京都大学新制・課程博士博士(工学)甲第23207号工博第4851号新制||工||1757(附属図書館)京都大学大学院工学研究科電気工学専攻(主査)教授 篠原 真毅, 教授 守倉 正博, 准教授 久門 尚史学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Hirakawa, Takashi

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Novel Analyses on Single ShuntRectifiers for Microwave WirelessPower Transmission( Abstract_要旨)Hirakawa, TakashiHirakawa, Takashi. Novel Analyses on Single Shunt Rectifiers for Microwave WirelessPower Transmission. 京都大学, 2021, 博士(工学)2021-03-23https://doi.org/10.14989/doctor.k23207 京都大学 博士（工学） 氏名 平川 昂 論文題目 Novel Analyses on Single Shunt Rectifiers for Microwave Wireless Power Transmission (マイクロ波無線電力伝送用シングルシャント整流回路の設計および解析手法に関する研究) （論文内容の要旨）   本論文は、マイクロ波無線電力伝送で利用される整流回路の新たな解析手法についてまとめたものである。マイクロ波無線電力伝送では RF-DC 変換効率の向上が重大な課題とされている。シングルシャント整流回路の動作について理解することは設計する際の助けとなる。本論文は、マイクロ波無線電力伝送の実用化に向けて不可欠な整流回路の効率向上や解析に関し、特にシングルシャント整流回路に着目して行った研究についてまとめてあり、全 6 章から構成される。  第 1 章は序論であり、本論文の研究背景として、マイクロ波技術やダイオード、マイクロ波無線電力伝送の歴史や様々な応用例がまとめられ、マイクロ波無線電力伝送の有用性が述べられている。さらに本研究の核となるシングルシャント整流回路の一般的な理論が述べられており、本論文の着眼点を明確にしている。  第 2 章ではシングルシャント型整流回路の動作原理についてまとめている。まず、先行研究において説明されていた理論について解説している。シミュレーションや実験により正しいことは示されていたが、解析手法に問題があったため、動作原理について十分な説明がなかった。本研究は従来研究における手法の問題点を述べ、新たな解析手法を提案している。具体的には、これまで主流であった周波数領域での議論ではなく、時間領域での電磁波伝搬現象に着目し、定常状態条件から回路動作を算出する方法である。提案した新規手法による解析により、シングルシャント整流回路の動作原理および理想出力フィルタ条件を明らかにした。また、本手法は理想シングルシャント整流回路の電流電圧特性について、理論式を算出した。これに伴い、入力フィルタである整合回路が接続されていない場合の最大変換効率が 92.26%であることも明らかにしている。  第 3 章ではシングルシャント型整流回路の新規シミュレーション手法についてまとめている。また、作成したシミュレーションを用いて、入力フィルタの最適化条件やダイオードパラメータが変換効率に与える影響を解析した。本シミュレーション手法は、第２章で回路解析に利用した提案手法を応用したものである。波の伝搬過程を定常状態条件が満たすまで繰り返し計算を行う手法であるため、計算機による計算が有効であると考えた。通常高周波の回路解析シミュレーションでは、負荷抵抗と入力電力を入力パラメータとして解析を行う。これに対して新しい手法では入力電圧振幅と出力直流電圧を入力パラメータとして用いる。そのため、出力電圧の変動が少ないような条件において、既存のシミュレーションに対して有利に設計が可能である。制作したシミュレータの正確性を確かめるために、よく用いられる商用シミュレータである Keysight 社の Advanced Design System と比較を行なった。それぞれのシミュレータを用いて、入力フィルタの最適化を含めたシミュレーションを行った。結果として、作成したシミュレーション手法と ADS、両者の結果が一致した。これにより、制作したシミュレーションの正確性を示すことができた。そこで、作成したシミュレータを京都大学 博士（工学） 氏名 平川 昂 用いて、ダイオードパラメータによる効率への影響評価を行った。閾値電圧およびブレークダウン電圧は整流回路に重大な影響を与えることが知られていたが、定量的な評価は不十分であった。そこで、本研究では閾値電圧およびブレークダウン電圧による整流回路の I-V 特性への影響をそれぞれ算出した。結果として、それぞれのパラメータによる整流回路の理論効率低下を方程式で表すことができた。  第 4 章では小電力入力条件下における RF-DC 変換効率向上手法の検討についてまとめている。整流回路の RF-DC 変換効率は入力電力および出力抵抗に依存する。これは、ダイオードに印加される最大電圧が上記２パラメータに依存するからである。具体的な影響は、第３章で示した、閾値電圧およびブレークダウン電圧によるものである。一般的に整流回路は、それぞれが最適な入力電力を持っており、その値から離れるにつれて変換効率が低下する。本章ではその中でも入力電力が最適条件に比べて小さい場合の効率向上手法について研究を行なった。