京都大学0048新制・課程博士博士(医学)甲第22736号医博第4654号新制||医||1046(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 小川 誠司, 教授 武藤 学, 教授 滝田 順子学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Yamazaki, Hiroyuki

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:APOBEC3B promotes genomicinstability in myeloma cells(Abstract_要旨 )Yamazaki, HiroyukiYamazaki, Hiroyuki. APOBEC3B promotes genomic instability inmyeloma cells. 京都大学, 2020, 博士(医学)2020-09-23https://doi.org/10.14989/doctor.k22736                                                                             京都大学 博士（ 医 学 ） 氏名    山 崎 寛 章 論文題目 APOBEC3B promotes genomic instability in myeloma cells. （APOBEC3B は骨髄腫細胞においてゲノム不安定性を促進する） （論文内容の要旨） APOBEC3（apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like）は脱アミノ化酵素であり、一本鎖DNA中のシトシンを配列特異的に脱アミノ化しウラシルに変換することでウイルスゲノムに C>T の変異を導入し、内因性免疫因子として作用する。様々な癌腫に対するゲノムの網羅的解析で、遺伝子の変異シグネチャーによってその変異原が推測できることが示されたが、多くの癌腫でこのAPOBECパターンの変異が報告されており、腫瘍原性の因子としても改めて注目されている。多発性骨髄腫でもAPOBECパターン変異がその臨床経過中に蓄積することが知られているが、その詳細な分子メカニズムは不明である。 本研究ではAPOBEC3B（A3B）に着目し、骨髄腫における分子学的および臨床的意義を探索した。本来正常な組織では殆ど A3B の発現は見られないことが知られているが、多くの骨髄腫細胞株や骨髄腫患者由来の骨髄腫細胞ではmRNA および蛋白レベルにおいて高発現を認めた。また、既報の骨髄腫患者414名のマイクロアレイのデータセットの再解析を行い、A3B高発現の患者で全生存率が有意に低下しており、多変量解析において既知の予後不良因子とは独立した因子であることが示された。 次に、ゲノムDNA に対するA3B の変異原性を検出する為、A3B のノックダウンと同時に蛍光蛋白 mCherry を発現する shRNA レンチウイルスを作成し、3 種の骨髄腫細胞株へ導入した。A3Bのノックダウンにより骨髄腫細胞の持つデアミナーゼ活性は顕著に低下した。興味深いことに、骨髄腫細胞における蛍光は、control shRNA導入細胞では次第に消失していくのに対し、A3B shRNA 導入細胞では安定してみられた。3D-PCR 法とサンガーシークエンスによりコントロール細胞のゲノム DNA に多くのC>T 変異や数百塩基の欠失を確認したが、A3B ノックダウン細胞ではこれらの変異を認めなかった。また、骨髄腫細胞では恒常的にDNAの二重鎖切断が生じていることが知られるが、A3Bのノックダウンによりこれらも抑制された。 更に詳細な解析を進めるため、CRISPR/Cas9を用いて骨髄腫細胞の内因性のA3B遺伝子のC 末端に 3×FLAG タグと IRES-EGFP 配列を挿入し、より簡便かつ特異的にA3Bの転写や発現量を評価できる細胞株を3種作成した。A3Bのノックダウンや、A3Bの発現を増強するPMA刺激で処理したこれらの細胞に対し、フローサイトメトリーや抗FLAG抗体による免疫染色を行い、レポーターとして機能することを確認した。 この細胞に対して様々な刺激でスクリーニングしたところ、多くの抗癌剤や放射線照射はA3Bの発現を更に増強させることが判明した。一方、インターフェロンや骨髄腫分子標的薬のボルテゾミブ、レナリドマイド、エロツヅマブはA3Bの発現を増強させなかった。抗がん剤によるA3B発現誘導はDNA修復経路の最上流であるATM、ATR、DNA-PKのリン酸化阻害剤により抑制されたことから、A3Bは DNA損傷応答による制御を受けていることが明らかになった。結論として、骨髄腫ではA3Bが恒常的な変異作用を有し、更に正のフィードバックを形成することで、ゲノムの不安定性に重要な役割を担っていると考えられる。  （論文審査の結果の要旨） APOBEC3 は癌のゲノム変異に寄与する内因性の因子として注目されてきたが、多くがゲノム変異のシグネチャー分析などの後方視的解析であり、その分子学的なメカニズムは未だ不明である。 本研究は、まずAPOBEC3B（A3B）を過剰発現する骨髄腫細胞株を用いて、A3Bをノックダウンした場合の表現型を解析することによって、内因性A3B の生物学的意義を評価した。即ち、レンチウイルスを用いてゲノムに挿入した mCherry 遺伝子に生じる C>T 変異活性および欠失を検出し、その蛍光蛋白の機能も経時的に消失していくことを示したことで、A3B の恒常的な変異誘導作用を直接証明した。また、A3B が骨髄腫細胞にみられる恒常的なDNA の二重鎖切断を促進していることも示した。 次にA3Bをより簡便で特異的かつ網羅的に評価するため、3種の骨髄腫細胞株のA3B遺伝子を改変し、C 末端に 3×FLAG タグペプチドおよび IRES-EGFP 配列を挿入した。これらの細胞株がA3B レポーターとして機能することを検証し、様々なシグナルのスクリーニング試験で DNA 損傷応答により A3B の発現が正に制御されていることを示した。 これらの結果より、A3B は骨髄腫においてゲノムの不安定性を促進することが示された。 以上の研究はA3B の生物学的意義や発癌に関わる分子学的病態の解明に貢献し、今後の腫瘍学の発展に寄与するところが多い。  したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。    なお、本学位授与申請者は、令和 2 年 7 月 31 日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 

APOBEC3Bは骨髄腫細胞においてゲノム不安定性を促進する

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/259004/1/yigak04654.pdf

APOBEC3Bは骨髄腫細胞においてゲノム不安定性を促進する

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