Solution Flow Field in Hydroponics

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