京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第24148号工博第5035号新制||工||1786(附属図書館)京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻(主査)教授 杉野目 道紀, 教授 大江 浩一, 教授 中尾 佳亮学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Kusaka, Satoshi

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Development of Iridium-Catalyzed SkeletalTransformations of Aryl Ethers throughCarbon-Carbon Bond Formation(Abstract_要旨 )Kusaka, SatoshiKusaka, Satoshi. Development of Iridium-Catalyzed Skeletal Transformations of ArylEthers through Carbon-Carbon Bond Formation. 京都大学, 2022, 博士(工学)2022-07-25https://doi.org/10.14989/doctor.k24148学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要約は2023-07-25に公開 - 26 - 京都大学 博士 （工学） 氏名 日下 智史 論文題目 Development of Iridium-Catalyzed Skeletal Transformations of Aryl Ethers through Carbon–Carbon Bond Formation (イリジウム触媒を用いたアリールエーテルの炭素－炭素結合形成を伴う骨格変換反応の開発)  （論文内容の要旨）  本論文は、イリジウム触媒によるアリールエーテル類の炭素 -水素および炭素 -酸素結合活性化と、これに基づく低環境負荷型合成反応の開発について述べたものであり、序論と四章から構成されている。第一章と第二章では、 2-アルケニル -1-メトキシベンゼンおよびアリルアリールエーテルの炭素 -炭素二重結合に対する炭素 -水素結合の分子内不斉付加反応について述べている。第三章では、アリールベンジルエーテルの 1,3-転位反応について、第四章では、アリールアルキルエーテルのエナンチオ選択的分子内脱水素カップリング反応について述べている。以下に各章の概要を述べる。    序論では、触媒的炭素 -水素結合直接変換反応の合成化学的重要性と開発の経緯、ならびに課題が示され、本研究の位置付けと概要が述べられている。    第一章では、イリジウム触媒を用いたメトキシ基 C(sp3)–H 結合の炭素 -炭素二重結合への分子内付加反応について述べている。電子供与性が強く嵩高い二座リン配位子DTBM-SEGPHOS を有するイリジウム触媒を用いて、オルト位にアルケニル基を有するメトキシベンゼンをトルエン中 110-135 ºC で反応させることにより、メトキシ基の C–H結合が炭素 -炭素二重結合に分子内付加し、2,3-ジヒドロベンゾフラン誘導体が生成することを明らかにしている。また不斉触媒化に研究を展開し、最高 96%の鏡像異性体過剰率  (ee) で生成物を得ることに成功している。    第二章では、イリジウム触媒を用いたエナンチオ選択的分子内ヒドロアリール化反応について述べている。イリジウム /DTBM-SEGPHOS 触媒を用いることで、活性化を受ける炭素 -水素結合のオルト位に配向基を有さない場合においても、アリルアリールエーテルの分子内ヒドロアリール化に基づいた五員環形成が効率よく進行することを見出している。この環化反応がエナンチオ選択的に進行することを明らかにしており、最高 99% ee で 3 位に不斉炭素中心を有する 2,3-ジヒドロベンゾフランを合成する手法を確立している。    第三章では、イリジウム触媒による炭素 -酸素結合活性化を起点としたアリールベンジルエーテルの転位反応について述べている。イリジウム /DTBM-SEGPHOS 触媒を用い p-キシレン中 135 ºC で反応を行うと、酸素原子上のアリールメチル基のオルト位炭素上への 1,3-転位反応が選択的に進行し、o-ベンジルフェノール誘導体が生成することを見出している。