京都大学0048新制・論文博士博士(医学)乙第13167号論医博第2154号新制||医||1029(附属図書館)(主査)教授 宮本 享, 教授 小泉 昭夫, 教授 柳田 素子学位規則第4条第2項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Yamamoto, Rie

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TitleA sphingosine-1-phosphate receptor type 1 agonist, ASP4058,suppresses intracranial aneurysm through promotingendothelial integrity and blocking macrophage transmigration(Abstract_要旨 )Author(s)Yamamoto, RieCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2018-03-26URL https://doi.org/10.14989/doctor.r13167RightType Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（医学） 氏 名 山 本 梨 絵 論文題目 A sphingosine-1-phosphate receptor type 1 agonist, ASP4058, suppresses intracranial aneurysm through promoting endothelial integrity and blocking macrophage transmigration（スフィンゴシン１‐リン酸受容体１アゴニストASP4058は血管内皮の健全性を高めマクロファージの経内皮浸潤を阻害することによって脳動脈瘤の形成を抑制する） （論文内容の要旨） 脳動脈瘤は、脳血管の分岐部に形成される嚢状の病変であり、くも膜下出血の主要な原因疾患である。くも膜下出血は致死率が高く予後の悪い疾患であることから、その発症を未然に防ぐことはきわめて重要である。しかしながら脳動脈瘤の破裂を予防するための治療法には未だ外科的治療しかなく、半数以上の症例は無治療で経過を観察しているのが現状である。そのため、非侵襲的にくも膜下出血の発症を予防するための治療薬の開発が望まれている。スフィンゴシン１‐リン酸（S1P）は脂質メディエーターの一種であり、その受容体として S1P1、S1P2、S1P3、S1P4および S1P5の 5 つのサブタイプが存在する。S1P およびその受容体は血管恒常性の維持に重要な役割を担うことが知られており、なかでも、S1P1受容体からのシグナル伝達は血管内皮細胞のバリア機能を亢進させ、反対にS1P2、S1P3 受容体からのシグナルはそのバリア機能を低下させることが報告されている。現在上市されている唯一の S1P 受容体アゴニストであるフィンゴリモドはサブタイプ選択性がなく、S1P2受容体を除く４つのサブタイプ全てに同等に作用する。そこで本研究では、S1P1受容体に選択的なアゴニストとして新たに見出した ASP4058 を用いて、血管内皮細胞バリア機能の破たんと脳動脈瘤の形成・増大との関係を明らかにするとともに、S1P1アゴニストの未破裂脳動脈瘤治療薬としての可能性を示した。 まず、未破裂脳動脈瘤患者の手術摘出標本を用いた免疫組織化学的検討の結果、血管内皮細胞上に S1P1 受容体の発現が認められ、ヒト未破裂脳動脈瘤病変において S1P1 アゴニストが作用し得ることが示唆された。つぎに、ヒト頸動脈より単離された初代培養内皮細胞を用いた解析から、ASP4058 は、S1P1受容体シグナルを介して Rac を活性化し、FITC 標識デキストランの透過量を指標とした内皮細胞間の透過性を低下させること、単球系細胞株 THP-1 の経内皮遊走を抑制することが示された。脳動脈瘤の形成・増大には脳動脈壁への炎症性マクロファージの集積とそれにともなう血管壁の慢性炎症が寄与することが報告されている。そこで、in vitro において認められた ASP4058 の内皮細胞バリア機能亢進作用が、脳動脈瘤の形成・増大の抑制につながることを、脳動脈瘤モデルラットを用いて検証した。モデルラットにおける血管透過性を血中から組織へのエバンスブルーの漏出を指標に評価した結果、ASP4058 は脳動脈瘤壁における血管透過性の亢進を抑制した。また、ASP4058 を投与されたモデルラットでは、脳動脈瘤壁へのマクロファージの浸潤や炎症関連因子である MCP-1 の発現が抑制されており、形成された脳動脈瘤のサイズは有意に小さかった。ASP4058 とは骨格の異なる複数の S1P1 アゴニストが同様に脳動脈瘤の形成を抑制したことから、この作用は S1P1 アゴニストに共通したものであることが示唆された。さらに、ASP4058 は、すでに形成された脳動脈瘤に対して治療的に投与した場合にも瘤の増大を有意に抑制したことから、臨床において脳ドック等で発見される未破裂脳動脈瘤に対してもその増大を抑え、破裂を予防できることが示唆された。 本研究により、ASP4058 をはじめとした S1P1アゴニストが、未破裂脳動脈瘤を有する患者においてクモ膜下出血を予防するための有望な治療薬となる可能性が示された。   （論文審査の結果の要旨） 脳動脈瘤は、致死的な疾患であるくも膜下出血の主要な原因疾患であるが、その形成並びに病態進展機序には未だ不明な点が多い。本研究では、スフィンゴシン１‐リン酸受容体１（S1P1受容体）アゴニストである ASP4058 を用い、血管内皮バリア機能の破たんと脳動脈瘤の形成・増大との関係を明らかにするとともに、S1P1アゴニストの未破裂脳動脈瘤治療薬としての可能性が検討された。 未破裂脳動脈瘤患者の手術摘出標本において、内皮細胞上に S1P1 の発現が認められた。ASP4058 は、培養血管内皮細胞において、内皮細胞上の S1P1を介して内皮細胞間の透過性を低下させ、単球の経内皮遊走を抑制した。さらに、脳動脈瘤モデルラットを用いた解析でも、ASP4058 は、脳動脈瘤壁において認められる血管透過性の亢進を抑制し、マクロファージの浸潤や炎症を抑えて脳動脈瘤の形成並びに増大を抑制することが示された。これらの結果は、血管内皮細胞バリア機能の破たんが脳動脈瘤の形成・増大につながることを示唆しており、ASP4058をはじめとした S1P1アゴニストによって血管内皮バリア機能を維持することが、脳動脈瘤の増大を抑制する可能性を示すものである。 以上の研究は脳動脈瘤の形成ならびに病態の進展機序の解明に貢献し、未破裂脳動脈瘤に対する薬物治療法の開発に寄与するところが多い。 したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成３０年３月６日実施の論文内容とそれに関連した研究分野並びに学識確認のための試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

スフィンゴシン１－リン酸受容体１アゴニストASP4058は血管内皮の健全性を高めマクロファージの経内皮浸潤を阻害することによって脳動脈瘤の形成を抑制する

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