京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第19731号工博第4186号新制||工||1646(附属図書館)32767京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻(主査)教授 江口 浩一, 教授 安部 武志, 教授 阿部 竜学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDGA

Suzuki, Shohei

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Title Studies on Direct Ammonia Fuel Cells Employing AnionExchange Membranes( Abstract_要旨 )Author(s)Suzuki, ShoheiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2016-03-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19731Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University京 都 大学  博士（  工  学  ）  氏名  鈴木  渉平  論 文 題目  Studies on Direct Ammonia Fuel Cells Employing Anion Exchange Membranes (アニオン交換膜を適用した直接アンモニア燃料電池に関する研究 )  (論 文 内 容 の 要 旨 ）  エネルギー問題、環境問題の顕在化によって、CO2 の排出がなく汚染物質の排出もほとんどない燃料電池が注目を集めている。燃料電池の燃料としては H2 が最適であるが、貯蔵・運搬には不利である。そのため、燃料電池の実用化には適切な水素キャリアが必要とされる。アンモニア：NH3 は年間 1.7 億トンと大量に生産される汎用化学物質で、水素を多く含み、室温で容易に液化しエネルギー密度が高く、供給・運搬の技術が整っている。これらの理由により、水素キャリアとしてアンモニアが注目を集めている。  アニオン交換膜を用いた直接アンモニア燃料電池は、水素キャリアであるアンモニアを直接利用する新しいエネルギー変換デバイスとして期待される。しかし一方で、被毒種の影響や CO2 による性能低下などが懸念される。そこで本研究では直接アンモニア燃料電池の特性を評価し、その問題を明らかにした。   第 1 章では、アニオン交換膜を適用した直接アンモニア燃料電池の基本特性を評価した。直接アンモニア燃料電池の開回路電圧（OCV）はアンモニア酸化電極触媒の NH3 酸化能に依存し、Pt-Ru/ C の場合で 0.53 V、Pt / C の場合で 0.45 V、Ru / C の場合では起電力が得られなかった。これらの OCV はいずれも理論起電力である 1.17 V と比較して低い。その要因としてアンモニア酸化電極触媒の活性が低いことに加え、アンモニアがアニオン交換膜を透過、カソードでアンモニア酸化が起きたことが挙げられる。また、発電時に直接アンモニア燃料電池の性能が大幅に劣化する現象が見られ、触媒毒としての吸着種Na d がアノード上に蓄積することが原因であることが示唆された。以上から、アノード触媒のアンモニア酸化活性を向上させ、Na d 吸着を抑制することが直接アンモニア燃料電池実現のための重要な開発要素であることが明らかとなった。   第 2 章では、CO2および炭酸イオン種がアニオン交換膜燃料電池の性能に与える影響を検討した。アニオン交換膜の導電率は OH−型の場合で最も高く、膜中の炭酸イオン種の濃度が高いほど導電率は低下した。これは、膜中のアニオン種の移動度が OH −> −23CO >−3HCO の序列となるためである。アニオン交換膜は CO2 を吸収し、炭酸イオン種が膜中に生成するが、アニオン交換膜燃料電池は放電時にカソードで OH−が生成、炭酸イオン種が膜中から CO2 として放出されることで、炭酸イオン種の濃度が減少することが知られている。この効果により、CO2 を含まないガスを流通させた場合は通電により OH−濃度が増大することでセル抵抗が減少する。一方、CO2 をカソードに供給して放電した場合、OH−生成と同時に CO2 が膜中に溶解し、炭酸イオン種が生成するためにセル抵抗は減少し 難く、電極過電圧が増大した。この挙動は CO2 をアノード側に共有した際に顕著であり、供給ガス中の膜中の炭酸イオン濃度は CO2 濃度増大によって変化せずに、セルの過電圧は増大した。以上から、CO2 の供給によってアニオン交換膜中の炭酸イオン種濃度が増大すると、セル抵抗及び電極過電圧が増大することがわかった。   第 3 章では、アニオン交換膜を適用した直接アンモニア燃料電池の性能に炭酸イオン種が与える影響を評価した。 −3HCO 型のアニオン交換膜を使用した場合、OH−型に比べて直接アンモニア燃料電池は低い性能しか示さなかった。