京都大学新制・課程博士博士(医学)甲第24137号医博第4877号新制||医||1060(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 上野 英樹, 教授 森本 尚樹, 教授 寺田 智祐学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Kaba, Shinji

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:PPARγ Agonist Attenuates Vocal FoldFibrosis in Rats via Regulation ofMacrophage Activation( Abstract_要旨 )Kaba, ShinjiKaba, Shinji. PPARγ Agonist Attenuates Vocal Fold Fibrosis in Rats via Regulation ofMacrophage Activation. 京都大学, 2022, 博士(医学)2022-07-25https://doi.org/10.14989/doctor.k24137                                                                                京都大学 博士（ 医 学 ） 氏名  椛  慎 治 論文題目 PPARγ Agonist Attenuates Vocal Fold Fibrosis in Rats via Regulation of Macrophage Activation （PPARγアゴニストはマクロファージ活性を調節することでラットの声帯線維化を軽減する。） （論文内容の要旨） 声帯線維化は不可逆的な発声障害をもたらすため、コミュニケーション機能を損ない、社会的にも精神的にも大きなハンディキャップとなる。その多くは炎症や損傷の結果生じ、特に声帯手術や頸部放射線治療後に医原性にも発生するため、実臨床において重要な課題となっている。これまでの声帯線維化に対する研究の多くはコラーゲンの産生源である線維芽細胞を主なターゲットとしてきた。近年、さまざまな臓器でマクロファージが線維化に関わることが示されてきたが、損傷後の声帯におけるマクロファージの動態はほとんど知られていない。そこでまず、マウス声帯損傷モデルにおけるマクロファージの表現型の変化を間接蛍光抗体法で確認したところ、無処置の声帯では主にCD206 陽性の修復性マクロファージが常在し、損傷後 5 日目以内に iNOS 陽性の炎症性マクロファージが一過性に増加することが明らかになった。 そこで、損傷後一過性に増加する炎症性マクロファージが線維化を制御しているという仮説をたて、炎症性マクロファージをターゲットとした薬剤治療を試みた。Peroxisome proliferator-activated receptor-γ (PPARγ) は、創傷治癒の炎症期に主にマクロファージに発現し、その表現型を制御している。PPARγアゴニストであるピオグリタゾンを損傷後のラット声帯に投与し、声帯におけるマクロファージの表現型への影響をqRT-PCRと間接蛍光抗体法で評価したところ、ピオグリタゾンは炎症期である損傷後 4 日目における Ccl2 と Cd68 の遺伝子発現を PPARγ依存的に抑制し、iNOS陽性の炎症性マクロファージの増加を抑制した。以上より、ピオグリタゾンは炎症期のCcl2 の発現上昇を抑制することにより炎症性マクロファージの浸潤を抑制することが示唆された。次にピオグリタゾンの声帯線維化への影響をqRT-PCR、間接蛍光抗体法、組織特殊染色法で評価した。ピオグリタゾンは炎症期において Tgfb1、Fn1、Acta2、Has1の発現上昇を抑制し、成熟期である損傷後56日目においてコラーゲン・Ⅰ型コラーゲン・フィブロネクチンの増加、ヒアルロン酸と粘膜固有層断面積の減少をPPARγ依存的に抑制した。以上より、ピオグリタゾンが損傷後のラット声帯の線維化・組織拘縮を減弱させることが示された。 最後に、ヒト単球系細胞株であるTHP-1 細胞からマクロファージを誘導後、LPS とIFN-γの刺激で誘導した炎症性マクロファージにおいて、ピオグリタゾンはPPARγ非依存的にCcl2の発現上昇を抑制することがqRT-PCRで確認された。PPARγアゴニストはM1刺激下のマクロファージにおけるNFκB標的遺伝子の発現を抑制するが、その効果は薬剤濃度や M1 刺激の種類によって PPARγ依存的にも非依存的にも発現しうることが報告されており、この結果は in vivo実験の結果を否定するものではない。 本研究によりピオグリタゾンは炎症性マクロファージにおける Ccl2 発現を直接的もしくは間接的に抑制することで炎症性マクロファージの声帯への浸潤を抑制し、成熟期の声帯線維化を制御することが示され、炎症性マクロファージが声帯損傷時の線維化に関わっていることが示唆された。 またピオグリタゾンは PPARγ依存的に声帯線維化を抑制したことから、PPARγが声帯損傷時の線維化抑制に関わっていることが示唆された。これらの結果が、マクロファージやPPARγをターゲットとした声帯線維化に関する研究の礎となり、新規予防法の開発につながることが期待される。 （論文審査の結果の要旨）  声帯瘢痕は、不可逆的な発声障害により QOL を著しく低下させる疾患であり、病態の理解に基づき疾患を制御することが重要である。PPARγは創傷治癒の炎症期に主にマクロファージで発現上昇し、マクロファージの表現型を調節する転写因子である。近年、皮膚の損傷モデルで炎症期のマクロファージが線維化を促進することが報告された。 本研究では、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンをラットの声帯損傷後の炎症期に投与し、炎症期におけるマクロファージの表現型の変化と成熟期における線維化への影響を検証した。ピオグリタゾンは PPARγ依存的に Ccl2 の発現を抑制し、炎症期のマクロファージの浸潤を抑制した。ピオグリタゾンにより炎症性マクロファージが減少した一方で、修復性マクロファージは減少しなかった。さらにピオグリタゾンは炎症期におけるTgfb1とActa2の発現および成熟期の線維化を抑制し、その効果はいずれもPPARγ依存的であった。 これらの結果は PPARγが声帯損傷後の Ccl2 の発現と線維化を制御していることを明らかにした。また声帯においても炎症性マクロファージが線維化を促進していることを示唆している。 以上の研究は声帯瘢痕の発症機序解明に貢献し、将来の治療法の開発に寄与するところが多い。 したがって、本論文は博士（医学）の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、令和 4 年 6 月 28 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 

PPARγアゴニストはマクロファージ活性を調節することでラットの声帯線維化を軽減する

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/276169/2/yigak04877.pdf

PPARγアゴニストはマクロファージ活性を調節することでラットの声帯線維化を軽減する

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