入力電力が小さい時に変換効率が低下するのは、閾値電圧による影響である。この時、ダイオードへの入力電圧波のうち、閾値電圧を超えられない電圧は整流されず、反射され損失となる。この反射を低減するためには、ダイオードへの印加電圧を上昇させる必要がある。そこで瞬時対平均電圧比率を大きくすることで、電圧波の振幅を向上させる手法が提案されてきた。本研究ではパルス変調を用いたピーク電圧の向上に着目した。本研究はパルス変調波をシングルシャント整流回路に入力した際の回路動作解析手法について新規手法を提案した。また、パルス変調が RF-DC 変換効率向上に有効である条件についても明らかにした。また出力容量が十分に大きい時、瞬時電力を連続入力した場合と同様の変換効率が得られることも示した。その際に効率対負荷特性がデューティ比の逆数倍抵抗側に移動することも示された。    第 5 章では大電力用整流回路設計に向けたダイオードモデリング手法の研究についてまとめている。マイクロ波用の整流回路を設計する上でダイオードのモデリング手法は重要である。特に大電力入力条件においては、小信号の場合に比べてダイオードの電圧依存性が大きな影響をもたらすと考えられている。そのため、散乱パラメータのみによる設計に比べて等価回路の重要性がさらに増加する。高周波が入力された際のダイオード特性を評価できるパラメータは散乱パラメータのみである。そこで、マイクロ波入力条件下におけるダイオードパラメータを散乱パラメータから算出する必要がある。これまでの研究では、透過 S21 と反射 S11 の両方を用いてダイオードの等価回路が算出さる。一方で、本論文で着目しているシングルシャント整流回路は単一ダイオードを並列接続して用いる。そのため散乱パラメータのうち反射 S11 のみを用いて設計を行うことができる。ここに着目し、本章においては反射特性のみを用いてダイオード等価回路を算出する方法について検討を行い、確立した。また、新規等価回路の妥当性について検討した結果、従来のものに比べてよい整合性が得られた。    第 6 章は結論であり、本論文で得られた成果について要約されている。    氏 名 平川 昂 （論文審査の結果の要旨）   本論文はマイクロ波無線電力伝送において不可欠である整流回路に着目し、特にシングルシャント整流回路について、動作原理、高効率化手法、設計手法について具体的な検討をまとめたものである。本論文で得られた主な成果は以下の通りである。  1. シングルシャント整流回路の RF-DC 変換効率および電流電圧特性について、時間領域から着目した解析が行われた。解析結果として、先行研究において示されていなかった理想シングルシャント整流回路の電流電圧特性について、理論式を算出している。これに伴い、入力フィルタである整合回路が接続されていない場合の最大変換効率も明らかにした。  2. 整流回路の新規シミュレーション手法にも着目しており、この手法は出力電圧が一定である際に既存のシミュレーションに対して有利となるものであった。本シミュレーション手法は、時間解析と定常状態条件を組み合わせたものである。通常高周波の回路解析シミュレーションでは、負荷抵抗と入力電力を入力パラメータとして解析を行う。これに対して新しい手法では入力電圧振幅と出力直流電圧を入力パラメータとして用いる。そのため、出力電圧の変動が少ないような条件において、既存のシミュレーションに対して有利に設計が可能である。ダイオードパラメータによる効率への影響に関しては、閾値電圧およびブレークダウン電圧が与える影響を具体的に示した。また、商用シミュレータの結果とも比較を行い、新規シミュレーションの正確性を示した。  3. 小電力入力条件下において整流回路の変化効率を向上させるためにはダイオードへの印加電圧を向上させることが重要である。そこで、パルス変調を利用してピーク対平均電圧比を向上させた場合の変換効率特性についての検討を行った。本研究ではパルス変調の有効性について解析を行い、パルス変調の有効性および最適負荷インピーダンスの変化について明らかにした。また出力容量が十分に大きい時、瞬時電力を連続入力した場合と同様の変換効率が得られることを示した。その際に効率対負荷特性がデューティ比の逆数倍抵抗側に移動することも示した。  4. 整流回路の設計においてダイオードモデリングは重要な課題である。通常散乱パラメータを用いたダイオードモデリングでは 2 ポートの散乱パラメータを用いるのに対して、本研究では 1 ポートの反射特性を用いたモデリング手法について検討している。結果として 1 ポートのみの散乱パラメータからダイオードパラメータ抽出が可能であることを示した。   以上を要するに、シングルシャント型整流回路についての理論および設計に着目して包括的に研究が行われ、整流回路の理解の深化および設計手法に関してまとめたものである。本論文はマイクロ波送電用整流回路の効率向上のための基礎理論の発展に大きく貢献するものであり、様々なマイクロ波送電応用のための整流回路の高効率化が期待され、学術上、実際上寄与するところが少なくない。令和 3 年 2 月 22 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。  

マイクロ波無線電力伝送用シングルシャント整流回路の設計および解析手法に関する研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/263668/2/ykogk04851.pdf

マイクロ波無線電力伝送用シングルシャント整流回路の設計および解析手法に関する研究

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