水溶液中で Pt/C のアンモニア酸化を評価した結果、炭酸イオン種の存在によって Pt/C 上でのアンモニア酸化能は i) 炭酸イオン種が Pt 金属上でのアンモニア吸着および酸化を妨害する、ii) カルバミン酸イオンが生成することによってアンモニア濃度が低下するなどの効果により抑制されることがわかった。一方、Pt/C 上でのアンモニア酸化能を増大させるには、NH3 濃度の増大が効果的であることが明らかとなった。   第 4 章では、Pt/C、Ir/C、Ru/C、および CrOx–Ni/C 電極上でのアンモニア酸化反応に炭酸イオン種が与える効果を調べた。電解液中の炭酸イオン種によって、Pt/C、Ir/C、及び Ru/C 上でのアンモニア酸化反応が阻害を受けた。一方、CrOx–Ni/C では重炭酸イオンが存在する条件下でもアンモニア酸化電流が増大した。アンモニアと重炭酸イオンが共存する溶液中では −22NCOH が存在することから、−22NCOH が Ni上で酸化されることが示唆された。   第 5 章では、ATR-IR 分光法によるアルカリ性水溶液中での Pt 電極上のアンモニア電気化学的酸化反応のその場測定を行った。0.1 M NH3-1.0 M KOH 溶液中では、NH3、N2H4、架橋 NO 由来の 3 つの吸収バンドが観察でき、その強度は印加電位に応じて変化した。さらにこれらのバンドを 0.1 M ND3-1.0 M KOD 溶液中での同様の測定を行うことと合わせて、帰属した。この結果、Pt 上での N2H4 中間体の形成は、吸着 NH3 の消費をともなって進行することが示され、Gerischer-Mauerer メカニズムによって反応が進行することを支持した。また、アンモニア酸化開始電位より貴な電位で架橋 NO の形成が確認されており、この NOが Pt上の反応サイトを占有するためにアンモニア酸化反応を阻害することが示唆された。したがって、Na d と同様に NO 吸着を抑制できるような電極触媒の開発が必要であることが明らかとなった。   以上のように、この論文では、アニオン交換膜を用いた直接アンモニア燃料電池の基本的な特性およびその問題を示した。この研究は今後の直接アンモニア燃料電池の開発に大きく貢献するものであると考えられる。       氏 名 鈴木  渉平   （論文審査の結果の要旨）  本論文では、アニオン交換膜を適用した直接アンモニア燃料電池について、系統的に基礎的特性を評価し、課題を明らかにした。得られた成果の概要は以下のとおりである。   (1) アニオン交換膜を用いた直接アンモニア燃料電池の基本特性を評価した結果、開回路電圧に電極触媒活性との相関が見られたものの、いずれも理論起電力より低かった。その要因としてアンモニア酸化電極触媒の活性が不十分であることに加え、アンモニアがアニオン交換膜を透過して、カソードでのアンモニア酸化が起きたことを明らかにしている。また、発電時にアンモニア燃料電池の性能が大幅に劣化する現象が見られ、その原因について検討した。   (2) CO2 および炭酸イオン種がアニオン交換膜燃料電池の性能に与える影響を検討し、CO2の供給によってアニオン交換膜中の炭酸イオン種濃度が増大し、セル抵抗が増大、加えて電極過電圧が増大することを示した。また、Pt/C上でのアンモニア酸化は、炭酸イオン種により Pt 金属上でのアンモニア吸着及び酸化が妨害される、生成したカルバミン酸イオンが生成してアンモニア濃度が低下するなどの原因により阻害を受けることを明らかにした。一方、CrO x–Ni/C をアノードとして用いると、重炭酸イオンが存在する場合に NH3酸化電流が増大し、 −22NCOH が Ni 上で酸化されることが示唆された。   (3) ATR-IR 分光法によるアルカリ性水溶液中での Pt 電極上のアンモニア電気化学的酸化反応のその場測定を行ったところ、アンモニア酸化開始電位より大きい電位で架橋 NO の形成が確認され、この NO がアンモニア酸化反応を阻害することが示唆された。したがって、NO 吸着を抑制できるような電極触媒の開発が必要であることを明らかにした。    以上、本論文は、アニオン交換膜を用いた直接アンモニア燃料電池の基本的な特性およびその問題を示したものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成 28 年 2 月 3 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。  なお、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。           要旨公開可能日： 2016 年  3 月  23 日以降   

アニオン交換膜を適用した直接アンモニア燃料電池に関する研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/215557/1/ykogk04186.pdf

アニオン交換膜を適用した直接アンモニア燃料電池に関する研究

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