京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第21579号理博第4486号新制||理||1644(附属図書館)京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻(主査)教授 橋口 浩之, 教授 塩谷 雅人, 教授 秋友 和典学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Noersomadi

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TitleCharacteristics of tropical tropopause and stratospheric gravitywaves analyzed using high resolution temperature profiles fromGNSS radio occultation( Abstract_要旨 )Author(s)NoersomadiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2019-03-25URL https://doi.org/10.14989/doctor.k21579Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 Noersomadi 論文題目 Characteristics of tropical tropopause and stratospheric gravity waves analyzed using high resolution temperature profiles from GNSS radio occultation （GNSS掩蔽による高分解能温度プロファイルを用いて解析された熱帯対流圏界面と成層圏重力波の特性） （論文内容の要旨）  本論文では、全球測位衛星システム(GNSS)と小型低軌道(LEO)衛星を用いたGNSS掩蔽により得られた、全球・高度30kmまでの高鉛直分解能の気温プロファイルデータを用いて、熱帯対流圏界面と成層圏大気重力波のふるまいについて研究し、これらのデータの有用性を示した。 2006年4月以降、台米共同のCOSMIC GNSS掩蔽ミッションにより、1日当たり約1500～2000の大気プロファイルが取得されている。従来から用いられていた幾何学的解法に比べて高度分解能が格段に優れているFSI(Full Spectrum Inversion)法を高度30kmまで適用し、対流圏だけでなく成層圏においても高鉛直分解能で算出された気温プロファイルデータセットを用いた。COSMIC標準プロダクトと比較し、気温のオフセットや精度劣化がないこと、また 2011年 10月～ 2012年 3月に実施されたCINDY-DYNAMO 2011キャンペーンのラジオゾンデ観測データと比較し、ラジオゾンデに匹敵する100m程度の鉛直分解能を有することを確認した。 2007～2016年のデータを用いて、熱帯域における対流圏界面の構造を解析した。最低気温圏界面(CPT)高度におけるブラントバイサラ振動数(N2)の急増加として定義される対流圏界面逆転層(TIL)のふるまいを調べた。N2プロファイルをCPT相対高度で平均すると、厚さ1km以下の非常に薄い層が得られた。CPTの上下1km以内におけるN2の最大値・最小値の差として対流圏界面先鋭度(S-ab)、およびN2が最大値から80%となる高度差としてTIL厚さ(dH)を定義し、これらの指標の統計的性質を調べた。90～150°Eの海洋大陸域と170～230°Eの太平洋域の、異なる海陸分布を持つ2つの経度領域でのS-abの変動に着目した。S-abの季節変動は、外向き長波放射(OLR)によって表される深い対流活動に関連していた。S-ab偏差とSST Niño3.4指数との間の相関は、海洋大陸域において負相関、太平洋域において正相関であった。これは、海洋大陸においてはラニーニャ時に、太平洋においてはエルニーニョ時に、より暖かい海面水温が対流圏界面に向かう大気を強制上昇させ、活発な対流活動を引き起こし、その結果、対流圏界面高度の温度勾配を大きくしていると解釈した。 成層圏の高度 20-27 kmにおける大気重力波に伴う温度変動特性を調べた。鉛直波長0.5〜3.5 km の重力波の鉛直波数スペクトルから（全）ポテンシャルエネルギーEpT、および 0.5～1.75km の短波長のみのポテンシャルエネルギーEpSを算出した。これらの緯度・時間変動を、（a）海洋大陸を含む 90〜150°E、および（b）太平洋を含む 170°E〜180°～130°W の 2 つの経度域で調べた。EpT は、領域（a）では 30〜50°N、領域（b）では 50〜70°N で冬季に最大となる年周期を示し、これは偏西風と地形に関係していた。一方、熱帯域においては、対流活動と良い相関があった。飽和重力波を仮定した理論モデル値に比べて、EpTは赤道域および山岳地域で大きかった。    （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨）  高度10〜30kmの上部対流圏・下部成層圏(UTLS)は、対流圏から中層大気への遷移領域であり、高度10〜17kmに位置する対流圏界面はそれらの境界として機能し、対流圏界面を通してさまざまな結合過程が生じている。特に、熱帯の対流圏界面は、対流圏の微量成分の混合や輸送を理解する上で重要である。さらに、大気波動の生成領域である対流圏と、それが伝播し、平均流との相互作用やエネルギーの散逸などが生じる中層大気とでは、さまざまな大気波動のふるまいが異なっている。対流圏界面における大気安定度の急激な増加は、波の振幅を増幅するように作用し、一方、対流圏界面近くの気温プロファイルは大気波動によって変調を受ける。UTLSの振る舞いを理解するために、ラジオゾンデなどを用いた観測研究が行われてきたが、ラジオゾンデの定常観測は大部分が北半球の大陸上で行われており、全球分布を調べるには不十分であった。 GNSS(全球測位衛星システム)掩蔽は、GNSS衛星から送信された電波が地球の電離圏・大気圏を通過し、低軌道衛星に搭載されたGNSS受信機に到達するのを利用するもので、高い鉛直分解能で全球の気温プロファイルを提供する。本研究では、UTLSの温度構造と変動を調べるために、GNSS掩蔽データに幾何学的解法に比べて高度分解能が格段に優れているFSI(Full Spectrum Inversion)法を高度30kmまで適用した。特に、熱帯対流圏界面における詳細な気温安定度プロファイルと全球の成層圏大気重力波に焦点を当てて解析している。 申請者は、まずFSI法による気温データを従来解法によるデータと比較し、高分解能化によりデータの精度・確度が劣化していないことを確認した。また、ラジオゾンデ観測データとも比較し、ラジオゾンデに匹敵する100m程度の高度分解能が得られていることを示した。すなわち、COSMIC GNSS掩蔽データを用いることで、1日当たり1500～2000回のラジオゾンデ観測に相当するデータが、全球で均質に得られることを意味している。 申請者は、10年間分のGNSS掩蔽データを用いて、熱帯対流圏界面逆転層(TIL)の特性について統計解析した。静的安定度(N2)の高度変化から対流圏界面先鋭度(S-ab)およびTIL厚さ(dH)の指標を定義し、それらの時間・経度分布を調べ、対流活動との関連を示した。従来、特に海洋上のラジオゾンデ観測は乏しく、海陸両方のTILの特性を観測的に示したのは初めてである。 申請者はさらに、成層圏(20～27km)高度における全球の大気重力波特性について統計解析した。従来解法では得られない短い鉛直波長を含む鉛直波数スペクトルやポテンシャルエネルギーを解析した。重力波エネルギーは中緯度においては地形と関係して東西風の強い冬季に大きく、熱帯域においては対流活動に関係することを見出した。 以上、本研究ではGNSS掩蔽データからFSI法により算出された高鉛直分解能温度プロファイルデータを用いて、熱帯対流圏界面および成層圏大気重力波を解析することで、従来法では不可能な鉛直波長の短い現象の理解に有用であることを実証した。  よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成31年1月15日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。  要旨公表可能日：     年   月   日以降 

GNSS掩蔽による高分解能温度プロファイルを用いて解析された熱帯対流圏界面と成層圏重力波の特性

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