転位する有機基として 3-フリルメチル基の反応性が高いことを明らかにし、さまざまなアリール基と組み合わせた基質の反応において高効率な転位反応 - 27 - 京都大学 博士 （工学） 氏名 日下 智史 を達成している。    第四章では、イリジウム触媒を用いたアルキルアリールエーテルのエナンチオ選択的分子内脱水素カップリング反応について述べている。イリジウム /DTBM-SEGPHOS触媒および水素捕捉剤 TBE（ t-ブチルエチレン）の存在下、フェニル（2-シロキシプロピル）エーテルを p-キシレン中 135 ºC で加熱すると、2-シロキシプロピル基の 2 位 C–H結合とフェニル基のオルト位 C–H 結合の間で脱水素を伴って炭素 -炭素結合が形成されることを見出している。この反応が 2-シロキシプロピル基の末端 C–H 結合の触媒的活性化に基づいた脱水素反応を起点にしており、生成した炭素 -炭素二重結合への分子内ヒドロアリール化反応によって生成物に至る反応機構を提唱している。この環化反応がエナンチオ選択的に進行することも明らかにしており、最高 99% ee で 3 位に不斉炭素原子を有する 2,3-ジヒドロベンゾフランの合成に成功している。   - 28 -   氏 名 日下 智史 （論文審査の結果の要旨）  本論文は、イリジウム触媒を用いた炭素 -水素および炭素 -酸素結合の活性化に基づく低環境負荷型合成反応の開発について述べたものであり、その成果は以下のとおりである。  （１）メトキシ基 sp3 炭素 -水素結合が、分子内の炭素 -炭素二重結合に効率よく付加し、含酸素 5 員環を与えるイリジウム触媒反応を開発した。嵩高く電子供与性の 3,5-ジ -tert-ブチル -4-メトキシフェニル基をリン上に有する二座リン配位子 DTBM-SEGPHOS を用いることで、高い触媒活性が発現することを明らかにした。また、付加反応のエナンチオ選択性制御に成功し、多くの生物活性化合物に含まれる分子骨格である、 3 位に四置換不斉炭素中心を有する 2,3-ジヒドロベンゾフランの不斉合成を達成した。  （２）アリール基の sp2 炭素 -水素結合が、分子内の炭素 -炭素二重結合に効率よく付加し、含酸素 5 員環を与えるイリジウム触媒反応（分子内ヒドロアリール化反応）を開発した。DTBM-SEGPHOS を配位子とするイリジウム錯体触媒を用いることで、従来の触媒では変換できなかった、配向基を持たない基質の利用を実現した。また、この分子内ヒドロアリール化反応がエナンチオ選択的に進行することを見出した。  （３）アリールベンジルエーテルの炭素 -酸素結合が切断され、アリール基のオルト位にベンジル基が転位し炭素 -炭素結合が形成される、イリジウム触媒 1,3-転位反応を開発した。Lewis 酸で促進される従来の反応系では 1,5-転位も同時に進行するのに対し、本反応は全く異なる反応機構に基づいており、1,3-転位が選択的に進行することが示された。また、3-フリルメチル基の高い転位能を明らかにし、オルト置換フェノールの効率的合成を達成した。  （４）アリール（ 2-シロキシプロピル）エーテルのイリジウム触媒分子内脱水素カップリングを開発した。アリール基のオルト位 sp2 炭素 -水素結合と 2-シロキシプロピル基の２位 sp3 炭素 -水素結合での炭素 -炭素結合形成が、形式的な脱水素を伴って進行する。2-シロキシプロピル基の脱水素化と、これにより生じた炭素 -炭素二重結合への分子 内 ヒ ドロ ア リー ル化 が 連 続し て 進行 する 反 応 経路 を 提唱 して い る 。ま た 、DTBM-SEGPHOS を配位子に有するイリジウム触媒が、これら二つの炭素 -水素結合変換の効率の良い触媒となり、反応がエナンチオ選択的に進行することを明らかにした。 これらの成果は、低環境負荷の新反応による分子創出に資するものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和 4 年 5 月 21 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。なお、本論文は京都大学学位規程第 14 条第 2 項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。   要旨公開可能日：     年   月   日以降 

イリジウム触媒を用いたアリールエーテルの炭素-炭素結合形成を伴う骨格変換反応の開発

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