京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第19219号理博第4111号新制||理||1592(附属図書館)32218京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻(主査)教授 中家 剛, 教授 谷森 達, 准教授 市川 温子学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDFA

Suzuki, Kento

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TitleMeasurement of the Muon Beam Properties and MuonNeutrino Inclusive Charged-Current Cross Section in anAccelerator-produced Neutrino Experiment( Abstract_要旨 )Author(s)Suzuki, KentoCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2015-07-23URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k19219Right許諾条件により本文は2016-03-01に公開; 許諾条件により要旨は2015-10-01に公開Type Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 鈴木 研人 論文題目 Measurement of the Muon Beam Properties and Muon Neutrino Inclusive  Charged-Current Cross Section in an Accelerator-produced Neutrino Experiment  （論文内容の要旨） 本論文は、加速器を使ったニュートリノ実験で、ニュートリノビームをモニターするためのミューオンビームの測定と、ミュー型ニュートリノ荷電カレント全断面積の測定、の結果について報告している。ニュートリノの性質、特にニュートリノ振動という現象を通してニュートリノ質量とニュートリノ混合を研究するために、加速器ニュートリノビームは必須の実験装置である。そのため、日本では茨城県東海村にある大強度陽子加速器J-PARCでミュー型ニュートリノビームを生成し、岐阜県飛騨市神岡町にあるスーパーカミオカンデ測定器で測定することで、ニュートリノ振動の研究を行う実験T2K（Tokai-to(2)-Kamioka実験の略）が進行している。T2K実験では、ミュー型ニュートリノがタウ型ニュートリノに振動する過程と電子型ニュートリノに振動する過程の両方を観測することで、世界最高の精度でニュートリノ振動の測定を実行する。T2K実験の成否は、生成するニュートリノビームの強度とその品質に依っており、ニュートリノビームの測定時に副産物として生成されるミューオンビームを使用することでその強度と品質を確認する。また、ニュートリノの種類（電子型、ミュー型、タウ型）の同定には、ニュートリノ反応断面積の理解が必要であり、T2K実験ではニュートリノ反応の研究を進めている。本論文では、この２点、ミューオンビームの測定とニュートリノ反応断面積の測定について研究してある。  論文は大きく3部構成となっている。第1部は、ニュートリノ物理のレビューとT2K実験の解説である。ここT2K実験の解説では、J-PARC加速器の概要、ニュートリノビーム生成設備、T2K実験のデータ収集の歴史について説明し、その後に鈴木氏自身が担当したミューオンモニター測定器とニュートリノ測定器INGRIDについて詳細に説明している。第２部はミューオンビームの測定についてであり、ミューオンビーム測定の原理と手法、シミュレーション、解析手法、測定精度と系統誤差、そして測定結果について書かれている。測定結果は、ミューオンビームの強度を1%以下で、ビーム方向を0.3mrad以下の精度で決定したことである。ミューオンビームの測定はニュートリノビームをモニターするために必要不可欠な方法であり、世界中のニュートリノビーム生成施設で同様の装置が存在する。しかし、本論分で書かれている精度でミューオンビームを測定したのは世界に例がなく、鈴木氏の大きな業績である。第３部はミューオンニュートリノ荷電カレント反応断面積の測定であり、断面積のエネルギー依存性を測定するために、INGRID測定器の見るニュートリノのエネルギーがビーム中心からの距離に依存することを利用した方法を採用している。このエネルギー依存性測定方法も実際に採用したのは世界初で、鈴木氏の独創性が現れている。ニュートリノ反応の理解は、ニュートリノ振動の研究においてもっとも重要な要素であり、鈴木氏の測定はニュートリノ振動研究の感度向上に貢献している。以上の研究は、素粒子物理学において非常に重要な結果である。  まとめると、本論文は、ニュートリノビームと共に生成されるミューオンビームを高精度で測定することでニュートリノビームの理解を進展させ、さらに将来のニュートリノ振動の研究のためにニュートリノ反応断面積を高精度で決定した研究成果について報告している。    （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨） 本学位申請論文は、加速器ニュートリノビームの副生成物であるミューオンビームを使い、そのビーム強度を１％以下の精度で、ビーム方向を0.3mradの精度で測定し、T2Kニュートリノ振動実験でのニュートリノビーム測定手法を確立したことについて発表している。また同時に、T2K実験のニュートリノ振動解析で重要となるニュートリノ反応の理解を進めるために、ミュー型ニュートリノ荷電カレント反応断面積のエネルギー依存性を測定した結果について発表してある。素粒子物理学におけるニュートリノ研究の大目標の一つは、ニュートリノ振動現象の全貌を解明し、ニュートリノにおいて粒子と反粒子間の対称性（CP対称性）が破れているか探索することである。今回、ニュートリノ振動現象の全貌解明に向けて、実験の必須装置であるニュートリノビームを高精度でモニターする方法を確立し、さらにCP対称性の測定につながるニュートリノ反応断面積の理解を進展させた本論文の結果は、素粒子物理学をさらに発展させる重要な成果である。 本論文で鈴木氏は、素粒子物理学におけるニュートリノ研究の意義を説明し、その後ニュートリノ振動の物理について詳しく解説している。そして、T2K実験の主要設備を紹介し、鈴木氏が手がけたミューオンモニターとニュートリノ測定器INGRIDそれぞれを丁寧に説明している。また、ミューオンモニターとINGRIDの目的、動作原理、解析手法の説明を通し、本研究の目的を明確に示している。特に、ミューオンモニターの説明部分では、設計思想に加えて、較正方法、シミュレーション、解析方法と、詳細に記述されており、圧巻な内容となっている。ニュートリノデータの収集は2010年1月から2013年4月まで行われ、この全期間においてミューオンモニターとINGRIDの全データを解析し、T2K実験の基盤となる重要な研究結果になっている。ミューオンビームの測定では、様々な系統誤差を考慮し、その強度の安定性を1%より良い精度で測定し、さらにミューオンの絶対収量の測定にも成功した。この測定結果は学位論文として十分に価値があり、鈴木氏の実力と論文に質の高さを表している。最後に、INGRIDを使ってニュートリノ反応断面積を測定し、これまでデータが存在していなかったエネルギー２〜３GeV領域を10%レベルの精度で測定したことも注目に値する。論文は、導入から結論に至るまで、論旨がはっきりしており、本人の理解の深さが読み取れる。 鈴木氏が行ったニュートリノビーム測定とニュートリノ反応断面積の測定は、国際共同実験T2K全体の結果であるが、その結果を導き出した鈴木氏の実力は本物である。特に、ビーム測定において、その解析プログラムの開発から、誤差の取扱とその評価方法の確立、観測量の定量的な評価等、本論文で報告されている物理解析全般に渡り、鈴木氏の高い能力が判断できる。以上のように、T2K実験という国際共同研究の成果による本論文の結果に対し、鈴木氏の貢献は非常に大きいと判断した。鈴木氏により、T2K実験が世界最高レベルでニュートリノ振動を研究できていると言っても過言ではない。さらに、この結果は、ニュートリノ物理学全体の進展に結びついたことも間違いない。 よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、平成27年5月22日に論文内容とそれに関連した口頭試問を行った結果、鈴木氏は多数の難問にも明確な解答をした。その結果合格と認めた    要旨公表可能日： 2015 年  10 月  1 日以降 

加速器ニュートリノ実験におけるミューオンビーム及びミューオンニュートリノ荷電カレント反応断面積の測定

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