京都大学0048新制・課程博士博士(農学)甲第21971号農博第2361号新制||農||1071(附属図書館)学位論文||R1||N5222(農学部図書室)京都大学大学院農学研究科森林科学専攻(主査)教授 大澤 晃, 教授 髙部 圭司, 教授 小杉 緑子学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDGA

Nakai, Wataru

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京都大学0048新制・課程博士博士(農学)甲第21971号農博第2361号新制||農||1071(附属図書館)学位論文||R1||N5222(農学部図書室)京都大学大学院農学研究科森林科学専攻(主査)教授 大澤 晃, 教授 髙部 圭司, 教授 小杉 緑子学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDFA

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Title Examination of stable oxygen isotope as a tree ring proxy oftropical ring-less trees( Abstract_要旨 )Author(s)Nakai, WataruCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2019-05-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21971Right学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要約は2020-02-29に公開; "Sample preparation of ring-less tropicaltrees for δ18O measurement in isotope dendrochronology"Wataru Nakai, Naoki Okada, Masaki Sano, Takeshi Nakatsuka("Tropics" September 2018, Volume 27, Issue 2, pp.49-5). Thefinal publication is available at J-STAGE viahttps://doi.org/10.3759/tropics.MS17-09Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University - 1 - （ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（  農 学  ） 氏名 中井 渉 論文題目 Examination of stable oxygen isotope as a tree ring proxy of tropical ring-less trees（年輪を持たない熱帯樹木の年輪代替物としての酸素安定同位体の検討） （論文内容の要旨）  年輪には樹木の生育環境に関する様々な情報が刻まれている。しかし、熱帯の樹木は一般に目に見える年輪を形成しないので、年輪解析が困難である。この問題を解決するため、本研究では熱帯地域の年輪研究に対し酸素安定同位体比(δ18O)の応用を検討した。   第1章では、δ18Oの分析にあたって、木材の主要成分であるα-セルロースのみを抽出して測定する必要があるかどうかについて検討した。未抽出の木材とα-セルロースとを分析・比較した結果、年輪の検出が目的であればα-セルロースの抽出は不要であると結論した。時間と労力を減らすため、以降の分析ではα-セルロースの抽出を省略し、未処理の木材試料を用いた。  第2章では、東北タイの季節乾燥林に生育し、年輪を形成する数少ない樹種であるチーク(Tectona grandis)を用いて、降水のδ18Oの季節変化が材のδ18Oにどのような影響を及ぼすかについて調べた。2015年から2018年の間、春から夏にかけて降水のδ18Oは小さくなり、この傾向は東北タイでの典型的なパターンであると考えられた。チーク材のδ18Oは成長輪の境界で負のピークを示した後に徐々に低下した。成長期後半に見られたこのδ18Oの低下傾向は、降水のδ18Oの傾向を反映したものと考えられた。半径方向の材中δ18Oの周期は調査地域の樹木に共通した年周期であると考えられた。  第3章では、目に見える成長輪を持たない熱帯樹木に対して材の形成時を印付けする方法として、高電圧直流パルスマーキング法の検討を行った。タイの季節乾燥林とマレーシアの熱帯雨林の樹木に対して処理を行った結果、森林によっても季節によっても高電圧直流パルスに対する感受性に違いがみられた。季節乾燥林ではマーキングがうまくいかない樹種がしばしがあるのに対して、熱帯雨林ではほとんどの樹種で成功した。このことから、熱帯雨林の樹種は季節乾燥林の樹種よりも形成層活動がより活発であると考えられた。電気刺激に対する木部組織の変化は温帯での報告と同様で、厚壁の木部繊維、いびつな放射柔細胞、潰れた道管が観察された。これらに加えて、熱帯雨林の樹種では細胞内腔に沈着物が見られ、Shorea属では傷害樹脂道が観察された。電気刺激に対する応答は様々で、マーキングには樹種によって最適な条件の検討が必要であると考えられた。  第4章では、タイの季節乾燥林に生育する、目に見える年輪を形成しない樹種について、δ18Oの変動に基づく成長輪検出を試みた。降水中δ18Oの季節変動が同じ場所に生育する樹木の材に記録されると仮定すると、目に見える年輪を持たない樹種についてδ18Oの成長輪が検出された。この結果は、高電圧直流パルスマーキングで推定した材形成の時期と矛盾はなかった。季節乾燥林の樹種について材のδ18Oの変動周期は年輪の代替物と見なすことができると考えられるが、樹種を増やしてのさらなる検討が必要である。  第5章では、半島マレーシアの熱帯雨林に生育する樹種について、δ18Oの変動に基づく成長輪検出を試みた。熱帯雨林では降水とそのδ18Oに季節変化が乏しいため、材のδ18O変動パターンには特定の傾向が希薄で、季節乾燥林に比べて複雑であった。材のδ18Oの - 2 - 半径方向変動パターンはPeronema canescenseでは個体間で類似性が見られたが、異なる樹種間では類似性が希薄であった。材のδ18O変動を用いた成長輪の検出のためには、参照データとして長期にわたる気象、降水中δ18O、フェノロジーの観測データが必要と考えられた。   第1章から第5章までの検討に基づき、本論文では以下のように結論した。すなわち、熱帯樹木の年輪検出の方法はいくつか報告されているが、どのような条件においても有効と言える方法はない。材のδ18O変動は温帯においても熱帯においても有用な情報をもたらすと考えられるが、その解釈にあたっては木材解剖学やフェノロジーなど関連する情報が必要である。原理の異なる複数の手法を併用し、気候と森林に関する知見の集積によって、熱帯での年輪研究は発展すると考えられる。   注)論文内容の要旨と論文審査の結果の要旨は１頁を３８字×３６行で作成し、合わせ て、３,０００字を標準とすること。 論文内容の要旨を英語で記入する場合は、４００～１,１００wordsで作成し 審査結果の要旨は日本語５００～２,０００字程度で作成すること。  - 1 - （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  樹木年輪解析は古気候の復元や森林の動態解析などのための有力な手段である。しかし、熱帯の樹木はその多くが目に見える年輪を形成しないため、温帯に比べて年輪研究は進んでいなかった。特に気温や降水量の季節性が希薄な湿潤熱帯では、樹木の成長リズムにも季節性が希薄で、規則的な成長輪は形成されにくいものと考えられてきた。ところが、20世紀末から顕微鏡と画像解析を組み合わせた研究手法が急速に発達し、細胞レベルでの木部組織の変化が容易に検出できるようになった。さらに、細胞壁の構成元素である炭素、水素、酸素の安定同位体比の測定技術が急速に普及した。その結果、従来は検出できなかった、成長に伴う組織、成分レベルでの微小な時間的変化が相次いで報告され始めた。こうした技術の進歩は年輪研究の分野にも導入され、目に見える年輪を形成しないと考えられていた熱帯樹木にも成長リズムがあることが明らかになってきた。こうした背景をもとに、本研究は、熱帯樹木の年輪検出に酸素安定同位体比(δ18O)の適用を検討した。本論文では、季節熱帯と湿潤熱帯を調査地として、環境条件や樹種特性の違いを考慮しながら、同位体の手法の適用可能性を論じている。本研究で評価すべき点は以下のとおりである。  １. 木材の同位体分析にあたって試料調製は時間と労力を要するプロセスで、その理由は、セルロース抽出を行う点にあった。本研究では抽出と未抽出の試料を分析比較して、年輪検出を目的とする場合にはセルロース抽出の必要性がないことを確認した。これにより分析時間と作業量の大幅な短縮につながった。 ２. 木材のδ18Oを決定する要因の一つは降水のδ18Oである。東北タイにおいて降水の採取と同位体分析を4年間にわたって進め、その季節変化がチーク材のδ18Oに反映されることを確かめた。これによって、ある地域に生育する樹木の材のδ18Oは同様の変化パターンを示す可能性が示唆された。 ３. δ18Oの半径方向の変化が年周期をもつかどうかを確認するためには、周期の開始時点を特定する必要がある。高電圧直流パルスを形成層に施して、傷害組織を材形成の時間的目印とする手法は、目に見える年輪を持たない樹種に対して有効であることが確かめられた。 ４. 上記１から３の検討に基づき、季節熱帯と湿潤熱帯の樹木の材中δ18Oの変動を調べ、前者では年輪検出法としての有効性を確認した。δ18Oの熱帯での一般的な適用に向けた課題として、樹種特性や気象観測データなどの参照データがさらに必要であることを整理した。   以上のように、本論文は熱帯での年輪研究に酸素安定同位体を適用するため、手法的な検討と、気候条件の異なる熱帯地域の様々な樹種の同位体分析に基づき、手法の可能性と今後の課題について明らかにした。この成果は、年輪年代学、森林生態学、森林利用学の発展に寄与するところが大きい。 よって、本論文は博士（農学）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、平成31年4月15日、論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結果、博士（農学）の学位を授与される学力が十分あるものと認めた。  また、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  注）論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文は、本学学術情報リポジトリに - 2 - 掲載し、公表とする。 ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。  要旨公開可能日：   年   月   日以降（学位授与日から３ヶ月以内） 

年輪を持たない熱帯樹木の年輪代替物としての酸素安定同位体の検討

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/242922/1/ynogk02361.pdf

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